野球少年は夢を見る…

Hanshin Tigers Series 2024

「野村ノート」を読む(其の九)

2006-12-31 12:28:02 | Stove League
 第9章は無い。最後は「終章」。昨今の野球界の空前の危機を憂い、巨人中心主義の弊害を指摘する。さらに来年からは著者が疑問を呈するパシフィック・リーグのプレイオフ制度が、セントラル・リーグにも導入される。こんな小手先の改革! 日本シリーズが勝率3位以下同士の対戦もありうる。そんなプロ野球をファンは支持するのだろうか? 日本シリーズの歴史の重みを無意味にする、この愚策を著者は強く批判する。

 野球は「間のスポーツ」であると著者は定義する。しかし、この“野球の妙”が最近になって失われたことが、衰退に繋がっている、と著者は見ている。その現場に戻ってきた著者。野球の復権の為に、70歳を過ぎて、最後のご奉公に向かったのだろう。野球の復権、といっても、野球の世界大会(『WBC』)で日本代表は優勝するくらいだから、日本野球の強さは「実証」済み。ならば、何が? 答えは明白だが、誰もその虚妄に挑もうとしない。著者=野村克也氏、次の著作は『巨人軍論』だ。

虎の新助っ投候補は現役大リーガー (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の八)

2006-12-30 12:47:01 | Stove League
 第8章は「人間学のない者に指導者の資格なし」。誰のことかと思ったら、江本孟紀、江夏豊、門田博光、この3氏の名前が挙げられていた。現役時代、一匹狼で通した3氏。現役を引退したら、指導者として声が掛かることは「絶対」にない3人だ。江本氏や江夏氏は兎も角(!)門田氏はTV(ABC)の解説を聴いていると、語り口もソフトだし、技術論も的確だから、指導者に向いていそうに見えるが、そうではないらしい。

 それにしても、江本、江夏の両氏を指導した著者。江本氏は(当時)東映フライヤーズの敗戦投手に過ぎなかったが、著者がその素質を見抜き、トレードで獲得し、南海ホークスのエースに仕立て上げた。江本氏は今でも著者を「恩人」と慕っているようだ。江本氏はそういう理想の指導者像を見ていたが為に、阪神タイガース移籍後にああいう首脳陣批判の問題を起こして、引退してしまったのだろう。

 江夏氏には有名な「革命を起こせ」の言葉で、渋る江夏氏をストッパーに転向させ、見事に成功した。血行障害で50球程度全力投球したら、子供並みの握力になってしまう江夏氏。それでもプライドで「先発完投」に拘った江夏氏を説き伏せた著者。江夏氏にとっても「恩人」なのだろう。その後の西武ライオンズで広岡達朗(当時)監督と衝突したとき、彼が見ていたのも著者の幻影だったのだろう。

岡田監督明言「“バッター中田”獲る」 (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の七)

2006-12-29 11:27:00 | Stove League
 第7章は「指揮官の重要な仕事は人づくりである」。その冒頭で、阪神タイガースの井川慶(ニューヨーク・ヤンキース)の名が出る。だいだい、どういう内容かは察することができるだろう。幾ら良い球を投げても、人間形成がされておらず、社会通念が無ければ、組織はリーダー、つまり「エース」として認めてくれない。井川には耳の痛い話だ。
 来シーズンからは「エース」の立場から開放され、ヤンキースの先発(スターター)の4~5番手の扱いになるが、しかしニューヨークのプレッシャーを考えると、タイガースのエース時代と同じプレッシャーと責任感が圧し掛かってくるだろう。それに耐えられるか? それを跳ね返すことが出来るか? 著者(かつての師)は危惧していることだろう。

 それにしても、34歳で(当時)南海ホークスのプレーイング・マネージャー(選手兼任監督)になった著者。古田敦也(東京ヤクルトスワローズ)監督が40歳でなったのに較べると、それが如何に≪凄いこと≫だったかが分かる。
 この両者、今シーズンは交流戦で顔を合わせたが、そのとき、古田監督はどういう心境でかつての師に向き合っただろう? 春のオープン戦では対面した。そのときとは比べものにならない感慨が、彼の心底には横たわっていたことだろう。そして、その彼の苦労を察してやれるのも、著者を置いて他にいない。

1億5000万いらん!金本“男気更改” (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の六)

2006-12-27 12:05:51 | Stove League
 第6章は「組織はリーダーの力量以上には伸びない」。阪神タイガース監督時代に当時の久万俊二郎オーナーに直訴したエピソードが綴られている。著者の粘り強い説得で頑迷なオーナーも考え方を変え、タイガースは再建への一歩を記すことになる。球団内部は変わった。
 しかし電鉄本社の頑迷固陋さは変わらない、のかもしれない。「あの」『村上ファンド』に付け込む隙を与えてしまった。電鉄本社にも、著者や星野仙一SD(シニアディレクター)が必要だったのかもしれない。

 章の後半では“F1セヴン”(!)の赤星憲広、藤本敦士を発掘し、遠山奨志(現ファーム投手コーチ)を≪再生≫させた功績(自慢)話が続く。それは間違いなく功績、だと思う。「強い」タイガースの下地、基礎は著者の手によって築かれた。ならば、東北楽天ゴールデンイーグルスでも可能だろうか? 70歳を過ぎた御年寄りには余りにも酷な仕事に思えるが……

関本 5000万円で笑顔のサイン (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の伍)

2006-12-24 00:44:00 | Stove League
 第5章は「中心なき組織は機能しない」。野球でいう「中心」とは言うまでもなく「エース」と「4番」である。上原浩治(読売ジャイアンツ)や松坂大輔(西武ライオンズ)、松中信彦(福岡ソフトバンクホークス)等、今春の『WBC』(ワールド・ベースボール・クラシック)で活躍した主力選手の名前が挙がり、その上原との比較対照で、往年の元近鉄バファローズの大エース“草魂”の300勝投手の名前も挙がる。彼が何故、監督として成功しなかったのか? 著者の「説」には納得させられる。

 そして、かつての教え子である石井一久(ヤクルトスワローズ)へのお小言も忘れない。彼の指導に失敗した、と反省し、“鉄”は熱いうちに打っておくべきだった、と後悔する。そうすれば、MLB(メジャーリーグ)へ行っても成功していたかもしれない。石井は“鉄”であり、≪熱い≫存在だったが、今や凡庸な変化球投手に墜してしまった。それは野球界にとっての「損失」。著者にとっては痛恨事、だろう。

宣戦布告や!球児“4番狩り"宣言 (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の四)

2006-12-23 23:44:43 | Stove League
才能は学から生まれる」と題した第4章。最初に登場する名は、イチロー(シアトル・マリナーズ)だ。イチローの入団1年目(当時オリックス・ブルーウェーヴ)のオープン戦で最初に見たとき、既にその才能を見抜いた著者。そのイチローを1995年(平成7年)の日本シリーズで封じ込めて見せた著者(野村克也氏)。
 イチローを打者のタイプでいえば、A型(直球に重点を置きながら、変化球にも対応しようとする)に規定する。この章は野球の技術論に終始している。因みにB型(内閣か外角、打つコースを決める)C型(右翼方向か左翼方向か、打つ方向を決める)D型(球種にヤマを張る)らしい。

 さらに捕手は「疑い屋」であるべきと規定し、阿部慎之助(読売ジャイアンツ)には同情しつつ、槍玉に上げ、集中力を高めるには「興味」と「必要」であると規定し、松坂大輔(西武ライオンズ)に対して、この二つを要求し、技術的にはリリースの瞬間(指先で)スピンをかける意識が乏しいのでは? と指摘する。確かに……松坂にが誰しもが物足りなさを感じていた。このアドヴァイスが的確である可能性は高いが、果して、松坂がこれを読むか? 元日本テレビのアナウンサー(夫人)の知的センスに期待したい!?

目指せ古田監督!矢野球界引っ張る (デイリースポーツ)

レッドがファンサービス積極提案 (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の参)

2006-12-21 21:40:07 | Stove League
 第3章「指導者の最初の仕事は戦力分析にある」では、「ペナントレースと戦いの性質が異なる短期決戦」の章が興味深い。昨年、日本シリーズに出たセントラル・リーグの監督が「これがウチの勝ちパターンだから」とか「ペナントレースと同じ戦い方をする」「ペナントレースの延長だ」と発言したことを著者(野村克也氏)は批判している。両者の“犬猿の仲”は有名。≪連覇≫を逃した阪神タイガースの監督のことだ。

 そのタイガースの前の監督が星野仙一SD(シニアディレクター)。星野監督が2003年の日本シリーズで福岡ダイエー(当時)ホークスと対戦したとき、「情」に絆されて、ペナントレースの「論功行賞」伊良部秀輝(引退)を第2戦の先発に送ったが、これが失敗し、さらに温情をかけ、第6戦の先発にも起用した。これが完全に裏目に出た。2003年(日本シリーズ)のタイガースの敗因である、と断言する。確かに……

 社会人野球のシダックス時代に「情」に絆されて、エース・野間口貴彦(現・読売ジャイアンツ)の続投に拘り、(同じく)2003年の都市対抗野球の決勝戦で優勝を逃した己(著者)の采配を重ね合わせている。そういう意味では「情」の人、星野監督と野村監督。両者の個性、表面的な違いは明らかだが、二人は「似た者」同士だったのかもしれない。

1億円突破ならず…安藤渋々サイン (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の弐)

2006-12-19 21:53:19 | Stove League
 第2章「管理、指導は経験がベースになる」で、清原和博(オリックス・バファローズ)のことが述べられている。実績は一流だが、「考えているな」「勝負しているな」「駆け引きしているな」「読んでるな」というのが伝わってこない選手、と評している。
 当の清原は、野村克也監督のことを慕っていて(?)西武ライオンズ時代の野村選手のヘルメットを譲り受けて未だに使っているくらい、尋常でない愛着ぶりなのだが、昨シーズンオフ、読売ジャイアンツを解雇された後、その野村「新」監督の東北楽天ゴールデンイーグルス入りを希望したようだが、フロントの意に反して、清原獲得に反対した野村監督。……二人は擦れ違う。

 最後の「配球の原点は打者への意識付け」の章では、阪神タイガースのエース・井川慶(現ニューヨーク・ヤンキース)が槍玉に挙がっている。意識付け=ズバ抜けた球種。西武ライオンズの松坂大輔(現ボストン・レッドソックス)のストレート、西本聖(元読売ジャイアンツ)のシュート、伊藤智仁(元ヤクルト・スワローズ)のスライダー、高津臣吾(ヤクルト・スワローズ)のシンカー、あるいは“大魔神”佐々木主浩(元横浜ベイスターズ)、上原浩治(読売ジャイアンツ)のフォーク。
 それに較べて、井川にはズバ抜けた球種がない、と一刀両断。強いてあげれば、チェンジアップだろうが、それが決定的な≪因子≫になり得ていない。ここ数年の低迷の主因もそれか? 果して、これで来シーズンからMLB(メジャーリーグ)でやっていけるのか? 本人に自信(確信)はあるのだろうか? 

杉山 粘って100万円上積みゲット (デイリースポーツ)

「野村ノート」を読む(其の壱)

2006-12-18 20:24:43 | Stove League
再生工場」と謳われた人。東北楽天ゴールデンイーグルスには現時点で最も相応しい監督だろう。新たに誕生した新球団でありながら、本場MLB(メジャーリーグ)では当たり前の<エクスパンション・ドラフト>が採用されなかった。これでは戦力が整えられず、苦戦するのは致し方ないところ。
 MLBの真似をしながら、どこか中途半端なNPB(日本プロ野球機構)の間の抜けた思考の≪餌食≫にされてしまった。この本を読みながら、イーグルスが強くなることを祈りたい、と思った。何しろ、この人は、阪神タイガースが強くなるための基礎作りをしてくれた人だから。

 第1章で「意識改革で人は変わる」。とても野球人が書いた本とは思えないタイトルから始まる。このタイトルを見ただけでも、これは『ノムラの考へ』という、プロ野球の一部の選手たちの間でコピーされて読まれている有名な技術論だけではなく、一般の組織に携わって仕事をしている人たちにも読まれていい本だということが分かる。
「人生」と「仕事」とは常に連動している、と著者は言う。人生論が確立されていない限り、いい仕事は出来ない、と断言する。この国では、20年前のバブルの時期から“アフター5”という様式が定着し、「人生」と「仕事」とを切り離す思考が幅を利かせたが、それは間違いだったと気付かされる。

今岡が“生涯タテジマ”宣言 (デイリースポーツ)

多村、ソフトバンクへ(12日)

2006-12-16 19:48:43 | Yokohama Baystars
 それにしても、多村仁(福岡ソフトバンクホークス)のユニフォーム姿は似合わない、と思った。違和感がある。横浜ベイスターズ時代のイメージが強烈に残っているだけに、違和感。『WBC』の日本代表のユニフォームには違和感は覚えなかった。やっぱりブルー系統からイエローへの(急な)転籍は“頭の中の消しゴム”が追っつかない。それにしても、ホークスはいつの間に黄色をチームカラーにしたのか? 老舗タイガースの立つ瀬が、ない。

ソフトバンクが多村をVIP待遇 (livedoorスポーツ)