活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

吉田秀和さんのCD『永遠の故郷』

2012-08-25 11:34:48 | 活版印刷のふるさと紀行

 「吉田秀和さんの『永遠の故郷』がこんどCDになるのよ」、集英社の村田登志江編集長から聞いたのは昨年の夏の終わりだったかと思います。そして、いま、そのCDが酷暑の中で私にまたとない涼風を送り届けてくれています。まさに至福のときです。しかし、その間に、吉田秀和さんの訃報をうかがうことになってしまいました。今年の五月でした。多分、このCDの出来上がりがご生前に間に合わなかったのではないかとさえ思われます。

 98歳とはいえ、残念でたまりません。音楽評論家として、文筆家として、もっと、ずーっと生きていていただきたかった。吉田秀和さんは私のモノサシでは到底測ることのできない方でした。音楽界にとどまらず、各界の大御所とのエピソードを耳にするたびにその人間としての大きさと知識の深さに仰天するばかりでした。とくに新聞の連載やNHKの「名曲のたのしみ」で私は吉田さんの深い珠玉のような解説にいつも虜になってしまうのでした。

 晩年といってはいけませんが、最後の方の著作、集英社から出された『永遠の故郷』4部作を出るたびに夢中で読みました。「音楽はすべての人の人生そのものにつながる、だから、決して色褪せない」「永遠の故郷だ」というのが持論の吉田さんが、「夜」、「薄明」、「真昼」、「夕映え」の4部にわけて、それぞれにお好きな曲を託すような思いつきをいつ、どうして、どんなときになさったのか、一所懸命に読み取ろうとしました。

 この永遠の故郷CD版は演奏者についてのエッセイとそれぞれのCDに収められた歌曲の原文と吉田さんの訳詩が掲載された冊子つきのしゃれた構成です。音楽好きのあなたにはぜったいおすすめですし、私自身も当分ハマリッ放しになるCDです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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