活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

こころの風景とCD

2012-08-26 11:14:17 | 活版印刷のふるさと紀行

 私の好きなことばに「こころの風景」というのがあります。2年ほど前、友人の富永厚さんの著書の表題に使われていて、いいなと思ったのです。それには青春 朱夏 白秋を生きて、と、サブタイトルがつけられていましたが、香り高い自伝的エッセイとでもいいましょうか、こころの風景からこころのひだまでが読み取れる好作品でした。

 その冒頭にひさしぶりに父上の郷里、長崎の生月島を訪ねるくだりがあり、踏絵を踏み、転び、隠れキリシタンとして生き残る道を選んだ人、信仰に殉じて処刑される道を選んだ人、それぞれに思いをはせるところがありました。

 先週、8月21日の日本経済新聞の文化欄に皆川達夫さんが「キリシタン音楽に光」と題して生月島の「歌オラショ」について書いておられました。生月島の隠れキリシタンが口伝てに伝わったラテン語の祈りのオラショが16世紀にスペインの一地方で歌われていた聖歌「オー・グロリオザ・ドミナ(輝ける聖母)」と歌詞や旋律が一致するのを7年がかりで発見されたいきさつが紹介されています。そして「恐らく宣教師のひとりがふるさとの歌を生月島の信徒に教え、明日、処刑されるかも知れない極限状態の中でこの曲を歌い、400年もの間、伝えてきた信徒の信仰の強さに改めて感嘆させられた」とこころの風景を綴っておられます。

 実は皆川達夫さんは『洋楽事始』というCDを出しておられます(写真)。長崎フィルハルモニア合唱団の歌う「サカラメンタ提要」からグレゴリオ聖歌19曲、中世音楽合唱団の生月島の隠れキリシタンのオラショが10曲入っているのですが、生月島のオレショはなまったラテン語だと聞きましたが、歌詞は聞きとれません。五島や平戸や外海ではオラショは声に出さずに祈るだけといいますが、地を這うような生月島オラショはこころの風景を見せてくれるようで私がよく聴くCDの一つです。

 

 

 

 

 

 

 

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