活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

『世界のブックデザイン』を観て

2013-12-02 09:25:15 | 活版印刷のふるさと紀行
 はやくも今年もWorld book design 2012ー13の季節になりました。オープニング当日、会場の印刷博物館をのぞきました。日本、ドイツ、オーストリア、オランダ、スイス、カナダ、中国、ベルギーなど8ヶ国の美しい本を実際に手に取って見ることが出来るたのしいひとときでした。

 オープニングパーティの席上で印象に残ったのは乾杯の前の東京ドイツ文化センターの女史の挨拶でした。「本当に美しい本とは単に美しいカバーデザインなどのデザイン処理にあるのではなく、本の中身のありようまで含めて、いかに読者を惹きつけるにあるのです」という主張には心から賛意を持ちました。

 そして彼女は25点のドイツの出品作の中から2点を手に取って説明をしてくれました。1点は幼児向きのWALDというタイトルの幼児向きの絵本でしたが、おそらく日本の幼児だったらあまりにも地味で魅力がないのではと心配になるような仕立てでした。
 紙は再生紙の厚紙、印刷インキもエコロジカルなものを使って抑えた色調、文字はサンセリフで読みやすい書体、しかし、木々が揺れ、風が通る森の中でキツネやアナグマやリスがこどもに訴え、語りかけてくるやさしい、穏やかな絵本でした。はたして、日本だったらどうだろう、私は身近に幼児がいたらテストしてみたいと思いました。

 彼女のご推薦2点目は、SIXTINA MMX11と題するシスティーナ、ラファエロの聖母の写真集
で、こちらはカチッとした豪華本ではありましたが、内容的には一癖も二癖もある本でした。が、印刷はすばらしいものでした。内容の説明はむずかしいので実際に会場で手に取って見ていただくことにして、これも日本人のカメラマンや編集者だったら思いつかない企画本だといわざるを得ません。
 
 とにかく、「印刷」という点でみると日本の出品作は優れていましたが、正直、ドイツにはやられているかなという印象と、ブックデザインというからにはもう少し、本格的な書籍の「装幀」を見られるようになればと期待したい気持ちでした。この展覧会は2014年3月2日までで月曜日は休館です。



 

 




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