活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

朝鮮時代には活字字体が40種類も

2014-04-28 09:58:00 | 活版印刷のふるさと紀行

            

   朝鮮朝の金属活字活字体の例               藤本幸夫先生

講演会の次の講師は富山大学名誉教授の藤本幸夫先生で、「朝鮮朝における金属活字と印刷・出版」がテーマでした。つまり、916年に王建が高麗を建国して1392年まで続いた中世の活字印刷をテーマにした黄 正夏先生のあとを受けて、1392年、朝鮮になってから1910年までの近世、朝鮮時代の活字印刷について話をされました。

 まず、驚いたのは金属活字といっても銅や鉛だけではありません。真鋳や鉄の活字も存在しました。また、1403年の癸未字、1420年の恒庚庚子字、1434年の甲寅字のように、その活字の鋳込まれた年の干支で字体が分類されているようで、全部で27種類の字体を説明されました。実際にはさらに10種類はあるとのことですから全部で40種類くらいでしょうか。

 優れた字体として好評だった字体は何度も改刻されて鋳造されたそうで、1434年の初鋳字体甲寅字は1580年に再鋳されて庚辰字、1618年に戌午字として三鋳、1668年に戌申字として四鋳,1772年に壬寅字として五鋳、1777年に丁酉字として六鋳、なんと6回も鋳造されたことになります。

 つぎに活字本の書体・組体裁など印刷面を字体別に例を挙げて説明されました。上に掲げた図は不鮮明ですが、4つあるうち、右上が癸未字、右下が庚子字、左上が甲寅字、左下が丙辰字の本の活字面で、先生のレジュメから複写させていただいております。

 個人的に興味ぶかかったのは、15世紀に書かれた成俔(ソンヒョン)の『慵斎叢話』から活字印刷利用の経緯、鋳字法、印刷法などについての項を訳しながら先生が説明してくださったことで、はからずも、黄楊(つげ)の木に字を刻むところから蠟を使っての鋳造過程は私が清州古印刷博物館で見た展示を思い出すことが出来ました。

 

 

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