私的図書館

本好き人の365日

『ナルニア国物語第2章カスピアン王子の角笛』

2008-05-27 01:30:00 | ナルニア国物語

映画を観て来ました☆

現在公開されている映画『ナルニア国物語 第2章 カスピアン王子の角笛』(字幕版)です♪

前作『第1章 ライオンと魔女』も映画館に観に行きました。

映画化の前から原作のファンなんです!

洋服ダンスの中から行ける不思議の国ナルニア。

そこでは動物たちが言葉をしゃべり、木の精やフォーンやセントールたちが歌い踊る♪

毎回子ども達はいろいろな方法でナルニアへの扉を見つけることになるのですが、今回は「角笛」がキーポイント!

前作では洋服ダンスの中からナルニアに降り立ったペベンシー4兄妹が、ナルニアから現実の英国に帰って来てから一年後の物語。

ナルニアでは王や女王として数年を過ごした彼らも、英国に帰って来た時は、旅立った時と同じ子どもの姿に戻っていました。

どうやらナルニアとこちらの世界とでは、時間の流れが違うようなのです。

そして、今回ナルニアに降り立った彼らが見たものは、廃墟となったナルニアの国。

言葉をしゃべる動物たちは遠くおとぎ話の世界の住人となり、人間たちが支配する、1300年後の変わり果てたナルニア!!

前作がとてもファンタジー色の強い、悪と正義の戦い、だったのに対して、今回もファンタジーの要素はもちろんその根底にはあるのですが、人間との戦いがメインになります。

人間の欲望、罪、疑い、それらに対するは、”信じる力”。

ただ、ナルニアへ渡った子ども達が、ナルニアのためとはいえ、人間と戦うというのには、ちょっと抵抗がありました。

そこは映画なので、見せ場としてはしかたがないのかも知れませんが、カッコイイ戦争なんてありませんからね。

でも、劣勢に立たされ、迷い、葛藤する主人公たちには感情移入してしまい、感動で涙がポロポロ流れるのには困りました。

ナルニアの住人である、しゃべるネズミが縦横無尽に駆け回るシーンは楽しいです♪

半人半馬のセントールとか、ヤギの足を持つフォーンなど、神話の中の人物たちを、特殊メイクとCGを使い、前作を上回る見事なクオリティーで描いていて、彼らが入り乱れて戦う戦闘シーンは確かに迫力があります。

そしてなにより、今回登場したカスピアン王子とペベンシー兄妹の関係が、原作にない描かれ方をしていて、とても新鮮で、とてもうまくいっていて、嬉しくてひと安心☆

かつてのナルニアの王や女王と、現在ナルニアを支配している人間の王子。

カスピアンとペベンシー兄妹の長女スーザンとの関係も見物です!(笑)

そしてもちろん、偉大なライオンのアスランも登場します♪

映画ではアクションシーンが目を引きますが、原作の「ナルニア国物語」は、背景にあるキリスト教の物語と重ね合わせ、その伝えようとしているものを想像すると、ただのファンタジー小説とは呼べないほど深いものがあります。

充分大人の鑑賞にも堪えうる作品だと思います。

子どもだけじゃもったいない♪

もちろん、子どもも楽しめる作品です☆

次は『第3章』の映画化。
『朝びらき丸東の海へ』

どんな映画になるのか今から楽しみです♪


八月の本棚 5 『さいごの戦い』

2004-08-31 23:54:00 | ナルニア国物語
「ナルニア国物語」の紹介も、いよいよ今回が最終回となりました。

七冊目にあたる、その名もズバリ、『さいごの戦い』のご紹介です☆

今回はオールスター総出演の豪華版!

各巻に登場した人物や動物達が集まっての大盤振る舞い。
最後を飾るのにふさわしいお話となっております。

もちろん、いままでのお話で主人公だった子供たちも、そのほとんどが登場しますが、中でも活躍するのは、学校嫌いの二人組。
ユースチスとジルです☆(くわしくは『銀のいす』を読んでね)

ナルニア国最後の王、チリアン王を助けて大活躍!

とってもたくましく成長してる二人が勇ましいこと♪

お話はというと、今回はなんと偉大なライオン、アスランのニセモノが登場します。
ものいうケモノ達や小人やフォーンといった、アスランを信じて疑わないナルニア国の人々をだまして働かせたり、馬達をこき使って、ものいう木々を切り倒してカロールメン国に売り飛ばしてしまったりとやりたいほうだい。

アスランが最後に現れてから二百年以上たっているナルニアでは、誰もアスランに会ったことはありません。
それをいいことに、アスランの言葉だといって、人々をいいなりにさせ、自分達の都合のいいようにアスランを利用するのです。

そんな詐欺師に、カロールメン国の思惑と手酷い裏切りもからまって、ユースチスとジル、チリアン王達は、現れたカロールメンの軍隊だけでなく、ナルニアの人々までをも敵に回し、戦うことを余儀なくされます。

どんなに苦境に追い込まれても、信じ合う人々。
しかし多勢に無勢、ついにナルニア国の終わりを悟ったチリアン王は、親友の一角獣と、ユースチス、ジルと共に最後の戦いに臨む決意を…

ありえない!

普通のファンタジーではちょっと考えられない結末。
日本人の感覚では、なかなか思いつかないような展開が待っています。

あえて例えるなら、まるでフランダースの犬の最終回を見ているような…

圧巻はやはりアスランです。

なにもかもが終わり、崩れ去った後で見えてくる世界。
影の国に別れを告げ、真実の世界に一歩足を踏み入れた時、この「ナルニア国物語」を包み込む世界観が明らかにされます。


うちがわは、そとがわよりも大きいものだよ…


二ヶ月に渡り紹介してきましたが、ナルニアの魅力を伝えるにはまだまだ言葉が足りません。
拙い文章でかえって誤解を与えたのでは、と後悔してたりもするのですが、少しでも興味を持ってもらえたら幸いです。

ナルニアへの扉は、子供たちだけにしか開けられないけど、物語への扉は、誰の前にも開いています。

必要なのは、想像力と好奇心☆

よろしかったらあなたも、ちょっとのぞいてみませんか?













C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

八月の本棚 4 『魔術師のおい』

2004-08-29 00:13:00 | ナルニア国物語
先月から紹介している「ナルニア国物語」もいよいよ残り二冊となりました。

今回は、最初から順番に読んできた人にとってはお待ちかね、様々な疑問が解消される謎解き編となっております☆

時は、名探偵として名高いシャーロック・ホームズがまだベーカー街に住んでいた頃のロンドン。いままで登場してきた子供達はまだ生まれていない時代から物語は始まります。

夏休みのある日、ポリーは塀を乗り越えてあらわれた泥だらけの男の子、ディゴリーと知り合いになります。
この女の子と男の子。ポリーとディゴリーが今回の主人公。

そして、毎回気になる不思議な冒険への導き手として使われるアイテム、今回それは「指輪」です☆

不思議な指輪の力で、こことは違う別の世界に投げ出されてしまうポリー。さらに、そんなポリーを助けるために、勇敢にも指輪を手にするディゴリー。

黄色い指輪はあちらの世界へ。
緑色の指輪はこちらの世界へ。

しかしこの時点で二人が出会う世界は、ナルニアではありません。

新たな展開に、初めっから目が離せない!

でも、別の世界に旅立つ道具が指輪だなんて、イギリスっぽくて好きですね☆

物語は、この二人を中心にして、ロンドンと別の世界を行ったり来たり。どうやら世界は、こっちの世界とナルニアの世界以外にも、たくさん、た~くさんあるらしいのです。

すべての世界をつなぐ場所。
《世界と世界のあいだの林》の描写がとっても神秘的♪

第一巻「ライオンと魔女」で、洋服ダンスを通ってナルニアに降り立った子供達が出会う、印象的な一本の街燈。
まるでロンドンの街角に立っているようなこの街燈が、どうしてナルニアの森の中に立っているのかも、今回ついにわかります☆

魔女ははたしてどこから来たのか?
なぜ人間がナルニアの王となったのか?
そしてなにより、あの洋服ダンスの秘密とは?

知りたい知りたいと思っていたことが、次々と明らかになっていく興奮。
そして子供達に課せられる新たな試練。

翼あるものいう馬、天馬に乗って二人が目指すのは、ナルニアのはるかな果て、氷の山々に囲まれた緑の丘にある一本の木。

その木になるリンゴをアスランのもとに届けなくてはなりません。

その実には不思議な力があり、食べたものは不老不死になるといいます。
病気のお母さんがいるディゴリーは、そのリンゴが欲しくて欲しくてたまりません。

(一つぐらい食べても…)

心揺らぐディゴリー。

さらに魔女の言葉が追い討ちをかけます。

誘惑に打ち勝つって本当に難しいですよね。

さあ、この試練を前にディゴリーはどうするのでしょう?

ディゴリーとポリーの様々な体験と冒険。勇気と決断は見所です。

謎解きを各所に散りばめながらも、ストーリーとしての魅力も盛りだくさん。ものいうけもの達はカワイイし、子供達は勇敢だし、なにより偉大なライオン、アスランの存在感はスゴイ☆

毎回違った形で楽しませてくれる「ナルニア国物語」の魅力は尽きません♪

ちなみに、もし不老不死の実があったとしたら、私なら食べます!
たとえ愛する人や友達が年老いて死んでしまったとしても、それにも増して未来の世界が見てみたいって思いが強いから。

もしそんなチャンスがやってきたら、あなたなら、どうします?













C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

八月の本棚 3 『馬と少年』

2004-08-28 23:30:00 | ナルニア国物語
さて今回は、「ナルニア国物語」全七巻中、私がもっとも早く読み終えた一冊。

『馬と少年』のご紹介です☆

主人公の少年、シャスタは生まれも定かではない拾われっ子。
貧しい漁師の下でこき使われ、朝から晩まで働かされる毎日。

そんなシャスタと漁師のもとに、カロールメン国の貴族が馬に乗って訪れたことによって、シャスタの運命が動き出します。
…いえ、馬が貴族を乗せてやってきたことにより、と言ったほうがいいのかも。

だってその馬、ブレーはナルニア生まれの「ものいう馬」だったのです☆

このブレー、カロールメンの貴族を乗せて数々の戦場を駆け抜けてきた立派な軍馬だということで、プライドが高くって小生意気。
馬に乗ったことのないシャスタにアレコレと指図して、辛抱強く教えますが、「やれやれ、人間ってなんて不器用なんだ」という態度がみえみえ。

あやうく貴族に売られそうになったシャスタを励まし(そそのかして?)ナルニアに逃げ延びようとする馬と人間。

だけれどカロールメン国とナルニア国の間には、アーケン国という国があり、しかもアーケン国に行くには大きな砂漠を横切らなければならないのです。

さらにさらに、いけ好かないひひジジイと結婚させられそうになった貴族のお姫様が逃げ出してきて、シャスタ一行に合流したり、ライオン(!)に追いかけられたり、はたまた元気いっぱいでいたずら好きの王子様にシャスタが間違われたりと大忙し。

しかもナルニアの女王にふられたカロールメンの王子が、ナルニアに攻め入ろうとしていることを知ってしまった一行は、ナルニアに急を知らせるという使命まで帯びることになってしまいます。

もう読み出したら止まらない。
シャスタがいい。お姫様のアラビスがいい。馬のブレー最高!

はたして軍隊との追いかけっこはどうなるのか?
家出したアラビスの結末は?
ナルニアはカロールメンに勝てるのか?
そしてシャスタの出生の秘密とは?

そうそう、もちろんライオンのアスランだって忘れてはいけません。

ちなみに題名の『馬と少年』の原題は『The Horse and his Boy』。
つまり、『馬と、彼の少年』です☆

どうです、シャスタとブレーの関係、わかってもらえます?





C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

2004.08.16.





 八月の名言集より




世界は粥やジャムからできていない。それゆえ、怠け者を気取っていてはならぬ。固い食物も噛まねばならぬ。喉につまってへこたれるか、消化してしまうかどっちかだ。

         ―ゲーテ「格言的」―

八月の本棚 2 『銀のいす』

2004-08-10 02:08:00 | ナルニア国物語
「ナルニア国物語」の中で、私が一番気に入っているお話が、この『銀のいす』です☆

主人公は前回『朝びらき丸東の海へ』で、嫌々ながらナルニア国に来てしまった男の子ユースチス・スクラブ(変わった名前でしょう☆)。

学校でいじめられて泣いていた同級生の女の子、ジル・ポールを慰めてやりたい彼は、誰にも言わないという約束で、彼女にナルニアの話をしてしまいます。

「どうして、そこにいけたの?」
「いける方法はただ ―魔法でだけだ。」

今回も、ナルニアへの扉は、思いもよらない形で二人の前に開かれます。そして、思いがけずたった一人で金色に輝くライオンに出会ったジルは、行方不明になっている王子、ナルニア王カスピアン十世の息子を捜すよう、その金色に輝くライオン、アスランその人から言いつかるのです。

自分の弱さを認めたくなくて苛立ったり、自分の強いところをみせびらかそうとして失敗してしまう、そんな人間味あふれた女の子のジルがとっても魅力的☆

でもやっぱり今回のキャラクターナンバーワンは、子供たちのお供をして、王子探索の旅に出るナルニア国の住人、沼人の”泥足にがえもん”です☆(水かきのある長い手足を持っています)

物事の悪い面のことを考えずにはいられない性格で、しかも必ず口に出さずにはいられない超マイナス思考でお喋りな泥足にがえもん。ところが最悪の結果を常に口にするくせに、やるべきことはやり通す勇敢さは誰にも負けないのだからカッコイイ!

激しい吹雪に襲われながら。
温かくて美味しそうな料理を前にして。
三人は様々な時と場所で、信じること、信じ続けて行動することを試されます。

地下の国で三人を誘惑する魔女。

太陽なんてない。
地上の国なんてない。
すべてはこの地下の国にあるものを手がかりに、想像で作り上げた存在にすぎない。
世界は今その人が見ているとおりのものであって、ナルニアなんて国も、アスランなんてライオンも存在しない。

魔女のたくみな言葉に、つい認めてしまいそうになる三人。

暖かいベットに豪華な料理。
夢を求めて愚かな苦労をするよりも、もっと利口になって現実の世界でいい暮らしをしたらどう?

甘い魔女の言葉に、いったい子供たちはどう反論するのか?

そして行方不明の王子は無事見つかるのか?

ハラハラドキドキの展開の中、魔女との息詰る論戦が今回一番興奮しました。

天国なんてない。神などいない。さあ、現実の快楽を追求し、幸せになろうじゃないか。

信じるということはどういうことなのか。

そのことの意味がおぼろげに伝わってきたような気がして、読んでいてビックリ。

改めて物語の持つ力に感動してしまいました☆

ラスト。ジルをいじめていた同級生達が目にすることになる光景も見物ですよ♪


「あたしにいえることは、心につくりだしたものこそ、じっさいにあるものよりも、はるかに大切なものに思えるということでさ。」


あなたの心の中の大切なものはなんですか?
それをずっと信じてきましたか?

あなたが何かを信じている時、きっとどこかでナルニアへの扉が開いているはずです。

ユースチスやジルと共に、その扉を見つけにいきませんか☆





















C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

八月の本棚 はじめて『ナルニア国物語』を読むかたに

2004-08-09 00:09:00 | ナルニア国物語
「ナルニア国物語」は全七冊からなるファンタジー物語です☆

私達の世界とは、どこか違う世界にありながら、どこかしらでつながっている不思議な国ナルニア。
そこでは動物達が言葉をしゃべり、木や水の精が楽器をかなで、ヤギ足のフォーン達が楽しげに踊る、まさにおとぎ話の世界♪

その世界に足を踏み入れた子供たちは、この素晴らしい世界で数々の冒険を体験します。

一冊一冊が、一つのお話になっていて、それだけでも充分楽しめるのですが、七冊全部読み終わると、これがまた一つの大きな物語になっていることに気が付きます。

それはナルニアという国が、この地上でないどこかで生まれ、様々な王たちに治めらた後、さいごの戦いを経て終末へと向かう一つの世界の一大叙事詩。
壮大な歴史物語でもあるということです。

先月の本棚で紹介した三冊は、次のようなお話でした。

『ライオンと魔女』

ロンドンから疎開してきた子供たちが、洋服ダンスの中から、ナルニアの世界に入り込み、偉大なライオン、アスランの助けをかりてナルニアを長き冬から解き放ちます。

『カスピアン王子のつのぶえ』

長き魔女の時代を終わらせ、子供たちがナルニアを治めてより数百年ののち、テルマール人によって失われてしまったナルニアを、王子カスピアンを助けて再び取り戻します。

そして

『朝びらき丸東の海へ』

のちに航海王と呼ばれることになるカスピアンと共に、行方不明の七卿を捜して東の大海原に船を漕ぎ出していく子供たちの冒険が描かれます。

これらの物語のどれもが、子供向けに書かれているのも事実ですが、大人の読者なら、読み進むうちに、この「ナルニア国物語」に隠された、さらに大きなもう一つの物語にも気が付くことでしょう。

それは、すべての物語に登場する偉大なライオン、アスランの物語。

アスランとはいったい何者なのか…

どうぞ、ご自身の目で確かめてください☆

では、今月は後半の四冊の紹介をしていきたいと思います。
不思議な国ナルニアへの冒険と探検の旅。

そうぞ、お付き合い下さいませ☆

七月の本棚 4 『朝びらき丸東の海へ』

2004-07-25 22:22:00 | ナルニア国物語
この世界の果てってどうなっているのだろう?

大昔から人は、自分達の住む大地の果て、海の向こうのそのまた先を想像して、様々な世界観を作り上げてきました。

大きな亀の上で象がおぼんのような大地を支えている?
大地は平らで、海が滝のように流れ落ちていて、星が天球に張り付いている?
大地は球体で、真空の宇宙に浮かんでいる?

しかし、ギリシアの哲学者。プラトンはこう考えました。


 この世界は真実の世界の影にすぎない。真に美しく、滅びさることのない世界、魂の故郷が存在する。


この世界を作っている永遠の型(イデア)のある世界。それこそが真実の世界であり、世界はこのイデアの世界の写しなのだ、と。

さて、「ナルニア国物語」のご紹介です♪

今回は、いまや立派な王様となったカスピアンと、ルーシィとエドマンド、そして二人のいとこのユースチスが大海に乗り出す物語。

『朝びらき丸東の海へ』です☆

カスピアンのお父さん(前々ナルニア王)の友人だった七人の貴族を捜すためにナルニアを旅立ち船出した”朝びらき丸”。

だけど同行する、ものいうケモノ、ネズミの騎士リーピチープには、もっと大きな望みがありました。
東の海の果てまで行き、偉大なるライオン、アスランの国を見つけようというのです。

子供たちを乗せた”朝びらき丸”の航海には色々なことが起こります。

嵐に大波、飢えに渇き、ドラゴンに魔法使いに海底で暮す海の人々。

海の上でもナルニアの世界には魅力がいっぱい♪

毎回気になるナルニアへの扉も、今回は意外な方法で子供たちの前に現れます。

その中でも新しいキャラ、ユースチスからは目が離せません。

ナルニアの世界をなかなか認めようとしないユースチス。「家に帰せ!」「イギリス領事はどこだ?」ともう大騒ぎ。
臆病なくせに強がりのユースチスはなにかと問題を起こしてルーシィとエドマンドを困らせます。

物語が進むにつれ、知られていなかった世界がしだいに明らかになっていく様子には読んでいてドキドキ☆

いったいナルニアの世界の果てとは、どうなっているのでしょう?

船乗り達は、大きな滝になって海が流れ落ちていると信じていますが、それを聞いてもリーピチープは恐れません。

この世の果てを少しでも見られるものなら、アスランの国をひと目見られるものなら、どんな危険も犯すだけの価値はある。

様々な困難と不思議な島々。

星の導きによってたどりついたスイレンの花の咲き乱れる海原の果てに、子供たちが、そしてリーピチープが見ることになるこの世の果てとは?

作者のルイス先生の奇想天外なアイディアの数々には脱帽します。

そしてその中に込められた、確かなメッセージ。

人の持つ弱さと強さ。その攻めぎ合いのドラマが子供たちの中でも展開されます。

作者の考える、このナルニアの世界観もしだいに明らかになってきて面白い☆

そのヒントはプラトンの考えた、あっと驚くような世界観、あのイデア説の中にも見られます。

この世界は真実の世界の影なのだよ…

ちなみに、今我々が使っている”アイディア”という言葉は、この”イデア”という言葉からきています。真実の世界にあるもともとの”姿”が頭の中で形になる(思い出した)という考え方です。

永遠の真理、永遠の美、そして永遠の善なる世界。

大帝の息子であり、人々の罪のために殺された人。

再びよみがえり、時に子ヒツジと呼ばれる人。

子供たちの住む丸い世界(地球のことです)では別の名前で呼ばれている偉大なライオン、アスランの住む国。

さあ、あなたも竜の舳先を持つ船、”朝びらき丸”に乗って、荒波ゆれる大海原へ冒険の旅に出かけませんか?

きっとおしゃべりなしゃべるネズミ、リーピチープが喜んで迎えてくれますよ☆









C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

七月の本棚 3 『カスピアン王子のつのぶえ』

2004-07-18 08:35:00 | ナルニア国物語
こんな経験はありませんか?

それを口にしたら、孤立するかも知れないとわかっているのに、自分の心の声が強くこう言っているのです。

「それを言わなければいけない。たとえその人に嫌われようと」

さて、「ナルニア国物語」の第二弾は、王子カスピアンを助けてまたまた四人のきょうだいが大活躍!
失われたナルニアを取り戻すために子供たちが繰り広げる冒険いっぱいの物語。

『カスピアン王子のつのぶえ』のご紹介です☆

大きなお城に暮らす王子様。カスピアンは、ナルニアの前の王様だったお父さんが亡くなってから、跡を継いだ叔父のもとで、王子としてなに不自由なく暮らしていました。

キレイな着物やたくさんのオモチャ。豪華な食事や召使達に囲まれた生活も、決して嫌いではないのですが、話し相手のいないカスピアンは乳母や先生の教えてくれる昔話や伝説に夢中になります。

ものいうケモノや、フォーンや小人。半人半馬のセントールや木や水の精。大昔のナルニアに住んでいたというそれらの人々を、ひと目見てみたいと願うカスピアン。
しかし王である叔父は、そんな子供だましの話は、口にすることもならぬと禁止してしまいます。
いったいナルニアに何が起こったのでしょう?

一方、イギリスに住むペベンシー家の四人のきょうだいは、寄宿学校に帰るために、駅のプラットホームで汽車の来るのを待っていました。
ナルニアの冒険から一年。誰もが「ナルニア」のことより、再び始まる学校生活のことで気がめいっている時、ふいにナルニアへの扉が開きます。

作者のルイス先生も、イングランドの寄宿学校に通っていた経験があるので、この”気がめいった”気持ちには、実感がこもっています☆

ラテン語や代数の退屈な授業を抜け出して、こんな別の世界の冒険に旅立てたら、そらゃあ素敵ですよね♪

前回に増して、登場人物も種類(笑)が増え、ストーリーの巧みさも上回っていますが、「ナルニア国物語」の魅力はそれだけじゃありません。

ルイス先生は、今回も冒険だけを子供たちに課したわけではありませんでした。

信じる心とはいったい何でしょうか?
自分を信じる心。
人を、この世界全体を信じる心。
きっと、きっとこの世界はいいものであるはずだから…

自分の信念に絶対の自信のある人なんていやしません。不安に襲われたり、ゆらぐこともあるでしょう。ひとに嫌われたくない。面倒なことは避けたい。なるべく穏便に済ませたい。そんな感情に包まれて、言うべき言葉を飲み込んだり、するべき行為をしなかったり。


「ああ、アスラン。」
「わたしのせいだと、おっしゃるんじゃないでしょう?」
「…そんなふうに、見つめないで…ああ、いいます。わたし、やればできたはずでした。」


四人の中で一番小さいルーシィが、兄や姉達が信じないこと、賛成しないことが分かっていながら、必死で説得する姿には、気高ささえも感じてしまいます。
しかも、もし誰もついてきてくれない時は、たった一人でも行かなければならないと、幼い胸に決意しているのです。

ルーシィ~♪

前作『ライオンと魔女』では誘惑に負けてしまったエドマンドも今回は大活躍!

人間って、考えることが複雑になったぶん、自分に対する言い訳もうまくなってしまったみたいですね。

はたして、カスピアン王子と子供たちは、失われたナルニアの国をよみがえらせることができるのか?

そして、時を越え、場所を越えて現れる偉大なライオン、アスランとはいったい何者?

しだいに明らかになるナルニアの世界の謎と、胸躍る冒険の数々を、どうぞお楽しみに♪

ナルニア大好き☆











C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

七月の本棚 2 『ライオンと魔女』

2004-07-11 22:42:00 | ナルニア国物語
さあ、いよいよ「ナルニア国物語」のご紹介です☆

まずはナルニアについて初めて書かれた本、今回ご紹介する、この『ライオンと魔女』からはじめることにしましょうか。

時は第二次世界大戦中のこと、ロンドンに住むペベンシー家の四人のきょうだいは、空襲をさけるために片田舎にある学者先生のお屋敷に疎開します。

さっそく広い家の中を探検する子供たち。

そのうち、末っ子のルーシィが、妙なことを言い始めます。
ほんのちょっと姿が見えなかっただけなのに、そのわずかな間に洋服ダンスの中からナルニアという知らない国に行き、そこで何時間もすごしてきたというのです。

そればかりか、その国で、おとぎ話に出てくる山羊足のフォーンに出会い、お茶まで御馳走になってきたというのだから、他のきょうだい達はその話が信じられません。

洋服ダンスの中から通じる別の世界!

しかもその世界には、いつでも行けるというわけではありません。
普段はまったく普通の洋服ダンスなのです。

話を信じてもらえないルーシィは、根が正直な子だけに、悲しくてしかたありません。しかし、そんな時、再びナルニアへの扉が開きます。

ルーシィに続いてその不思議な世界に足を踏み入れたのは、そんなルーシィをバカにしていたすぐ上の兄のエドマンドでした。

そこで出会ったのは、自らナルニアの女王と名乗る白い魔女。

そしてこのエドマンドと魔女との出会いが、ナルニアに大きな戦乱を巻き起こしていくことになるのです。

フォーンにサタイア。泉に住んでいる水の精のニンフたち。木の中に暮らしている木の仙女ドリアード。岩穴に住む赤毛小人や半人半馬のセントール。バッカス神や、はてはサンタクロースまでが現れる、こことは別の世界にある国「ナルニア」

そして、このナルニアにさらなる魅力を与えているのが、ものいうケモノの存在です☆

人間と変わらない暮らしをしている彼等の、とってもとっても愛らしいこと♪

ダムでせき止めた川の上の家で、ミシンやフライパンを器用に使って暮らすビーバーさんや、ケーキや飲み物でクリスマスを祝うキツネやリス。別のお話では、ネズミの騎士が活躍したり、しゃべる馬の冒険が語られたりもしています。

それがみんな、すっごく個性的でカワイイんですよね~☆

しかし、そんな素敵な世界も、今は白い魔女のおかげでず~と冬が続いているというのです。

そんな中でも、ナルニアの人々は、動物達は信じています。
いつかは森の王。海のかなたの大帝の息子。偉大なライオンのアスランが現れて、魔女の時代が終わるのだと。

子供たち(ナルニアでは、アダムの息子、イブの娘と呼ばれます)は、その勇気を試され、様々な困難にぶつかります。

時に誘惑に負けたり(特に食欲!)、疑ったり、くじけそうになったりしながらも、強大な魔女の軍団に立ち向かって行くその姿にはついつい引き込まれてしまいます☆

物語とはいえ、子供たちが命がけで戦ったり、犯した罪の償いを必要とするシーンには、思わず目をそむけたくなるほどショック。

だけど、そういう誤魔化しのないところが、また魅力的なんですよね。

さあ、あなたも古い大きな洋服ダンスを開けて、冒険の国に旅立ちませんか?

子供達が降り立ったように、しんしんと雪の降り積もる《街燈あと野》があなたを迎えてくれるでしょう。
森の中にただ一つ光を投げかけるこの街燈。なぜこの場所に立っているのかはまた別のお話。

偉大なライオンと子供たちの冒険を、どうぞお楽しみに☆













C・S・ルイス  著
瀬田 貞二  訳
岩波少年文庫

七月の本棚 『ナルニア国物語』

2004-07-04 23:19:00 | ナルニア国物語
「アスラン!」
「キラ…ヤマトー!!」

…あ、間違えてる間違えてる(笑)

今回はガンダムSEEDネタじゃなかった。
アスランはアスランでも、偉大なライオン、アスランが登場するお話。

今回ご紹介するのは、ファンタジーの名作。

C・S・ルイスの『ナルニア国物語』です☆

古い衣装ダンスにもぐりこむと、なぜかそこは雪の降り積もる森の中。

こんな導入部分、ワクワクしません?

不思議な世界「ナルニア」で、子供達が体験する冒険の数々!
もの言うケモノや、水の精にニンフ達。小人や巨人や山羊足のフォーン!
そんな魅力的な登場人物が大活躍。

私の大好きな物語です♪

世界中で愛され、読み継がれるてきたこの物語。ファンタジーの中では古典の部類に入るでしょう。

作者のC・S・ルイスは1898年生まれ。英国はオックスフォード大学で教鞭を執るかたわら、同じ大学で教えていたJ・R・R・トールキンらとサークルを作り、作品を発表しあっていました。有名な『指輪物語』も朗読されたりして、刺激を受けあったと言われています。
ちなみに、私の大好きな作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズは、この二人が現役のころにオックスフオード大学に在籍していました。

う~、なんてうらやましい~☆

さて、本編ですが、全部で七巻。

「ライオンと魔女」
「カスピアン王子のつのぶえ」
「朝びらき丸 東の海へ」
「馬と少年」
「銀のいす」
「魔術師のおい」
「さいごの戦い」

という構成になっています。

『指輪物語』と違い、一話完結のオムニバス形式になっていますので、一冊づつでも楽しめますが、この順番で読むのがおススメ。

すべてを読み終わった時、子供達の冒険に加え、ナルニアの創世から終末へとむかう一大叙事詩が明らかになっているというしかけ☆

お話は一話完結ですが、登場人物や子供達の中には、いくつものお話に登場したり、時代を越えて呼び出されたりする子もいます。

これはナルニア国とこっちの世界(私達の住んでいる世界)の時間の流れが違うせい。ナルニアで何十年も過ごしたのに、こっちの世界ではほとんど時間がたっていないなんてこともあります。姿も子供に戻ってしまう。

なんてうらやましいんでしょう☆

物語の重要な、そしてナルニアの世界を代表するのが、偉大なライオン”アスラン”の存在です。見る者に勇気と喜びを与え、憧れを持って見つめてしまうその姿。

このアスランから、そして『ナルニア国物語』から、子供達(そして多くの読者)は大切なものとは何か、真に戦わなければならない誘惑とは何かを感じ取っていきます。

こちらの世界では別の名で呼ばれているというアスランを求めて、あなたも冒険の旅へ出かけてみませんか?

洋服ダンスがなくっても大丈夫。ナルニアへの入り口は、あなたのすぐ近くに開いています。

次回からは、それぞれのお話をちょっとづつ紹介していきたいと思います。

よろしかったら、お付き合い下さい☆