こうの史代原作、片渕須直監督のアニメ映画、『この世界の片隅に』(2016年)を観て来ました。
今年大ヒットした新海誠監督のアニメ映画『君の名は』と比べて地味な印象のある作品ですが、私は大好き!
映画館で笑いと涙で感情をゆさぶられて来ました。
双葉社
発売日 : 2016-10-26
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舞台が太平洋戦争を挟んだ広島、呉の町なので、「青葉」や「利根」といった旧帝国海軍の軍艦も出てきたりして「艦これ」ファンには嬉しい場面も♫
主人公の「すず」は18歳で呉に嫁ぐことになるのですが、当時は珍しくなかったとはいえ、よく知らない男性と結婚したとまどいや距離感、男女の照れや姑や小姑と関係などが恋愛結婚が当たり前の現代人にも自分のことのように伝わって来て、すごく共感できる。
「すず」の声は改名後声優初挑戦となる「のん」さん(能年玲奈)が担当。音楽を担当した「コトリンゴ」さんの歌声もこの作品にピッタリでした。
戦争という狂気の中で日常を生きる人々。
食べる物がどんどん無くなっていき、空襲警報に怯え、男達を戦地へと送り出す。
でもこの映画、「戦争映画」じゃないんですよね。
どんな時代でも、どんな悲劇の中でも、人間って生きていかなきゃならない。
赤ん坊は泣くし、お腹は空くし、掃除や洗濯もしなきゃいけないし、腹も立てば、笑いがこみあげてくることだってある。
それなのに、生きることを邪魔する「戦争」がやって来る。
「人さらい」から逃げ出したように、「すず」にとって身の回りの物を工夫してこの「戦争」から逃げ延びる、生きのびることがまさに「生きる」ことなんですよね。
それはすごく困難で、あまりにも辛いことが押し寄せてきて、「生きる」ことさえ投げ出してしまいたくなるけれど・・・
愛する人がいる、愛する故郷がある、愛する人々との思い出がある、生きたくても生きられなかったひと達がいる・・・
一日一日を丁寧に生きなきゃな、とこの映画を観て思いましたよ私は。
映画の中で好きなシーンは、すずとその夫の「周作さん」が周りも気にせず列車の中から降りてまでずっとケンカしているシーン。
二人が本音でしゃべっていて、何だか本当の夫婦になった瞬間みたいに思えました。
駅員さんに「お二人さん、そりゃあ今しなきゃいけないケンカかね」なんて言われても全然おさまらない(笑)
「夫婦ケンカは犬も食わない」をまさに絵に描いたようなシーン。
こうの史代さんのゆったりとした絵を、見事なまでにアニメーションとして再現している作品です。
まだ観ていない人はハンカチ必須ですよ。
私も映画館にいた周りの人達も、みんな目頭押さえながらスクリーンに釘付けでした。