私が本を選ぶ基準のひとつに、「最初の一行」というのがあります。
本を開いて飛び込んで来る最初の一行。これで当り、はずれの見当をつけます。自分の感性に響くかどうか、ものすごく曖昧な基準ですが、これがけっこう大切だったりします。
さて、今回の作品の出だしは、こんな感じで始まります。
”私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。”
と、言うわけで、吉本ばななの「キッチン」です。
こういうことの言える主人公は大好きです。
だって”この世”でいちばん好きなんですよ。しかも、”・・・だと思う。”って、あなた、そんなに冷静に自分を見つめなくても・・・。
つまり、そういうことが出来て、そう感じられる主人公ってことです。これはもう、読むしかないでしょう。
そこでもう一節、お気に入りのセリフを、
”私、桜井みかげの両親は、そろって若死にしている。そこで祖父母が私を育ててくれた。中学校へ上がる頃、祖父が死んだ。そして祖母と二人でずっとやってきたのだ。先日、なんと祖母が死んでしまった。びっくりした。”
このとらえかたがスゴイでしょ?
普段、私達の心のどこかにある想いを、こうもうまく言葉にできるなんて、さすがプロの技って感じです。
物語は、唯一の肉親を亡くしたみかげが、祖母と仲の良かった雄一と、その母(実は父親)の家に同居することになり、日々の暮らしの中での、三人の交流が描かれていきます。みかげの悲しみを積極的に癒すのではなく、二人がそばにいることが、みかげの心を支えていく。
祖母を亡くした時は、あまりちゃんと泣いていなかったというみかげが、ようやく落ち着いた頃、バスに乗り合わせた孫とおばあちゃんの会話を聞いているうちに、自分が泣いていることに気が付き、自分の機能が壊れたかと思うシーンは感涙ものです。
孤独は強制的にやってきます。
もし、そばに誰もいない時に襲われたら・・・。
そんな時のために、こういう本を一冊置いておくのもいいかも。
吉本 ばなな 著
角川文庫
本を開いて飛び込んで来る最初の一行。これで当り、はずれの見当をつけます。自分の感性に響くかどうか、ものすごく曖昧な基準ですが、これがけっこう大切だったりします。
さて、今回の作品の出だしは、こんな感じで始まります。
”私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。”
と、言うわけで、吉本ばななの「キッチン」です。
こういうことの言える主人公は大好きです。
だって”この世”でいちばん好きなんですよ。しかも、”・・・だと思う。”って、あなた、そんなに冷静に自分を見つめなくても・・・。
つまり、そういうことが出来て、そう感じられる主人公ってことです。これはもう、読むしかないでしょう。
そこでもう一節、お気に入りのセリフを、
”私、桜井みかげの両親は、そろって若死にしている。そこで祖父母が私を育ててくれた。中学校へ上がる頃、祖父が死んだ。そして祖母と二人でずっとやってきたのだ。先日、なんと祖母が死んでしまった。びっくりした。”
このとらえかたがスゴイでしょ?
普段、私達の心のどこかにある想いを、こうもうまく言葉にできるなんて、さすがプロの技って感じです。
物語は、唯一の肉親を亡くしたみかげが、祖母と仲の良かった雄一と、その母(実は父親)の家に同居することになり、日々の暮らしの中での、三人の交流が描かれていきます。みかげの悲しみを積極的に癒すのではなく、二人がそばにいることが、みかげの心を支えていく。
祖母を亡くした時は、あまりちゃんと泣いていなかったというみかげが、ようやく落ち着いた頃、バスに乗り合わせた孫とおばあちゃんの会話を聞いているうちに、自分が泣いていることに気が付き、自分の機能が壊れたかと思うシーンは感涙ものです。
孤独は強制的にやってきます。
もし、そばに誰もいない時に襲われたら・・・。
そんな時のために、こういう本を一冊置いておくのもいいかも。
吉本 ばなな 著
角川文庫