2軒の本屋さんをはしごして、4時間で読み終えました。
本屋さんを替えたのは、さすがに2時間も立ち読みしていると居づらくなって(苦笑)
宮部みゆきさんのミステリー小説三部作、その第一部。
『ソロモンの偽証 第一部 事件』(新潮社)
741ページもあってやたら分厚いんです。
それなのに、次の展開が気になって、飽きさせないどころか、どんどん先が読みたくなる!
クリスマスの朝、校舎の片隅で発見された男子生徒の死体。
警察は現場検証と解剖所見から、生徒が校舎の屋上から転落したため死亡したと判断、目撃者もなく、状況から自殺と断定します。
なぜ14歳の少年は死んだのか…
すごくよくできています。
すごく読ませてくれる小説なんですが、私は個人的に途中から、「もういいよ~」と悲鳴を上げてしまいました。(ほめてます)
なんていうか、人間関係が占める割合が多すぎて窒息しそう…
宮部みゆきさんの作品は、『ブレイブストーリー』を読んだ時も感じたのですが、人間の内面の描写が多くて、どの登場人物も結局ひとつの世界のルールに縛られている。
誰も彼も世間の価値観、宮部みゆきの価値観から抜け出せていない。
今回の『ソロモンの偽証』でいえば、みんな「学校」というルールに縛られた中でお話が進行します。
子供たちも、大人も、警官も、親やマスコミも、立場や主張は違いますが、それは鏡に写した姿だったりするだけで、みんなが同じ基準を指針に舵を取っている。
ある者はそれに愚直に従い、ある者はそれに反発し、ある者は上手に利用し、ある者は翻弄されながら。
それは確かに本人たちにしてみれば大問題なんでしょう。
子供たちにとって学校という世界がある意味絶対であるかのように。
しかし、他人の顔色をうかがい、仲間同士さぐりあい、権力争いをしていられるのは、衣食住がとりあえず保障されているから。
飢餓や戦争や宗教闘争や人種差別といった、価値観自体の争いが入ってきたとたん、この小説の「甘さ」が露見してしまう気がするのです。
思春期の子供たちの葛藤、心の闇、教師の保身に身勝手な親、それはとても大切なテーマだけれど、もういいよ、かんべんしてくれ、3行で済むことを延々700ページ、しかも三部作で書いちゃうあなたの力量はたいしたもんだよ、それは認める、すごいよ、だから早く読者を楽にしてくれ…
それが私の本音(苦笑)
いや、ほめてるんですよ、これ。
でも、もう少し人間関係と離れた価値観、例えば虫の好きな少年とか、将来バイオリン職人を目指している生徒とか、休日には海でサーフィンに夢中の女の子とか、息抜きがあっても面白かったかな。
主人公っぽい女子生徒が学校から徒歩2、3分のところに住んでいて、お父さんが警視庁の刑事というのはちょっと都合よすぎるし、優等生で理想的な生徒、家庭でも父親と信頼し合っているというのは気持ち悪いけれど、それはまぁ許容範囲内。
唯一気になったのが、ちょっと太っている松子ちゃんがこのままだと可哀想すぎる…
不良少年にも少し理解を示すところも納得いかない。
まさか「子供はみんな善人で、家庭環境の犠牲者」なんて結論じゃないでしょうね?
それじゃああんまりだ…
小説の世界にどっぷりつかる本の読み方というのも良くないんでしょうね。
読んでいて、しだいに中学生の心の闇に自分が捕らわれてしまった錯覚に陥って、すごく落ち込んでしまいました。
亡くなった男の子の考え方にすごく惹かれるものがあって、同調してしまったのも原因かも。
それくらい魅力のある作品なんです!
でも、「この世界はそんなに捨てたもんじゃないよ」と叫びたくなってしまう(笑)
これはこのままではマズイ、と思って、慌てて心の応急処置。
同じく中学生を主人公にしながら、こちらは胸がキュとしめつけられるような男の子と女の子の初々しい交際を描いたマンガ、水谷フーカさんの『14歳の恋』(白泉社)を買って読みました♪
クラスメイトの目を気にして、学校ではそ知らぬ態度で接する二人。
アイコンタクトで会話したり、誰もいない理科室で密会したり☆
彼女の体に偶然触れてしまい、そのやわらかさにドギマギしたり、彼の目立ってきたのどぼとけに思わず見入ってしまったり。
そうそう、14歳はこうでなくちゃ!!
という、照れくささ爆発の描写が多数♪
文学少女でノートに小説風の日記を書いている志木さんとか、職権乱用で年下生徒に手を出す(笑)美人の日野原先生とか、サブキャラも魅力的!
授業中に目が合っただけで何となく心が騒ぐ、そんな時期がありましたなぁ(苦笑)
ちなみに宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』、私にはまだタイトルの意味がわかっていません。
ソロモンといえば、大岡裁きで有名な、一人の子供に母親を名乗る女性が二人現われ、子供の両腕を引っ張らせて勝った者が母親の権利を得られるとなったのに、痛がる子供を見て実の母親は思わず手を離してしまう、という逸話が有名ですが、そのことなのかな?
もし、証拠がない状態で、まったく別のことを主張する証人が二人現われたら、どうやって真実を突き止めるのか?
人間はウソをつく。
では、本当の智恵とは、そのウソを見破ることなのか?
それとも…
というテーマ?
わたしが「3行で済む」と思ったこの小説のテーマは、「人は信じるに足る存在なんだよ、子供たち」ってことなんですが(あくまで私の個人的な感想です)
これはやっぱり、第二部、第三部を読まないとスッキリしないかな?
困ったなぁ(←嬉しい悲鳴)