私的図書館

本好き人の365日

七月の本棚 3 『女生徒』

2007-07-31 23:32:00 | 本と日常
朝起きて、考えたことを、あなたは覚えていますか?

コロコロと気分が変わるように、頭の中もコロコロと変わる。

そんな女子学生の心の内を、あの文豪、太宰治が女子学生の語り口で書いた小説があります。


…私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京のどこにいるか、ごぞんじですか?


足の不自由な犬にカア(可哀想な犬だからカア)と名前を付け、その目の前でもう一匹の犬を可愛がり(こちらは白くて毛並みも美しい)、カアなんて死んでしまえばいい、醜いお前は生きてさえいけないのだ…

とわざと意地悪をし、その自分の行為に涙する。(涙は出ないのだけれど…)

今回ご紹介するのは、39歳目前でこの世を去った作家、太宰治が29歳の時に発表した作品、*(キラキラ)*『女生徒』*(キラキラ)*です。

高校生の頃。
SFやファンタジー、サンデーやジャンプばかり読んでいた私は、教科書に載っていたこの作品を読んで、いっぺんで太宰ファンになってしまいました♪

教科書に載っているような作家なんて、どうせ堅苦しいものを、もったいぶって書いているに違いない、そう思っていたのに、この作品はぜんぜんそんなことない☆

独白体というらしいですが、一人の少女の視点で一日の様子が語られます。

朝起きて、身支度し、掃除をして朝食にキュウリを食べる。

電車に乗って学校に行き、帰って来て母親のお客のために食事の用意し、お風呂に入ってから庭に出て、亡くなった父のことを少し思う。

それから母親の肩をもんであげ、洗濯をして、同じ空の下、同じように洗濯しているであろう、パリの裏町に住む、同じ年の女の子に思いを馳せ、寝床に入る。

事件らしい事件も起きない。
恋も始まらない。
悲劇もない。

それでも、とっても魅力的な少女の一日♪

朝は犬のカアに意地悪をしたり。

電車の中ではサラリーマンや子供を背負ったおばさんを、ほんとうに嫌だと思ったり。

「死んだ妹を、思い出す」なんて言う伊藤先生にゲッとなりそうになったり。

そのくせ、夕焼けの空を見て、涙が出そうなほど「みんなを愛したい」と思ったり。

大人になっていく自分をいたたまれない気持でながめ、いつまでも子どもでいられないことを悲しく思ったり。

庭の草取り。
神社の森で見た麦の穂。
新しい下着に刺繍した小さい薔薇の花。

現代の小説にも負けないくらいあっけらかんとした、それでいて共感してしまう文章☆

文豪だなんてダマされてはいけません。

とってもとっつきやすく、読んでいて楽しくなってしまいました♪

「美しく生きたい」、なんてしおらしく思った矢先に、もう「美しさに内容なんてあってたまるものか」とロココに憧れ、美しさは「無意味で」「無道徳」だと決め付け、だから私はロココが好きだ、と宣言する。

ウキウキしたかと思うと、お米をといでいるうちに悲しくなったり。

本当、一日のうちで気分も考えもコロコロ変わる♪♪

太宰治と聞いて、ちょっと敬遠してしまう人もいるかも知れません。

教科書に載っている写真なんか、いかにも”文豪”という感じで、あれを見るとやっぱりとっつきにくいかも。

でも、太宰治なんて、聞いた話によると、写真を撮られる時、自分でポーズを作って、わざと、あんな感じに写っていたらしいです。

そう、イメージ戦略なんです、あの写真。

なかなか文豪も油断できませんよ。

しかし、さすがは文豪、とにかく人間をよく見ている。
もう他にすることがないんじゃないかというくらい、人間を見て、人間について考えてないと、たどりつけないものを感じました。

初めて太宰治に挑戦!
という方にはもってこいかも知れません。

どうです、この夏、日本の文豪に挑戦してみては?

きっと、新しい発見があると思いますよ♪






お庭をカアの歩く足音がする…
カアは、可哀想。けさは、意地悪してやったけれど、あすは、かわいがってあげます。











太宰 治  著
角川文庫



選挙

2007-07-29 22:12:00 | 本と日常
今日は参議院議員選挙に行って来ました。

ちょっと体の調子が悪かったので、行くかどうしようか迷ったのですが、今回ばかりは行かないと良心が痛みそうだったので、軟弱な体にムチ打って出かけて来ました。

良心にまで訴えるなんて、自由民主党ってスゴイな。

岐阜県は二人区なので、ほぼ与党と野党一人づつというのは動かないのですが、やっぱり自分の権利は行使しないと☆

でも今回も候補者の方々は遠い存在。

どうせなら候補者の意思なんて関係なく、法案に賛成するか反対するかは、投票してくれた人の多数決に従います、とか言ってくれる候補者さんがいたらいいのに。

それで毎回賛成か反対かインターネットで投票してもらう。

政党にしばられず、その有権者の投票結果にのみ従う。

無理?

選挙結果は自民党大敗らしい。
果たして国民の審判をどう受け止めるのか?

どうでもいいけれど、当選者がいまだにバンザイバンザイと叫んでいるのはやめて欲しい。

バンザイするなら、せめて公約を実現した時にして。






『不思議を売る男』

2007-07-27 23:34:00 | 本と日常
東海地方もようやく梅雨が明けました。

今日は休日だったので、色々やろうと思っていたのですが(洗濯とか掃除とか…)、買い物ついでに立ち寄った本屋さんで見つけた一冊の本をウカツにも読み始めてしまい、気が付けばこんな時間!(夜の10時!!)

あぁ、何にもできんかった~(苦笑)

読みふけってしまったのはジュラルディン・マコックラン作の*(キラキラ)*『不思議を売る男』*(キラキラ)*という本☆

図書館で女の子が出会ったあやしい男。

何より本を読むことが好きな男は、ちゃかり女の子の家の古道具屋に住み込み(古本もあつかってる)、女の子の母親が苦労して経営するそのお店で働き出します。

来る客来る客に、売り物の家具や道具にまつわるお話を聞かせては、お客はもとより、女の子や女の子の母親までも引きつけてしまう男。

本の国から来たというその男の話は本当なのか?

男の正体は?

不思議な男がお客に語る、という形で綴られた不思議な11編の物語♪
いやいや、本編も合わせると12編の物語♪♪

クーラーをガンガンかけて、男の語る中国の悲恋を読みふけり。

昼飯の焼きソバを作りながら大海原の海賊の音楽に耳を傾け。

ベットに寝転んでトランシルバニアの血も凍る話に夢中になる。

本好きにはたまらない本でした♪

翻訳者の金原瑞人さんオススメの「鉛の兵隊」というお話もよかった☆

父と息子の関係が微妙に描かれていました。
でも私のお気に入りは中国のお皿にまつわる恋のお話し☆☆

300ページちょっとの作品がアッという間でした。

たまの休日、こんな過ごし方もいいかなぁ。

あぁ、洗濯が…
あぁ、掃除が…






七月の名言集

2007-07-26 23:42:00 | 本と日常
ああほんとうに

どこまでもどこまでも僕といっしょに行くひとはないだろうか。

カンパネルラだってあんな女の子とおもしろそうに談しているし

僕はほんとうにつらいなあ。











             ―宮沢賢治「銀河鉄道の夜」―




アバンチュール

2007-07-24 15:19:00 | 本と日常
ある女性の夢を見た。

駅で偶然再会し、懐かしそうにむこうから話しかけてきた。

町の食堂みたいなところで、お好み焼きを二人で注文すると、店のおばちゃんが、なぜかお金を渡す前に先におつりを出してくる。

そのおつりに合うようにお金を払わなければならないと、彼女の前でモタモタしてしまう自分。

彼女はいったん自分のアパートに帰って戻ってくる。

だけど、自分は仕事の時間が気になって時計ばかり見てしまう。(駅に着いた感じでは仕事終わりのはずなのに)

…変な夢。

彼女とはもう何年も会っていないのに、どうして夢に出てきたんだろう?

何かやり残したことでもあるのかな?

自分の中ではすっきりしていたのに、夢に出てこられるとすごく気になる。

釣り合うように無理していたってこと?

もっと自然に付き合えばよかった?

だって若かったし…

こんな夢を見させて何をさせたいだ自分?

それにしても、

釣り合うように………おつりが合うように?

夢を見せるにしても、もう少しマシな発想はできなかったのか?

自分の夢ながら、
あぁ情けない。




七月の本棚 2 『第七官界彷徨』

2007-07-23 01:28:00 | 本と日常
女性と男性の脳は造りからして違っている、ということが一時期言われていましたね。

だから男女は違う。
という結論に結びつくのですが、例えば右脳と左脳をつなぐ脳梁(あるんです、そういう器官が)は女性のほうが太くて、右脳と左脳との情報のやりとりがうんぬんかんぬん。

男性はそれに比べてなんたらかんたら。

だから男性は女性が理解できない。

これを初めて聞いた時、「そんなことないだろう」と思いました。

脳のなんたらかんたらはよくわかりませんが、男だから女だからってそんなに根本的に違うなんて思えなくて。

脳梁の太さが違うなら、何倍もガンバって考えたらいいじゃないか!

ま、たまに確かに理解できない時はあります(苦笑)

でもそれは男女という生命体そのものの違いなんていう、たいそうなものじゃなくて、あくまで個人と個人の問題なわけで(…そしてほとんどの場合、きっと悪いのはわたしなわけで)
最初から決め付けるのには大反対。

だいたい、他人を理解するなんてことは、男女じゃなくても難しいことじゃないですか。
親や兄弟、自分自身ですらわかっていると言えるかどうか。

脳の違いとか、男だからとか女だからとか、そういうことじゃないと思うんです。

それに、だからこそ、少しでも共感できた時は嬉しいし♪

さて、甚だ前置きが長くなりましたが、今回は、明治生まれの”女性”作家。

尾崎翠の代表作。
*(キラキラ)*『第七官界彷徨』*(キラキラ)*をご紹介したいと思います☆

まず題名に惹かれてしまいました♪

明治生まれと言ってもピンとこない方のために、宮沢賢治と同い年、と言えばなんとなくイメージできますか?


「私はひとつの恋をしたようである。」


主人公は詩人志望の小野町子という女の子。

東京で兄二人と従兄が一軒家を借りて住むことになったので、その炊事係りとして上京することになります。

長兄一助は「分裂心理病院」の医者。
次兄の二助は植物の恋愛を論文にまとめている学生。
従兄の三五郎は音楽大学に入るために勉強している浪人生です。

妹だからって兄たちの世話をするところが、作品が書かれた時代を感じさせますが、小さい頃から町子に接吻してくる三五郎や、患者の娘に恋する一助、失恋の痛手を植物の恋愛を研究することで癒やそうとしている二助など、登場人物の設定はかなり変わっています。

町子自身も、人間の第七官に響くような詩を書きたいと思っているのですが、肝心の第七官とは何なのか、自分でもわかっていない様子。

町子のちぢれた赤毛を気にして髪の手入れをしてくれていた祖母が持たせてくれた美髪料の煎じ薬。

一助の好きな浜松の浜納豆。

二助の研究する植物のためのこやしの臭い。

そして三五郎が弾く、音の外れた古いピアノ。

女中部屋で寝起きし、食事のしたくをし、兄たちの部屋を掃除する町子。

三五郎のぐちを聞き、たまにコミックオペラなんかを口ずさむ。

夢や希望はちっとも顔を出しません。
あるのは日常と、日常の中で町子の考えたちょっと人には言えない様々なこと。

ミカンや栗を食べたり、短く切ってしまった髪を(この世の一大事のように)気にしたり、兄の論文をこっそり盗み見たり。

テレビやラジオも登場しません。

こやしの臭いはするは、家事もたいしてうまくないは(笑)

おしゃべりでもなく、おせっかいでもなく、祖母が都会の娘たちに気後れしないよう、東京のお店でくびまき(マフラー)を買えるよう渡してくれたお金を別のことに使ってしまう町子の生活。

どこがどういい作品なのか、うまく言い表わせません。

実のところ、「いい作品」なのかさえわかりません。

紹介しておいて無責任なのですが。

例えば、手の届かない葡萄を「この葡萄はまだすっぱいのさ」と言ったキツネみたいなもので、葡萄であることはわかるのですが、どう美味しいのか説明できない。

すっぱいところならたくさん言えるのですが★☆

雨漏りのする天井のすき間から見た小さな夜空。
ふさぎこみ、悲しくなり、失恋しなければ立派な詩は書けないのではないかと思うところ。
出された塩せんべいを、あまりに部屋の中が静かなので、食べるのをやめて、どらやきに替えたり☆

印象的です。

きっと、もっと生きて、もう少し違う時間に読めば、もっと理解できる、そんな気がする小説。

たまには、そんな作品を紹介してもいいですよね♪

自分の立場からは見えないものはたくさんあります。
見えないからって、それがないことにはなりません。

あなたの第七官がこの作品に引っかかるかどうか、試してみてはいかがですか?

十代、二十代の頃にこの作品を読んでいたら、自分がどう感じるか見てみたかった気もします。

古い作品だと敬遠しないで、特に若い方はぜひ一読を☆











尾崎 翠  著
ちくま文庫(尾崎翠集成 上巻収録)





訃報

2007-07-19 23:31:00 | 本と日常
河合隼雄さんが19日午後、脳梗塞のため亡くなったとの訃報を知りました。

ユング心理学の日本での第一人者として知られ、文化庁長官にもなられた河合隼雄さん。

著書も多く、その中で「ゲド戦記」のことを取り上げていた本は特に印象に残っています。

河合さんの本でユング心理学についてずいぶん学ばせてもらいました。

79歳だったそうです。

心より、ご冥福をお祈り致します。

そして、ありがとうございました。





カキ氷で夏を知る

2007-07-18 23:59:00 | 本と日常
セミの声がするようになりました。

喫茶店には「氷」と書かれたのぼり。

もう夏なんですね~

カキ氷は宇治金時が好きです☆

イチゴとメロンとレモンと宇治金時をいっぺんにかけた「ミックス」といのが近所の駄菓子屋にあって、子供たちには人気でした。

それにしても人工着色料で色をつけただけなのに、堂々とイチゴだのメロンだの名付けるところがスゴイ。

せめて「メロン風味」とかにした方がいいのでは?

「木目調」はプリント? 本物?
「本革風」は本物の皮なの? 違うの?
「オレンジ味」なのに無果汁ってどういうこと?

う~ん、日本語って難しい。

何だか最近、本物とかニセモノとかが気になって、原材料とか原産地をついついチェックしてしまいます。

安心してウナギが食べたい…

今日買って来た本は
リチャード・ブローティガンの*(キラキラ)*『アメリカの鱒釣り』*(キラキラ)*

田中哲弥の*(キラキラ)*『大久保町の決闘』*(キラキラ)*

ポラディープ・クマール著の*(キラキラ)*『インド式秒算術』*(キラキラ)*

二桁の九九を暗算でこなすインドの子供たちを前にTVで見たことがあったので、インドの計算方法には興味があったんですよね♪

でもよく読んで見ると、決して魔法を使っているわけじゃなくて(当たり前か)、ちゃんと公式を使って計算している。

例えば 25×25=625 という計算。

これ、答えの一の位と十の位は、問題の一の位を掛けるだけ。

つまり 5×5=25

百の位は問題の十の位の一方に1足して、お互いに掛け算する。

つまり (2+1)×2=6

よって答えは 625 。 これ本当。

例えば 93×97=? という計算なら、
 3×7=21
(9+1)×9=90

で答えは 9021 となります。

面白いけれど、ちょっとした発想の転換なんですよね。
日本人でも同じようなことやっている場合があるような気がします。

例えば 19×5 なんて、普通に計算すると面倒だから、 19 を 20 と考えて、あとで 5 引けばいいやと考える。

 20×5-5=95
 19×5=95

この方が暗算しやすいでしょ?
こういうの、職場ではけっこう使っています。
インドの計算方法って、これに似ている感じがしました。(ここまで単純じゃないですけど)

でもこの本、千円以上するんですよ。
おかげで白泉社の月刊『MOE』、「ハリー・ポッター特集」は立ち読みしなければなりませんでした。

もうすぐ最終巻(英語版)が発売されますからね☆

実はまだカキ氷食べていません。

いつ食べようかな?









地震列島

2007-07-16 18:13:00 | 本と日常
夜勤明けで寝ていたので気が付きませでした。

新潟と長野で震度6強の地震があったんですね。

私の住んでいる岐阜県はすぐ隣なのでビックリです!

新潟県、3年前の地震からようやく復興しかけていたのに…

被害の様子がしだいにわかってくるにつけ、自然の力の大きさに、ただただ呆然としています。

台風、地震。
圧倒的な力ですね。

被災された方、心よりお見舞い申し上げます。





七月の本棚 『時をかける少女』

2007-07-15 14:06:00 | 本と日常
かつて、偉い先生は言いました。
「時間と空間は人間の特性であって、我々の外にあるものではない」

実は私、タイムスリップした経験があります。

その日、明日が日曜日だからって深夜の3時頃まで遊んでいたんですね。
すると、いつの間にか意識を失い、気が付くと時計の針が6時に。

朝の6時かと思いきや、それが何と夕方の6時!

日曜日を丸一日タイムスリップしてしまった!!

全然記憶がないのに、いつの間に?
宇宙人の仕業か?
時空のゆがみか?
あぁ、私の日曜日を返せ~

…不思議とこのタイムスリップは未来にしか行けません。
それと副作用でしょうか、何だか頭もスッキリします。
まるで充分睡眠をとった翌朝のような…☆

さて、今回ご紹介する作品は、多くの映像作品にもなりました。
特に原田知世さんが主演した映画は有名♪

筒井康隆さんの*(キラキラ)*『時をかける少女』*(キラキラ)*です☆

原作は100ページちょっとの小作品になっています。

気軽に読める分量ですが、やっぱりとても魅力的♪

中学校の理科の実験室。
様々な試薬にガラスの試験管。
そしてただようラベンダーの香り。

ちょっと古風な昭和の中学生といった感じの主人公たち。

中学三年生の芳山和子。
同級生の深町一夫に浅倉吾朗。

理科室の掃除をし終えた三人。
そうじ道具をしまおうと、隣の実験室のドアを開けようとした芳山和子は思わず手を止めます。

誰もいないはずの部屋の中から物音が聞こえる。

「おかしいわ、だれもいないはずなのに…」

ガチャーンとガラスの割れる音。
部屋の中に入った芳山和子の目に映ったのは、割れた試験管に、かすかに白い湯気をあげている流れ出した液体。

そしてただようラベンダーの香り。

その香りをかいだ彼女は、意識が遠のき床の上に倒れ伏してしまいます。

理科の実験室って不気味ですよね~
私たちの学校では、準備室とか呼んでいましたが、ホルマリン漬けの標本とか、動物の剥製とか、奇妙な実験器具なんかが並んでいて、究めつけはそこの唯一の住人、「人体模型」!!

内臓むき出し!
血管見えてる!

あまり一人では入りたくない部屋でした。

でも、だからこそ、不思議な雰囲気がただよっていて…

翌朝、通学途中で芳山和子と浅倉吾朗の身にとんでもない災厄が降りかかります。

暴走したトラックが、なんと二人の目の前に!!

ひかれる!

強く目を閉じる和子。

…しかし、不思議なことが起こります。
何もなかったかのような日常。
あのトラックは夢だったの?
いつもの朝。
いつもの登校風景。
いつもの教室。

トラックの影も形もない。

ただ、違うのは、何もかもが”二度目”だということ。

トラック事故の”前日”に目覚めてしまった和子。

学校のテストも、食事のメニューも、和子にとっては”二度目”

いったい、何が起こったというの?

深町一夫や浅倉吾朗に話しても、なかなか信じてもらえない。
でも、和子は知っています。
明日の朝、私と吾朗くんはトラックに轢かれる…

時をこえる力を持ってしまった少女。

果たして悲劇は食い止められるのか?
そしてあの理科実験室での出来事は何だったのか?

再び、あの時、あの場所へと時をこえた時、和子が対面する意外な人物とは?

「きっと、会いにくるよ」

時間って不思議ですよね。
楽しい時はあっという間にすぎてしまうのに、身もだえするくらいなかなか進まない時もあったりして☆

もし、昨日をやり直せるとしたら、あなたならどうしますか?

もし、過去をやり直せるとしたら?

私たちは日々選択し、新しい一歩を踏み出しています。
その先に何が待ち受けているのか、誰にもわかりません。
もし、別の選択をしていたら?
もし、別の道を選んでいたら?

きっと、たくさんの可能性があるのかも知れません。
でも、どんな選択をしようとも、あなたはあなた。

それだけは変わらないはず☆

この作品は発表されてからもう40年以上たっていますが、様々なメディアで今なお取り上げられています。

最近では、この「時をかける少女」を原作とした劇場版アニメーション(2006年)が日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞を受賞したりしています♪

それだけ、魅力的な作品なんでしょうね。

原作はまだ…という方、この夏にぜひいかがでしょうか?

ラベンダーの香りとともに、
あなたも時をかけてみませんか☆











筒井 康隆  著
角川文庫



季節の知らせ

2007-07-07 15:05:00 | 本と日常
床屋で蒸しタオルを顔に乗せられ、ウトウトしていると…

「今年は鮎がまだ届かないね」

と店長とお客さんの会話が聞こえてきました。

どうやらこの時期、いつもなら釣り仲間が解禁された鮎を二三匹は持って来てくれるのに、今年はまだ誰も持ってこないと、話している様子。

そういえば、父親が鮎の友釣りをしていたので、うちの冷凍庫にも、鮎の凍ったのが必ず入っていました。

釣り上げるところを見ているので、食べる気がしなくて、一度も口にしたことはなかったのですが、今思えばもったいないことをしたかも。

鮎は縄張り意識が強い魚なので、自分のテリトリーに他の鮎が入って来ると、体当たりして追い出んですね。

友釣りというのは、そんな鮎の習性を利用した釣り方で、オトリの鮎(親鮎)をあらかじめ用意しておいて、その親鮎に針と糸を付けて、わざと他の鮎の縄張りの中を泳がせるんです。

自分の縄張りを親鮎から守ろうと体当たりして来た鮎は、まんまとその親鮎に付けられた針に引っかかって、釣り上げられてしまうという。

よく考えたなぁ~って感心する釣り方です。

その季節季節に、「初物だから食べて」なんてその季節にしか食べられないものを持って来てくれる知り合い。

田舎っぽいような気もしますが、そういう付き合いもなんだかいいなぁ~と思ってしまいました☆

届けられた鮎で季節を知る、かぁ~

ところが、そのお客さん。
最後に余計な一言を…

「昔は川に網を仕掛けて、灯油を流して火をつけたもんさ。火に驚いてみんな網に入るんだ」

…オイオイ、自然環境破壊しまくりだろ。

一瞬とはいえ、田舎の付き合いも素朴でいいなぁ~なんて思ってしまった自分がバカでした。

あやうく美しい自然にダマされるところだった。

風流な会話だと思ったのに…

田舎もなかなか油断できません。





『サークル・オブ・マジック』

2007-07-05 19:30:00 | 本と日常
二日ほど前から肩のあたりが痛くて、首を回すのにも一苦労。

横になっても痛いので、夜も寝るに寝られず睡眠不足です。

しかたがないので薬局に行って来ました。

四十肩には早いし、単なる肩こりなのかな?

ついでに家賃も振り込んで、少ない銀行の残高を確認し、本屋さんで立ち読みして来ました。

手に取ったのは養老孟司さんの『まともバカ』という本。

TVを子どもの頃から見続けている現代の若者たちが、知識を単なる道具の一つと捉えているという見解には納得でした。

医学の知識のある学生が、水中で一時間も息を止めていられるという尊師の存在を認めてしまうのは、どちらも単なる知識として見ているから。

その他にもいくつか立ち読みして買ったのは2冊。

デブラ・ドイル&ジェイムズ・D・マクドナルドの

*(キラキラ)*『サークル・オブ・マジックⅢ ブレストランドの平和』*(キラキラ)*

高野秀行の

*(キラキラ)*『ワセダ三畳青春記』*(キラキラ)*

どちらも面白くて『サークル・オブ・マジック』はもう読み終えました☆

本読んでる時は肩こりの痛みも不思議と感じないんですよね~

梅雨の晴れ間はそうは続かず、明日からまた雨が降るとか。

早く肩の痛みなくならないかなぁ。




七月の名言集

2007-07-03 23:26:00 | 本と日常
家庭のなかでは、

とりわけお互いがまったく心服し合っている場合には、

だれも気がねしないし、だれも仮面をかぶらない。

それゆえ、母親は、子どもの目に、

自分がよい母親である証拠を見せてやろうなどと、決して考えないだろう。

もしそんなことを考えるとすれば、

それは子どもが凶暴なまでに悪い場合である。

したがって、よい子どもは

ときには遠慮なくあつかわれることを覚悟しなければならない。

これこそまさしく

よい子どもへの報酬なのだ。











               ―アラン「幸福論」―