明らかだと思われるのは、
幸福になろうと欲しないならば、
幸福になることは不可能だということである。
それゆえ、
自分の幸福を欲し、
それをつくらなければならない。
―アラン「幸福論」―
いよいよジブリ映画『ゲド戦記』が公開されましたね♪
絶対観に行きます!
ジブリ作品ってこともありますが、『ゲド戦記』のファンだから☆
映画化で原作の『ゲド戦記』が注目されることが嬉しい♪
テレビでは『ゲド戦記』のことを『指輪物語』や『ナルニア国ものがたり』に並ぶ三大ファンタジー、なんて紹介していますが、そんなこと初めて聞いたなぁ(笑)
だったらもっと早く取り上げてくれれば良かったのに☆
原作『ゲド戦記』は美辞麗句をそぎ落としたシンプルな文章が魅力!
派手な戦いも、悪の魔王も、勇者や正義の味方も登場しないけれど、だからこそ、登場人物たちがすごく身近に感じられます。
すべてのものに”真の名”が存在する『ゲド戦記』の世界。
木々や草花、物言わぬ石ころから、羊やヤギといった動物たち、そしてもちろん人間にも、普段呼び合っている名前とは別に、そのもの本来の”本当の名前”というものがあるのです。
『ゲド戦記』では、その”真の名”を知る者が魔法使いとして登場しますが、それは不思議な力を操る者、というよりも、私たちを包んでいる皮膚や血肉を通り抜け、魂そのものとなったその存在に優しく語りかけて協力を求めるようなもの。
そこには一種の精神の一体感のようなものがあります。
もっとも、そんな魔法使いばかりではなく、強制的に相手を支配しようとする者もいて、それが様々なゆがみを生じさせるわけですが、それは視点を変えれば、自分自身についても言えること。
自分自身の心の声に耳を傾けず、自分を偽り偽者の名前を名乗る者は、やがて自分自身のせいでゆがんでしまうのではないでしょうか。
この”真の名”に代表される世界観に加え、『ゲド戦記』に登場する人物は、これまたみんな魅力的♪
主人公のゲドが救い出す異国の少女も、役柄からいって当然ヒロインになるべきところなのに、浮世離れした人物にはせず、ちゃんと結婚させて子供も産ませ、主婦として生きたのちに、年老いたゲドとようやくいっしょにさせたりする☆
ゲド自身にしたって、数々の冒険をこなし、大賢人にまでなるのに、生まれ故郷で畑や家畜の世話をしながら愛する人と静かに暮らす生活を選ぶあたり、とても一般的なファンタジーの主人公とは思えない。
(しかも物語のクライマックス、家で待ってるだけ!)
でも、これが『ゲド戦記』らしいところ。
みんなちゃんと大地にしっかり足がついている☆
この年とってからのゲドがまたシブくてイイんです♪
映画は映画で楽しみだけれど、この機会にぜひ原作の『ゲド戦記』にも触れて欲しい。
そして一人でもファンが増えたら嬉しいな(^^)
今回は、夏休みにピッタリ!
十五人の少年が流れついた無人島で、知恵と勇気によって生き抜いていく冒険小説!!
ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』をご紹介します☆
あなたは最近、知恵と勇気使ってますか?
ヴェルヌといえば、ネモ船長の出てくる『海底二万里』や、『八十日間世界一周』などが有名ですよね♪
中でも子供のために書かれた、この『十五少年漂流記』は、日本では明治時代にすでに日本語に翻訳され、それ以来、たくさんの少年少女、大人たちに受け入れられてきました。
100年以上前に書かれた小説ですが、今読んでも全然退屈じゃありません。
それどころか、大人になって読むと、また新鮮なワクワク感を感じることが出来て、しばし少年の心に戻れました(笑)
秘密基地で遊んだことあります?
あの時のワクワク感に似てます(^^)
「あとがき」によると、ヴェルヌは若い時、自分の書いた原稿をすげなく出版社に突き返され(その時はまだ小説ではなく、飛行船旅行の可能性について真面目に書いたものでした)、怒ってその原稿をストーブの中に投げ込んでしまったのだそうです。
それを火傷の危険をおかして慌てて火の中から拾い出したのが、当時新婚ホヤホヤだったヴェルヌの奥さんで、その原稿を彼女のすすめで他の出版社に送ったところ、何社目かで、「小説に書きなおしてみないか」と言われ、それがきっかけで小説を書くようになったんだとか。
この奥さんがいなかったら、ヴェルヌの名作の数々は、世に出ることも、書かれることさえなかったんです。
そう考えると、つくづく偉大な女性ですよね♪
さてさて、肝心のストーリーです。
この物語に登場する少年たちは、ほとんどがニュージーランドの寄宿学校に通う生徒たち。
上は14才から下は8才まで。
しかも、アメリカ、イギリス、フランスと、出身も様々。
この年齢のわずかな差や、出身の違いが、のちに大きな障害になるのですが、それはもっとあとのお話。
地球の南半球にあるニュージーランドでは、季節が日本とは逆さまなので、夏休みは二月から始まります。
学校に通う生徒のお父さんが、自分の所有する船で、少年たちを夏の船旅に招待したまでは良かったのですが、大人がみんな船を降りているちょっとしたすきに、天の采配か誰かのイタズラか、船を港につないでいたロープがスルスルとほどけてしまい、なんと14人の生徒と、船の使用人である黒人の少年1人を乗せて、船は大きくひろがる太平洋へ!
ここから、十五人の少年の家に帰るまでの長い長い冒険が始まります。
嵐の海で船をあやつる4人の年長の少年たち。
船の中の年下の少年たちをなんとか安心させながら、なんとか船を進ませようとするのですが、子供の力では波に逆らって舵を動かすこともできず、風に流されるまま。
奮戦もむなしく、船は方角もわからない見知らぬ海へと流されてしまいます。
やがて霧の向こうに陸を見つける少年たち。
しかしそこは、誰も住んでいない無人島だったのです。
マストが折れ、傷ついた船から使えるものだけ降ろした少年たちは、この島での生活を余儀なくされます。
洞穴の岩をけずって住まいを作り、鳥やアザラシを捕まえる。
たとえ漂流者になっても、ここでの時間を無駄に過ごさないために、小さい子にはちゃんと勉強を教え、日々の出来事を日記に記録し、選挙によってリーダー、彼らが言うところの大統領を選出する子供たちがとっても真面目☆
大きい子が小さい子を教え、小さい子も自分で出来ることを手伝う。
島や湖に名前を付け、地図を作り、仕事を割り当て、一週間の時間割を決める。
もちろん、遊びや読書、みんなで楽しむ時間も忘れません!
島の生活は確かに厳しいけれど、こうして子供たちによる子供たちだけの共和国が誕生します♪
ところが、どこの集団にも自分が注目されないと我慢できないって子はいるもの。
学校では勉強家の優等生で、父親が地元の有力者ということもあっていばっていたイギリス人のドノバンは、フランス人で同い年のブリアンが何かと活躍したり、アメリカ人のゴードンが年上だからって大統領に選ばれたのが気に入らず、なにかと二人と衝突してばかり。
このドノバンとブリアンの対決、そして少年たちの間で芽生えていく友情も、この物語の大きな読みどころです!
やがて夏の終わりと共につらい冬が訪れ…
様々な困難にさらされ、それでも負けずにじっと春を待つ少年たち。
いつか温かくなつかしい我が家に帰れることを願って…
この冒険が始まってからずっと元気のないブリアンの弟、ジャックが抱える誰にも言えない秘密。
ついに自分の仲間と一緒に、ブリアンたちのもとを出て行ってしまうドノバン。
流れ着いた新たな”大人”の漂流者。
前半は無人島で悪戦苦闘しながら、知恵とと工夫で食べ物や住むところを確保する少年たちの活躍が読んでいて実に楽しいです♪
それなのに後半は一転、少年たちの島に悪い大人たちが流れ着き、なんと少年たちに襲い掛かってくる!
武器を持った大人たちに対し、今度は知恵と勇気で立ち向かっていく少年たち!
手に汗握る攻防が続き、少年たちも頑張るのですが、非情な刃が一人の子供を…
その場面ではありませんが、自分たちの力のおよばないことを口惜しがるブリアンの言葉が印象的です。
「なぜ、僕たちは子供なんだろう。大人でなければならない時に」
そして最後は怒涛の展開!!
果たして少年たちは無事、両親の待つニュージーランドに帰れるのか?
でもいったいどうやって?
改めて読み返してみて、こんなに面白いのかとビックリしました*(びっくり2)*
有名な作品だからってあなどれません。
いま読んでも現代の小説にまったく引けを取りません。
久しぶりに一気に読みました♪
夏休みにも入ったから、子供たちにも読んでもらいたいところですが、あえて、お父さん達に読んでもらいたい!
少年時代の胸躍るあの瞬間に立ち戻らせてくれる、そんな一冊ですよ☆
ジュール・ヴェルヌ 著
波多野 完治 訳
新潮文庫