私的図書館

本好き人の365日

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

2012-06-30 23:27:56 | SF

最近日常生活が充実しているというか、忙しいというか、とにかく帰宅したらご飯を食べてお風呂に入って明日の準備をしたら就寝という、すごく健康的な生活を送っています。

おかげであまり本も読めていません(苦笑)

 

それでもいつの間にか積読本が増えていく…

最近買ったのは、アントニイ・バージェス著、

『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワepi文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

ラリィ・ニーブンの〈ノウンスペース・シリーズ〉、

『プタヴの世界』(ハヤカワ文庫)

 

ローレンス・スーチン編

『フィリップ・K・デイックのすべて』(ジャストシステム)

 

SFばっかり…

〈ノウンスペース・シリーズ〉とは、ラリィ・ニーブンの代表作『リングワールド』を含む一連のシリーズで、この『プタヴの世界』はその中でも初期の作品になります。

 海底でイルカたちが発見した〈海の像〉は、実は時間遅滞フィールドに入った異星人?

 

「フィリップ・K・デイック」は名作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を書いたアメリカの作家。

『フィリップ・K・デイックのすべて』は、その彼の様々な場所で書いたりしゃべったりしたことをまとめた本で、私の好きな作家、アーシュラ・K・ル=グィン(『ゲド戦記』の作者)もデイックに影響を受けた一人として紹介されていたので、すごく興味を持ちました。

まだ読めていませんが(苦笑)

 

 


文明の利器

2012-06-28 23:20:18 | 日々の出来事

郵便局で書き損じたハガキを新しいハガキに替えてもらって来ました。

古い年賀状がたまっていたんですよね。

手数料が一枚につき5円かかるので、10枚持ち込んで、9枚を新しいハガキ。一枚を50円切手にしてもらい、手数料50円は替えてもらった切手で支払いました。

郵便局はクーラーが効いていて涼しかった~

 

そろそろ暑さも気になってきました。

 

引越した部屋にはクーラーがないので、買うか買わないか迷っています。

以前の部屋には最初からクーラーが付いていたんですよね。

消費税が上がる前に買ったほうがいい?

それともいっそ、クーラーのない生活を選ぶ?

昼間はいいんですよ、喫茶店や本屋に避難できるから。

問題は夜の寝苦しさなんですよね。

『森の生活』の著者ソローなら、「必要ない」と言い切るでしょうが、私はそこまで意志が強くないから(苦笑)

 


坂口三千代 『クラクラ日記』

2012-06-23 23:59:30 | 日本人作家

作家、坂口安吾の妻…という書き方は、個人を尊重していないようで嫌いなのですが、これ以外に簡潔に説明する自信がないのであえて書きます。

 

作家、坂口安吾の妻、坂口三千代さんが書いた、『クラクラ日記』(ちくま文庫)を最近読んでいます。

 

筑摩書房
発売日:1989-12

 

 

 

 

 

 

 

読むきっかけは、三上延さんの小説、「ビブリア古書堂」シリーズにある重要なヒントとして登場していたから。

「クラクラ」とはフランス語で野雀のことで、そばかすだらけで、いくらでもその辺にいるような平凡なありふれた少女のことをいうあだ名だそうです。

坂口三千代さんは、安吾の死後、銀座に「クラクラ」という名前のバーを開業しています(昭和59年閉店)

その辺にいるありふれた平凡な少女なんてウソばっかり!

坂口安吾との出会い、その破天荒な新婚生活、友人関係、闘病記、そして坂口安吾が亡くなるまで、もう、どこを読んでも目を見張るような描写の連続。

前の夫との間の子供を母親に預け、自分は風呂敷荷物ひとつで安吾の住む家に嫁に行く。

彼のいいなりになりたいと思ったり、私くらいお前を愛してやれるものはいないよ、今より愛されることはないよ、といわれたり。

甘い新婚生活。お金と酒。

出かけたまま帰らない夫を探して旅館にたどり着くと、安吾は女性と一緒。翌朝会うからという伝言を受け取り、夫が他の女と寝ている同じ旅館で一夜を明かす。

睡眠薬に覚せい剤。

書かれている内容は壮絶なのに、このヒシヒシと伝わってくる愛情は何?

 

人間というものは、なんて無鉄砲で、なんて勇敢なんだと、ページをめくるたびに驚きと賞賛がわきあがってくる。

とっても興味深い内容。

そして、そんな他人が見たら肝を冷やすような生活を、淡々と書く坂口三千代さんの文章がこれまた面白い!

ちょっと夢中になって読んでいます。

作家としての坂口安吾について、正直あまり知らなかったので、この本を読んでその作品にも興味がわいてきました。

 

ある日、鍋をひっくり返して安吾にちょっとしたヤケドをさせてしまった三千代夫人。

安吾は烈火のごとく怒ります。

 

「あやまちだといえば許されると思っているのか、コノバカヤロー」

 

人を殺しておいてあやまちでした、間違いでしたで許してもらえるのか…

間違いでも死んだ人間は生き返らない。

間違いやあやまちはあってはならない。間違いやあやまちに責任を取らないければならない。

「あやまちでしたすみません」ですむと思うのか。

大人の世界はそんなもんじゃないよ。バカも休み休みいえ、このバカヤロー。

 

どっかの政治家や、電力会社の役員に聞かせてやりたい…

ま、鍋をひっくり返しただけでここまで怒る安吾も大人気ないとは思いますけどね(苦笑)

 

読んだ本をきっかけにして、また新しい本にハマッてしまった。

でもこの出会いは嬉しい出会いになりました♪

時間をかけて何度も繰り返し読む本になりそうです。

 


『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』

2012-06-21 20:27:20 | 日本人作家

本のこととなるとおしゃべりが止まらないくせに、普段は極端な人見知りという、美人で本の虫の古書店店主「栞子(しおりこ)」さんが活躍する、大好評の古書店ミステリーシリーズ。

 

その第3弾、『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆』(メディアワークス文庫)を読みました。

 

 

 

  

 

 

 

今回は取り上げている本が何とも私好みで嬉しい♪

SF作家ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』

宮沢賢治の『春と修羅』

 

SF作品でありながら、ロマンチックな作風が多いロバート・F・ヤングは私の大好きなSF作家。

一押しは『ジョナサンと宇宙クジラ』(ハヤカワ文庫)という短編集ですが、この『たんぽぽ娘』も面白そう!

今回は古本屋の職業ギルド、「古書組合」で行われている古書交換会、通称「市場」で、この「たんぽぽ娘」の盗難事件が発生します。

古本屋がそれぞれ売りたい本を持ち寄り、入札で買いたい本を仕入れていく「市場」

独特の雰囲気があるみたいで、入札方法や業者同士のやりとりなど、普段目にすることのできない裏方を見ているようで楽しい。

今回、栞子さんの意外な一面も明らかになります☆

 

『春と修羅』は私が中学生の時に初めて買ってもらった詩集。

熱を出して学校を休んだその病床の中から、「何でもいいから詩が読みたい」と親に頼んで買って来てもらったという、何とも恥ずかしい思い出があります(苦笑)

宮沢賢治が生前に出版した本は、この『春と修羅』と『注文の多い料理店』の2冊のみ。

しかも自主出版に近く、売れ残りの多くを賢治自身が引き取ったのだとか。

今でこそ有名ですが、その他の作品は賢治の死後、支援者によってまとめられ出版されたのだそうです。

その珍しい『春と修羅』の稀覯本(きこうぼん)が、今回ある老人の遺産の一部として登場するのですが、その価値が驚き!

まさか何百万円もするなんて思いもしませんでした!!

いやぁ、古書ってスゴイ。

 

それぞれの本に、さまざまな人の思いが込められていて、謎解きというより「人の思いをたどる旅」のような古書にまつわるミステリー。

栞子さんの母親の謎も、少しだけ進展が見られます♪

美人の古書店主に思いを寄せるバイトの五浦くんと栞子さんの仲も進展…するのかな?

ま、謎解きが無くても、古書に関する知識を読んでいるだけでも楽しいです。

今日なんて、本屋さんで思わずロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』を探してしまいました☆

 

本屋さんでは7月7日にアニメーション映画が公開されるということで、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」関連の本も山積みされていました。

登場人物が擬人化された猫の姿で描かれるというのは、名作「銀河鉄道の夜」と同じ。

賢治の作品の中でも、「グスコーブドリの伝記」は好きな作品なので期待大です。

 

「ビブリア古書堂」は面白いのですが、物語に登場する本が読みたくなるというのは困りもの。

百円くらいの均一台ならともかく、高価な稀少本にはさすがに手が出ませんからね~

今日はとりあえず、先月読んだ本の中で宮崎駿監督が選んでいた少年文庫の中から、M・M・ドッジ夫人の『銀のスケート ハンス・ブリンガーの物語』(岩波少年文庫)を購入してきました♪

宮崎監督が読んだらオランダに行きたくなったという、幼い兄妹の物語。

このドッジ夫人がつくりだしたアメリカで一番立派な少年少女のための雑誌、「セント・ニコラス」には、あのオルコットの『若草物語』や、バーネットの『小公子』も連載されていたんですって!

この本が出版された後、初めて二人の子供を連れてオランダを訪れたドッジ夫人。

立ち寄った本屋で、「オランダの生活が一番よくわかるように書かれた本はないか」と子供の一人が聞いたところ、オランダ語訳された『ハンス・ブリンガー』が出てきたとか♪

これから楽しみに読みたいと思います☆

 


神は老獪にして悪意を持たず

2012-06-18 22:54:43 | 本と日常

6月19日は太宰治を偲ぶ「桜桃忌」ですね。

山崎富栄とともに玉川上水に入水自殺した太宰が発見されたのが6月19日。

奇しくもこの日は太宰の誕生日でもありました。

 

私も久しぶりに太宰の小説『桜桃』を読んでみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜桃」とはサクランボのこと。

夫婦喧嘩をしてたまらず外に出た男が、飲み屋で出された桜桃を、まずそうに食べては種をはき食べては種をはくラストシーン。

とっても短いお話なのに、やりきれなさ、哀しみ、そういった感情が何気ない会話と日常の風景の中で巧みに表現されています。

 

 母も精一ぱいの努力で生きているのだろうが、父もまた、一生懸命であった。

      ―太宰治「桜桃」より―

 

他人を傷つけることを恐れるあまり、自分自身を押し込め、結果的に自分が傷ついてしまう…

まるで現代の「草食系」の走りみたいな主人公。

思わず「くよくよしなさんな!」と背中をバンバンたたきたくなってしまいます(笑)

私もたまに、他人の何気ない言葉に傷つくことがありますが、案外言った本人は条件反射みたいに言葉を投げつけているだけで、悪意なんて持っていないことが多いんですよね。

彼女にとってはいろいろな条件が重なって、その時たまたまそういう言葉が出てしまっただけで、彼女なりの整合性は取れている。

こっちもこっちで、そんな言葉を聞かされるとは思っていなかったから精神的なショックを受ける。

お互いに身勝手といえば身勝手なんだけれど、そんな内面はわからないから、表面的な言葉にだけ反応してしまう。

これはもう、テレパシーでもないかぎり、永久に解決できない!

たまの日曜日、車をキレイに洗いあげて気分もよくなったところに、カラスのフンが落ちてきてすべてが台無し…

これはもう、悪意があるとしか思えない!

いやいや、カラスは何にも考えてないだろう(苦笑)

 

人の言葉もどこか生理的欲求みたいなもので、自然現象なのかも知れません。

そう思えば多少は気が晴れる?

でもやっぱりそんな物投げつけないで欲しいなぁ。

太宰を読みながら全然関係のないことを考えてしまいました。

何だか言い訳っぽいな(苦笑)

 


体にしみついたもの

2012-06-16 20:42:45 | 本と日常

休日。

洗濯機を3回回して、掃除機をかけて、床を雑巾がけして、買い物に行って、サラダを作って、チキンカレーを煮込みました。

細々(こまごま)としたことの繰り返し。

生活って大変ですね。

でもこういうことをキチンとすること、嫌いじゃありません♪

いまは引っ越したばかりで、まだ何もかもが新鮮だから続いているだけですけど(苦笑)

 

最近読んでいるのは、アメリカの自然思想家、ヘンリー・ディビット・ソローの、『ウォールデン 森の生活』〈上・下〉 (岩波文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中に簡素な家を建て、自給自足の生活の中で、思索と読書と畑仕事をして暮らしたソロー。

以前彼の言葉を集めた本を読んだので、代表作だというこの本も読んでみたくなったんです。

一冊本を読むと、その本をきっかけに興味の対象が広がって、どんどん本が増えていってしまう(苦笑)

この連鎖反応には終りがなさそうです(笑)

 

世間では特別手配犯が捕まったり、原発の再稼動が決まったりして、何やらスッキリしない一週間でした。

人間の悪い面ばかりじゃなくて、たまにはいい面もニュースで流してくれないかな?

ちょっと傾斜のついたスロープを、小学生くらいかな?

女の子がおばあさんの乗った車椅子を懸命に押している場面に遭遇しました。

周りにはちゃんと大人もいて、雰囲気的に「私が押す!」と女の子がハリキッている感じ。

女の子の体に対して車椅子はちょっと大きかったのですが、ちゃんとスロープをのぼっていきました☆

 

電動の車椅子は便利ですが、きっとあの女の子はおばあさんと車椅子の重みを忘れずにずっと体で覚えているんじゃないかな。

私もそうでしたから。

体にしみついた物は強いですね。

こんなことなら、掃除や洗濯をもっと子供の頃から手伝っておけばよかった。

 


夏休みの過ごしかた

2012-06-13 20:38:10 | 本と日常

今年も半年が過ぎたということで、オリコンが2012年上半期書籍ランキングを発表しました。

ダイエット本が上位を占める中、小説は4位に東川篤哉さんの『謎解きはディナーのあとで2』が、9位に三浦しをんさんの『舟を編む』が入りました。

タニタ食堂のレシピは相変らずすごい人気。

そういう私もカロリー制限をしてちょびっと痩せましたからね(笑)

いつの時代も「健康」でありたいと思うのが人の常なんでしょう。

 

文庫本部門では、1位が三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』、2位が村上春樹さん『1Q84 BOOK1<4月ー6月>前編』、3位が東野圭吾さんの『聖女の救済』でした。 

「ビブリア古書堂」と村上春樹さんの人気もすごい!

1位と2位だけでなく、それぞれ続編も上位にランキングされています。

気になったのは22位のウィリアム・H・マクニール『世界史 上』と、24位の越谷オサム『陽だまりの彼女』

「世界史」は一時期話題になりましたが、その後も読まれているのかな?

「陽だまり」は私も読みましたが、発売からけっこう経つのに、なかなか健闘している印象。

個人的には荻原規子さんの『RDGレッドデーターガール』を推しているのですが、残念ながら今回のランキング上位には入りませんでした。

荻原規子さんは『空色勾玉』からのファン。

日本を舞台にした魅力あるファンタジーを毎回読ませてくれます♪

7月には文庫化第3弾『RDGレッドデーターガール 夏休みの過ごしかた』(角川文庫)が発売される予定ですし、アニメ化の話も出ているので、これから盛り上がって欲しいんですけどね。

 

そういえば、来月はもう夏休みなんですね。

いいなぁ。

大人になってから夏休みのありがたさをひしひしと感じています。

社会人になると、(とくに日本は…)なかなかまとまった休みが取れないですからね。

ま、私の場合は休みが取れたとしても、基本出不精なので家でゴロゴロしちゃうと思うんですが(苦笑)

 

角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2010-05-29

森薫 『乙嫁語り 4』

2012-06-10 00:00:00 | 本と日常

森薫さんのマンガを買いました!

 

『乙嫁語り 4』 (エンターブレイン)

 

エンターブレイン
発売日:2012-05-12

 

 

 

 

 

 

 

シリーズ4巻目♪

中央アジアからカスピ海沿岸を扱った、様々なお嫁さんが登場するマンガなのですが、今回の乙嫁(かわいいお嫁さん)は、双子の姉妹「ライラ」と「レイリ」

そういえば梨木香歩さんの『ピスタチオ』という小説に、やっぱり双子の姉妹が登場するのですが、アフリカでは双子の名前はあらかじめ決まっていて、「ナカト」と「ババイレ」という名前が作中では紹介されていました。

だらか、アフリカでは名前を聞いただけでその人が双子の場合はすぐわかる。

部外者から見れば面白いけれど、きっと文化的な理由があるんでしょうね。

 

最近またタガが緩んできて、立て続けに本を購入してしまっています。

 

梨木香歩 『雪と珊瑚と』(角川書店)

 

21歳のシングルマザー珊瑚は、乳飲み子の雪を抱え、明日を生きるためのお金を稼がねばなりません。

しかし雪がいては働けない。保育園も託児所もいっぱい。貯金はどんどん減っていき、どうしていいのかわからない心細さの中、雪を乗せた重いバギーを押しながら、珊瑚は泣いている自分に気が付きます。

高校を中退してからパン屋で働き、自分一人でなんとか生きてきた。自分一人でなんとかなると思っていた。だけど…

もうこの出だしで心をギュッとつかまれてしまいました。

 

岡崎武志 『女子の古本屋』(ちくま文庫)

 

こちらは雑誌「ちくま」に連載されていた物を増補、追加取材して文庫化したもの。

女性で古本屋を開業した13人にインタンヴュー、その人柄と開業までの苦労、本への思いやお店つくりに対するこだわりを取材しています。

年に一度パリまで様々な年代の「紙」を買い付けに行く女性から、絵本の専門店、料理本を扱うお店、転職組からアルバイトからのたたき上げまで、様々な境遇、古本屋主人になるまでの過程は本当に十人十色。

共通しているのは、みんな本が大好きだということで、それだからこそ読んでいて「うらやましい!」と思わず思ってしまいました。

 

あとは古本屋さんで100円で売られていた私の好きな詩人、高見順の本。

学研の「現代日本の文学」シリーズの一冊なのですが、写真付きで状態も良かったので思わず買ってしまいました。

 

本とは関係ありませんが、ようやく長年使ってきた枕も買い替えたところなんです。

低反発枕。枕カバーはリネン製。

今月もまだ始まったばかりなのに、散財してしまった。

もっと節約しないと。

 


レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』

2012-06-08 21:58:51 | SF

アメリカの作家、レイ・ブラッドベリさんが亡くなりました。

91歳。

私は主にSF作家としてのブラッドベリしか知らないのですが、『華氏451度』、『火星年代記』、『ウは宇宙船のウ』、『歌おう! 感電するほどの喜びを!』、『たんぽぽのお酒』など、多くの作品を残してみえます。

日本にもファンは多く、マンガ家の萩尾望都さんなどもブラッドベリの作品を原作にしたマンガを描いていましたね。

 

『華氏451度』は”本”を見つけて焼き払う消防士ならぬ「焚書官」が主人公。

なんとこの小説の世界では、有害な禁制品として”本”を持つこと、読むことが禁止されているんです!

小説や歴史、詩もすべて発禁。

人々は耳にはめこむ小型ラジオをつけて生活し、大画面テレビが四方を囲む「テレビ室」で過ごします。

自分で考えることをしなくなった彼らは、垂れ流される情報や企業の広告を始終頭に流し込まれ、しだいに心が荒廃していく…

 

「華氏451度」というのは、本のページに火がつき、燃え上がる温度。

 

密告により本を所持している人物の情報がもたらされると、消防車のような物に消防士さながらに「焚書官」たちが乗り込み、ホースから水ではなく石油を撒き散らして、家ごと本を焼き尽くす。それはもう灰さえ残らないくらいに。

そんな「焚書官」の一人、モンターグはある日、となりに越して来たという少女と道でばったり出会います。

夜中に散歩し、木や空を見上げ、雨の日には顔を上げて雨にあたるのが好きだというちょっと変わった少女。

彼女はモンターグをじっと見つめ、そしてこう訊くのです。

 

「あんた、幸福なの?」

 

この小説は1953年、まだデジタルTVも携帯電話もない時代に書かれました。

本を読むことを禁止され、与えられた情報を鵜呑みにする世界で、人々は睡眠薬に頼り、ラジオとテレビに脳みそを占領され、自分のやっていることに疑問を持つ思考力さえ失いながら、毎日の生活を送っています。

職場の同僚。

情緒不安定な妻。

染み付いた石油のにおい。

炎のついた蔵書の中に立ち尽くす老女。

画面に映し出されるフイルムの教師。

破壊衝動に走る子供たち。

抽象画ばかりの美術館。

燃やされる本。

 

本を愛し、それを書くことを職業にしちゃう人が書く「本のない未来」

 

SF小説でありながら、どこか叙情的な雰囲気のあるブラッドベリらしい作品。

短編集『ウは宇宙船のウ』では、ロケットに憧れる少年たちの姿を描いています。

私は男なので自分の体験しかわかりませんが、自分たちが「なりきって」道路を滑走路にみたてたり、山を怪獣にしてみたり、両手を広げて大空を飛ぶ飛行機になったつもりで走り回るというのは、たわいもないようで、実はとっても楽しいことなんですよね♪

そんな大人になっても子供心を持ち続けた一人が、レイ・ブラッドベリという作家だったと思います。

 

ふとしたきっかけで禁制品の本を手にしたことから、『華氏451度』の主人公、モンターグの人生も変わり始めます…

 

私は本が禁止されたらきっと反乱を起こすだろうな(苦笑)

レジスタンスになって地下活動で抵抗しつづける。

自分たちで本を刷ったりして☆

 

萩尾望都さんのマンガも探しているのですが、古本屋にもなかなか置いてなくて、出会いのチャンスを待っています。

というか、近所の本屋さんのSF小説の棚が縮小されててショックを受けました。

金環日食とか部分月食で盛り上がったら、ついでにSF小説でも盛り上がって欲しいなぁ。

 

レイ・ブラッドベリ様。

たくさんの作品をありがとうございました。

心よりご冥福をお祈り致します。

 

『華氏451度』(ハヤカワ文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウは宇宙船のウ』(小学館文庫)

 


『書店ガール』

2012-06-06 00:00:00 | 日本人作家

民主党政権の内閣改造、今回は防衛大臣に民間人を登用するというサプライズがありましたね。

大学の先生だということですが、元自衛官で元外交官。

TVでもよくお見かけする顔だったので確かにちょっと驚きでした。

それにしても大臣の顔ぶれ、女性少なすぎ。

別に男性だろうと女性だろうと、能力さえあれば比率なんか気にすることはないと思いますが、それにしてもこう極端だと、本当に少子化対策する気があるのかと思ってしまいます。

かといって某TV局のように、女子アナをお花のように隣に座らせておけという番組つくりも、どうかと思いますけどね。

 

碧野圭さんの小説、 『書店ガール』(PHP文芸文庫) を読みました。

 

PHP研究所
発売日:2012-03-16

 

 

 

 

 

 

 

とあるチェーン店の書店で働く女性たちを主人公に、様々な人間模様と書店の命運、そして「働く」ということを描いたお話。

主人公は二人の女性。

書店の副店長で、40代独身の女性と、ズバズバいうあっけらかんとした性格が災いして、職場でいやがらせなんかを受けてしまう年下の強気の女性。

最初は何かとぶつかる二人ですが、共通しているのは書店で働くことが好きだってこと。

 

職場内のいやがらせや、嫉妬、男女関係など、出だしはちょっとドロドロしているのですが、中盤以降、どんどん物語に引き込まれてしまいました。

特に書店の危機に、アルバイトや派遣社員までもが協力して頑張る姿にはジーンとくるものが…

女性の働く環境の問題や、結婚、職場での女性差別と、作者はちょっと男性を悪役に書きすぎているきらいはありますが、それを差し引いてもけっこう人間関係がリアルで身につまされるんですよね。

直木賞を受賞した、池井戸潤さんの『下町ロケット』とどこか似たところがあって、書店再建のために懸命に智恵をしぼって努力するアルバイトや派遣社員を、会社という組織が無残に押しつぶす様は読んでいて腹が立ちました。

40代独身の女性副店長が、恋愛や親のことで問題を抱えながら、好きな本に囲まれ、お客様にいかに気持ちよく本を探してもらえるかに気を配っている姿には感動。

職場では気を張り、部下に厳しくあたる彼女が、父親ひとりが待つ家に帰ってひとりで食べる食事のシーンはぜひ読んで欲しい!

 

この本は2007年に「ブックストア・ウォーズ」として出版されたものを改題したもの。

新しいタイトルからして、最近の「書店を舞台にした小説人気」の尻馬に乗ろうとする編集の思惑を感じないわけでもありませんが、そう思って読むと「アレ?」と思ってしまうかも知れません。

それでも最後まで読めば満足できる内容だと私は思います。

吉本ばななの『キッチン』や、主人公が幼い頃から通っていた本屋の主人、そして副店長の父親など、心憎い演出もうまい。

本棚に本を並べることひとつを取っても、お客が取りやすい並べ方っていうのがあるんですね~

近状の本屋さんに行って、本の並べ方をチェックしたくなりました☆

 

 


『猫と庄造と二人のおんな』

2012-06-04 05:44:06 | 日本人作家

スーパー銭湯に行って来ました。

岩風呂、サウナ、ジャグジーといった定番から、緑茶成分入りとか、高酸素風呂とか、蒸気風呂とか、種類がたくさんあって、のんびりゆったりしながら楽しめました♪

郊外の大きな施設で、田舎の温泉とはまた違った雰囲気ですが、アカスリや岩盤浴、マッサージとサービスは充実。

やっぱりたまには体もリフレッシュしないとね。

 

先日、女優の室井滋さんのネコ好きエッセイを読んでから、特に意識しているわけでもないのに、猫関係の出来事が続いています。

今回は、前から読みたかった谷崎潤一郎の、

 

『猫と庄造と二人のおんな』(新潮文庫)

 

を読みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

この本、やっぱり女優でネコ好き、エッセイも面白い、本上まなみさんが推薦していて、「猫好きのあきれる行動」を如実に表現している小説なんです。

猫の登場する作品で印象深いのは、ハインラインのSF小説『夏への扉』。宮沢賢治の童話『猫の事務所』。佐野洋子さんの絵本『100万回生きたねこ』。ポール・ギャリコの小説『トマシーナ』。大島弓子さんのマンガ『綿の国星』などなど、あげていけばきりがないほどたくさんあります。そうそう、夏目漱石の『我輩は猫である』も有名ですね。

 

谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のおんな』に登場する猫の名前は「リリー」

まずは庄造の前妻「品子」から、後妻の「福子」に宛てたこんな手紙から始まります。

 

「…私決して貴方に恨み云うたり泣き言聞かしたりするつもりではないのです。…オホホホホホホ…あの人を返せと云うのではありません。実はもっと下らないもの、つまらないもの、……リリーちゃんがほしいのです」

 

前妻の品子は頭がよくてしっかり者。でもそこが気に入らない庄造の母にうとまれ、持参金が多くて庄造のいとこにあたる気心の知れた「福子」と、”嫁交換”のために追い出されたといういきさつがあります。

一方、庄造はというと、母親に甘えるクセはいい歳になっても抜けず、のんべんだらりと過ごすのが大好き。母親と福子が嫁を追い出す算段をしているのも、ただ流れに任せて見ているだけ。猫のリリーと”いちゃつき”ながら、二人の世界に逃避してしまっています。

庄造のリリーに対する態度はまさに「猫っかわいがり」

完全に従属状態で、リリーがつれない態度をとると、庄造は何とか自分に興味を持たせようとそれはそれは涙ぐましいご機嫌とりをおこなうのです。

夫婦の寝床にまで入りこんでくるリリーに、初めは一緒になって可愛がっていた新婚の福子も、品子の手紙をきっかけに、リリーと庄造に関係が目につくようになってきます。

 

「たかが猫ぐらいと気を許していらっしゃったら、その猫にさえ見かえられてしまうのですわ。」

 

品子の望みをかなえてしまうのはシャクだが、庄造のリリーに対する態度も目に余ってくる…

ついに福子はしぶる庄造をあの手この手で脅し、強引にリリーを手放すことを承知させてしまいます。

福子にも母親にも頭の上がらない庄造。

そしてリリーを手に入れた品子。

手放したものの、やっぱりリリーが忘れられない庄造は、ある日品子の住む町へ…

 

猫への嫉妬。女同士の確執。

女たちの激しい攻防の中、リリーしか見ていない庄造が、とっても愚かで何となく哀れに見えてしまう。

でも、人間にそこまでさせる、そんな魔力が猫にはあるのかも知れませんね。

現実の世界でも、猫のために犯罪にまで手を染めた、そんな人間が室井滋さんのエッセイの中で紹介されていました。

ある清掃員の女性は、自分の生活も大変なのに、たくさんの野良猫の世話をしていたところ、ついにお金が底をつき、思い余って万引きをしてしまいます。自分だってろくに食事をしていなかったのに、万引きした商品はなんと猫缶…

やっぱり猫の食事代を確保するために、ある男がとった行動は、タクシーを盗み出し、そのタクシーを運転してタクシー代を稼ぐということ。

あきれるというか、一線を超えてしまっているというか、ここまでくるとある意味美談に聞こえてしまう(苦笑)

(注意…万引きやタクシーの窃盗は犯罪です!)

 

庄造、品子、福子。それぞれの思いが交錯し、人間ドラマとしても面白い。

猫や他のペットに愛情をそそぐ人間の心理って、昔も今も変わらないんですね♪

でも、あんまり愛情をかけすぎると、誰かさんに嫉妬されちゃうかも。

こんなに庄造から思われているのに、リリーの態度がこれまたとっても猫らしくって好きです。

いい読書ができました☆

 


モンゴメリ 『果樹園のセレナーデ』

2012-06-02 21:45:06 | モンゴメリ

「赤毛のアン」の作者、ルーシー・モード・モンゴメリの初期の作品。

 

『果樹園のセレナーデ』(新潮文庫)

 

を読みました。

出版されたのは「赤毛のアン」の後ですが、書かれたのは「赤毛のアン」の前。

そう思って読むと、「アン」との対比が面白く、作者の成長がうかがえる貴重な作品。

現在絶版で手に入りにくいのが非常に残念です。

角川文庫さんが新訳で出版してくれないかな?

 

まずはヒロインのキルメニイ。

作者はこの名前を有名な詩からとったそうですが、まず字面がとっても読みにくかった。

物語後半になれば、慣れてくるのでどんな名前でもOKなんですが、ちょっと印象に残りにくい名前という印象。

どこにでもある「アン」という自分の名前に想像力がかきたてられず、「おわりにeのつくアン(Anne)」と強調するアン・シャーリーとは対極にあるような名前です。

名前は平凡でも、「赤毛のアン」を読めば、アンの名前は強烈に印象に残ります。

しかもこのキルメニイ、ある障害を持っているため、男性とほとんど接したことがなく、免疫がないので逆に男性に好意を寄せることに何の抵抗も持っていないのです。

自分を守らない。

顔を見れば素直に嬉しさを表現し、好きなら好きという。その人に自分を好きになって欲しいと思えば、あなたに好きになって欲しいからこうするの、と相手にそのまま伝えてしまうのです。

無垢な子供のような(現実でそんな子供見たことないけど…)少女というか、男性に対しては白痴だとでもいうか、そんなヒロインに「恋」や「愛」を教えようと主人公が奮闘するという、ある意味よくある、そして物語になりやすい特殊な設定で物語が進んでいく。

モンゴメリの後出のヒロインたち、「アン」も「エミリー」も「パット」も、想像力が旺盛だったり、物を書くことが生きることと同義だったり、愛する木や家に非常な愛着を感じる鋭い感性の持ち主だったりはしましたが、みんなプリンス・エドワード島で普通に暮らしている島の女でした。

キルメニイは違います。

森に隠され、果樹園でバイオリンを弾く、まさに王子様の登場を待つ物語のヒロイン。

学生時代には仲の良かった友達と三人で、お話クラブのような物を作り、自分の創作した物語を披露していたモンゴメリ。

この『果樹園のセレナーデ』には、そうした「古典の模倣」のような、どこか「ウケ」を狙ったところが垣間見えるのです。

 

かといって、物語がつまらないかといえば、そうではないのがさすがモンゴメリ!!

 

まわる運命の歯車。

母親の呪縛。

過去の因縁。

若き二人はその障害を乗り越え、はたして無事に結ばれるのか?

蜘蛛の巣のように張り巡らされた伏線…とはいえないまでも、毛糸くらいには伏線も張られていて、収まるところにキレイに収まるのも、優等生っぽくていかにも処女作という感じ(苦笑)

日常を観察し、生き生きと周りの人々を描き出す自分の才能にまだ気が付いていない、いわゆる「物語」を書いているモンゴメリ。

後半にはその片鱗が早くも見られて、どんどん物語りに引き込まれてしまいました☆

(以上、あくまで個人的な感想です)