私的図書館

本好き人の365日

「ハーバード白熱教室」

2010-09-26 23:59:00 | 本と日常
今年、NHK教育テレビで放送され話題になった「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授が、東大の安田講堂で8月25日に行った授業の様子がテレビで放送されました。

参加したのは東大生や視聴者から選ばれた1,000人。

…日本人って何てしゃべるのがヘタなの。

政治哲学や道徳に関する質問を聴衆に問いかけながら議論を進めていく授業なのですが、そもそも答えのない質問に”正しい答え”、”期待にそった答え”を何とか答えようとしている若い人が目に付きました。

最近の学校って大丈夫なのかな?

あと日本語のあいまいさ。

すっごくもどかしい~

世間や社会の常識やルールをまったく疑っていないような発言や、自分の(日本の)常識や物の考え方が万国共通だとでもいわんばかりの前提での話しに聞いているこっちはテレビの前で七転八倒。

自分の考えを言えばいいだけなのに、どうして世間の代表みたいな顔で「みんなもそうだと思いますけど」みたいなことを言うの?

あなたは日本人の代表じゃないんだから他の人のことは放っといてよ!

共同体意識っていうか、自分の意見に自信がないっていうか、日本人の特徴なんでしょうかねぇ。

根拠のわからない発言ばかり。

例題として使われたのは、「自分の属する共同体が過去に犯した罪に対して、現在に生きる人たちに責任はあるか?」という問い。

具体的には第2次世界大戦やアメリカによる原爆投下が問題になっていましたが、「相手が痛みを忘れるまで謝り続けるべきだ」という発言があって驚きました。

痛みを忘れることなんて何をしてもらってもあるわけないのに…

痛みをいつまでも忘れないで、その痛みを乗り越えて手を握ることに意味があるんじゃないの?

親のせいで隣人の家が全焼した場合、その子供には全焼した家の賠償責任があると発言している人もいました。

エ~!?

親についてはある程度の責任はあるけれど、全焼した責任は子供にはないんじゃないの?

結果的に賠償することになったとしても、それは親が責任を果たせなかったことに対して、子供として親をほう助する愛情があるということで、責任うんぬんの話じゃないと思うけど…

いろんな考えの人がいて、いろんな考えを議論させるというのは大切なことですね。

こういう議論は好きなのでつい熱くなってしまいました。

あぁ、参加したかったなぁ~




『風の又三郎』

2010-09-21 23:58:00 | 本と日常
今日、9月21日は『銀河鉄道の夜』などの作品で知られる宮沢賢治が亡くなった日です。

岩手県花巻で商家の長男として生まれた宮沢賢治。
昭和8年。1933年。37歳で亡くなりました。

私が中学生の頃、熱を出して学校を休んだ時になぜだか急に詩が読みたくなって、母親に「何でもいいから買って来て」と頼んだら、彼女が買って来たのが、宮沢賢治の詩集『春と修羅』と角川文庫から出ていた『高村光太郎詩集』でした。

それをきっかけにして宮沢賢治を読みふけるようになり、高校生になると定期入れの中に賢治の「雨ニモマケズ」の詩を書き写したメモをそっと忍ばせて高校3年間を過ごしました。

…変な高校生(苦笑)

雨ニモマケズって、実際はけっこう楽しく過ごしていたので、そんな詩の存在は80%普段は忘れていましたけどね☆

今日はなつかしさもあってお風呂に入りながら久しぶりに『風の又三郎』を読みました。

 どっどど どどうど どどうど どどう…

夏休みの終った田舎の小学校にやって来たのは赤い髪の転校生。

その不思議な容貌から子供たちは彼のことを「風の又三郎だ!」と思います。

ガラスのマントを着て、風と共に秋を連れて来る神様。

川で泳ぎ、森で遊び、年上の子が年下の子の面倒をみる田舎の子供たちの様子が楽しい♪

賢治の作品で好きなのは他に、
『注文の多い料理店』
『グスコーブドリの伝記』
『猫の事務所』
などなど☆

今回読み返してみて、新潮文庫版の注釈と収録作品の解説を天沢退二郎さんが書いてみえるのに気が付きました!

天沢退二郎さんの『光車よ、まわれ!』という作品が読みたくて、長い間探していて、復刊してようやく読めたという私的には歴史的出来事があったんです!

宮沢賢治研究でも有名とは知っていたのですが、それを知ったのが自分の中の宮沢賢治ブームが去って何年も経ってからだったので、自分の持っている本に天沢さんの名前があるってことに今日まで気が付きませんでした。

誰が注釈を書いているのかなんて気にしていなかった。

何だか自分の中だけで点と点がつながったみたいでちょっと嬉しい♪

命日に作品を読んだからご褒美なのかな?

たまに昔の作品を読んでみるのもいいものですね。

それにしても、宮沢賢治の作品はちっとも古く感じないのが不思議です☆

やっぱり面白い!






『これから「正義」の話をしよう 』

2010-09-20 23:10:00 | 本と日常
今日は家電量販店に行って地デジ対応テレビを買って来ました♪

現在のアナログ放送が2011年7月24日に終了してしまうので、いつかは買い替えなきゃなとは思っていたのですが、せっかく部屋の模様替えもしたことだしと思って、思い切りました。

家電エコポイントが付いて多少お値打ち感はありますが、やっぱり高い買い物をする時はドキドキします。

でも買ってよかった。
映像はキレイだし、見られる番組は増えるし、いろいろな情報が見られるデータ放送も面白い♪

手の平に納まる携帯末端からインターネットに接続し、空気中を様々な情報が飛び交う。

いい時代というか、すごい時代になりました。

最近買った電子書籍は、NHK教育放送でその授業風景が放送されて話題になった、アメリカはハーバード大学のマイケル・サンデル教授の本。

*(キラキラ)*『これから「正義」の話をしよう Justice 生き延びるための哲学』*(キラキラ)*(早川書房)

1人を犠牲にすれば5人が助かる状況で、その1人の命を奪うことは果たして正しい選択か?

経済至上主義がまかり通るこの時代に、何が正しいといえるのか? なぜ人々はそれを信じているのか? といった問いに、興味深い例題を出しながらサンデル教授が「一緒に考えよう」と語りかけてきます。

テレビ番組が面白かったので読んでみようと思ったのですが、この本、けっこう売れているみたいです。

電子書籍では900円でした。

もう一冊は紙の本。

幻想の歌い手と呼ばれるファンタジーの紡ぎ手、パトリシア・A・マキリップの、

*(キラキラ)*『女魔法使いと白鳥のひな』*(キラキラ)*(創元推理文庫)

二部作の第一弾ということで長編が読めるのはとっても嬉しい♪

大好きな作家さんだから作品が読めるのは嬉しいけれど、このところ立て続けに作品が翻訳されている感じ。

何かあるのかな?

マキリップの作品では『妖女サイベルの呼び声』との出会いが衝撃的でしたが、彼女の作品に登場する”一人で立つことのできる”女性が好きなんです。

もちろん恋もあるし愛する男性も登場しますが、彼らにべっとり寄りかかるのじゃなくて、自分の生き方を持ちながら、共に歩いて行く。

待っているだけのお姫様はマキリップの作品には登場しません!

この作品も楽しみに読みたいと思います☆



模様替え

2010-09-19 19:25:00 | 本と日常
連休ということで、部屋の模様替えをしています。

…現在進行形なのは、まだ終っていないから。

こうなると思っていたんですよね~
ま、明日もお休みなので何とか終るでしょう。

本棚から本を出して、机の配置を変えて、また本を戻して、間に掃除して…

今回は椅子を新調しました♪

座り心地のいい椅子が欲しかったんですよね~

ついでにパソコンも分解してメンテナンス。
メンテナンスといっても外側のケースを開けてホコリをとっただけです。

これがけっこうたまっているんですよね。

まだ足の踏み場もないけれど、火曜日からは心機一転、新たな気持ちで会社に行けるといいなぁ。

とりあえずこれから寝る場所だけは確保したいと思います。

頑張るぞ! おー!


『…絶句』新装版

2010-09-12 21:58:00 | 本と日常
  
  

ひきょうだぞ! ハヤカワ文庫!!



のっけからゴメンナサイ。
本屋さんで叫べなかったのでここで叫んでしまいました。

新井素子さんの昔の小説『…絶句』(上・下)の文庫本がこのほど新装版になって発売されたんです。

もともと新井素子さんのファンでもありますが、表紙イラストが『今日の早川さん』というSF小説好きな女子の生態を描いて(SF界では…)話題になったCOCOさんということもあり、さっそく本屋さんで手に取ってみたのですが…

新装版に書き下ろし短編が載ってる!

しかもご丁寧に上・下巻それぞれに一編づつ!!

さらにあとがきも今回新たに書き下ろし(?)!!!

これは上・下巻それぞれ新たに買えってこと!?

この『…絶句』という作品。
最初に文庫版が発売されたのが1987年くらいですよ?

23年も前の作品でまだ儲けるつもりかハヤカワ文庫!!

こ、このひきょう者~

もちろん昔の『…絶句』はすでに持っています。
というか新井素子さんの小説は全部持っています。
『…絶句』は新井素子さんの作品の中でも大好きな作品なんです。

うぅ、出版社の思惑にまんまと乗せられたくないよ~

くやしいので二冊とも立ち読みして来ました。

新たに買うかどうかは数日考えたいと思います…

同じ日に買ったのは有川浩さんの、

*(キラキラ)*『阪急電車』*(キラキラ)*(幻冬舎文庫)

関西圏ではおなじみの私鉄「阪急電車」を舞台に、たまたま電車に乗り合わせた乗客の、それぞれのドラマがオムニバスのように、しかしわずかに重なりならが展開していく大人の恋愛ドラマ。

有川浩さん(女性です♪)の小説は、「自衛隊もの」と呼ばれるものや、「図書館シリーズ」で、いわゆる自衛隊+極甘恋愛ドラマといった内容のお話は知っていたのですが、恋愛だけの小説は初めて。

…うわぁ、なんか恥ずかしい(苦笑)

ストーリーがあってその中に恋愛が散りばめられていると割と平気なのですが、こうも恋愛が全面に出てくると有川浩さんの描く男女ってけっこう恥ずかしい…

ま、そこが売りなんでしょうね。

図書館に通いつめる男女が登場したり、ちょっときわどいセリフや設定があったりして、引き付けられながらもヒヤヒヤして読み進み、最後にホッと胸を撫で下ろす。

まんまと作者の思惑に乗せられている感じです♪

主人公の一人として気骨のある年配のご婦人が登場するのですが、私はそのおばあちゃんが一番好きでした☆

また、解説をドラマやパネルクイズアタック25の司会で知られる児玉清さんが書いて見えたのも驚きでした!

児玉清さんは読書家としても有名で、NHKのBSで放送されている「週刊ブックレビュー」はいつも参考にさせてもらっているのです。

そうか~
児玉清さんも有川浩さんの作品読んでるんだ~
ちょっと嬉しい。

この作品、映画化も決まっていて、来年2011年公開予定なんだとか。

「図書館シリーズ」も早く文庫化してくれないかな?

それにしてもハヤカワ文庫…

せめて『…絶句』を電子書籍化してくれないかな…

ほんの数ページしかない書き下ろし短編のために2冊買うのはつらいよ…


シンプル

2010-09-11 23:59:00 | 本と日常
床屋で髪を切ってきました♪

ようやくスッキリ!

ちょっと前から気になっていたんですよね。

やらなくちゃいけないことは無くなることはないんだろうけれど、とりあえず出来ることから片付けなくちゃ。

最近、自分を励ますためによく使うのはベンジャミン・フランクリンの言葉。



 困難を予期するな。
 決して起こらないかも知れぬことに心を悩ますな。
 常に心に太陽をもて。



明日も頑張ろうって気になります☆



新美南吉 『屁』

2010-09-10 23:57:00 | 本と日常
愛知県半田市出身の童話作家。
新美南吉の、

*(キラキラ)*『屁』*(キラキラ)*(講談社刊「ごんぎつね新美南吉傑作選」収録)

という作品を読みました。

病気のおじいさんと二人だけで小さなみすぼらしい家に暮らす貧乏な石太郎。

ところかまわず、しかも頼まれれば平気で「屁」をこく石太郎を、同級生はもちろん、下級生までバカにしています。

級長で石太郎と同じクラスの春吉君はちょっとプライドの高い男の子。

田舎の子ばかり集まったこの小学校を春吉君は恥ずかしく思っていて、都会から先生がやって来ればその話し方に憧れるし、町の小学校との合同運動会では田舎丸出しの同級生の姿形が恥ずかしくてたまりません。

そんな中でも下品で汚い石太郎と同じクラスであることは、春吉君にとって屈辱以外の何物でもありませんでした。

わかるなぁ~

私も田舎育ちですが、子供時代の一時期、田舎丸出しの両親を恥かしく思ったことがありました。

あの頃は何にもわかっていなかった。

見た目や表面的なものにこだわっていたんですね。

子供ってけっこう独裁者で、そのうえ残酷で、うぬぼれ屋のくせに信じやすいから、自分の知らない世界が華やかに見えて、マネさえすれば自分もその仲間に入れると思ってしまう。

隣の芝生が青く見えてしまうっていうのは大人も同じですけどね(苦笑)

そんな田舎の小学校で、机を並べて学ぶ春吉君と石太郎。

ある日春吉君は、お腹の調子が悪くてたまらず授業中に「屁」をしてしまいます。

気付かれないように祈る春吉くんですが、臭いに気が付いたクラスのお調子者が「臭え臭え」と騒ぎだし、真っ赤になる春吉君。

ところが、また石太郎だ、という声が上がり、いつの間にか石太郎が犯人にされてしまいます。

はからずも自分がバカにしていた石太郎に濡れ衣を着せてしまう格好になった春吉君。

ここで名乗り出るべきか、それとも黙って石太郎に罪をきせるべきか…

なぜかへらへら笑って何も言い訳をしない石太郎…

「屁」という題名に油断していましたが、読んでみてビックリ!!

とても心に突き刺さるものがありました!

新美南吉すげえよ…

春吉君は石太郎に対して少しも悪いとは感じていません。
石太郎に対して、そんな気持ちを持つことの方がおかしいのです。

逆に、石太郎みたいな「屁こき虫」がいたからこんなやっかいなことになったんだと、恨めしく思うくらい。

人間って自分を中心に物事を考えてしまうものなんですよね~

春吉君は自分は正しい人間だと思っているので、正義感と羞恥心の間で揺れ動きます。

その正義には石太郎への罪悪感は含まれていません。

新美南吉の作品は「ごんぎつね」と「手袋を買いに」くらいしか知らなかったのですが、その人間心理のするどい描写にビックリしてしまいました。

小学生の春吉君が立ち向かうことになる人生初の大問題!

春吉君は果たしてどんな選択をするのか?

春吉君が学ぶことになる、「人間」という生き物の正体がとっても興味深いです。

どんな人間でも「屁」はしますよね。

どんな美人でも、イケメンでも、お金持ちでも、権力者でも。

ほんの数ミリの厚さしかない布切れの下はみんな裸だってことも同じ。

トイレにも行くし、お腹もこわすし、鼻もほじるし、汗もかく。

そんなことを理由にバカにされたんじゃ、人間は誰一人暮していけません。

人間って一人一人違うんだってことも当たり前。

それなのに、人間って表面にキレイな服や高級品や、正義感やプライドを身にまとえば、自分だけは違う人間になれるとカン違いしてしまう。

この作品には我々大人にも覚えがある、ごまかしだとか、虚栄心だとか、自分に対するウソだとか、そういったものがちゃんと描かれていて、それを持つのが子供だからこそ、大人の心に響いてきます。

「…大人たちが世知辛い世の中で、表面は涼しい顔をしながら、汚いことを平気でして生きてゆく…」

この文章を読んで、「うわぁ、同じだよ!」「僕もそう思ってたよ!」

と思わず叫びたくなりました♪

さすが名前の残る作家さんは違いますね。

新美南吉はしかし職業作家というわけではなく、小学校の代用教員などをしながら作品を発表し続け、30歳の若さで亡くなりました。

いい作品を残してくれてありがとう☆


刻の涙が見える

2010-09-07 21:32:00 | 本と日常
明日は胃の検査があるため今から絶食。

ひもじいよ~

たった一日のことなのに、食べちゃダメといわれると何だかよけいにお腹が空きます。

試験で勉強しなきゃいけない時にかぎってやたらと本が読みたくなる、あれに似てる。

あれ、ちょっと違うかな?

あ~、時間の流れが遅い…



『不思議な少年44号』

2010-09-05 22:11:00 | 本と日常
今年も「栗きんとん」の発売が始まったので、さっそくなじみの和菓子屋さんに出かけて買って来ました♪

まだまだ残暑は厳しいですが、秋はしっかりやって来ているんですね~

ついでにコンビニの「ローソン」で売っていた、かわいやの「窯焼きポテト」も買って来て食べました。
北海道で人気の焼き芋を丸ごと一つ使ったスイートポテト♪

ちょっとボリュームがありますが、中にカスタードクリームが入っていてとっても美味しい☆

季節を感じるのがいつも食べ物からっていうのが問題があるような気もしますが(苦笑)

角川文庫から刊行されている「マーク・トウェイン完訳コレクション」

『アーサー王宮廷のヤンキー』に続き発売された、

*(キラキラ)*『不思議な少年44号』*(キラキラ)*

をさっそく手に入れて来ました☆

以前岩波文庫版の『不思議な少年』は読みましたが、実はこちらはトウェインの死後、残された原稿に第三者が手を加えて発表したものなんだそうです!

トウェインはこの作品を何度も書き直し、複数の原稿が残っていたためこんなことが起きたんだとか。

知らなかった!

そんなことがあるんですね!!

今回の『不思議な少年44号』は残された原稿の中でももっとも長く、完成はしていたものの推敲されることのなかったものを、トウェイン本人による真作決定版として翻訳したものだそうです。

それは読むのが楽しみ♪

マーク・トウェンといえば代表作は『トム・ソーヤの冒険』や『ハックルベリ・フィンの冒険』ですが、他にも様々な作品があるんですね。

今年2010年はトウェインの死後ちょうど100年目にあたるそうで、世界各地でさまざまな催しや関係する出版物も準備されているとか。

日本でも盛り上がってくれると嬉しいけどなぁ~



たくさんの風船

2010-09-04 23:59:00 | 本と日常
体に風船がつながっているイメージがふいにわきました。

部屋で横になってテレビを見ている時。

洗面所で歯を磨きながら鏡に映った自分の顔と対面している時。

体に風船がつながっていて、少し上に浮かんでいる。

それは他人とのきずなで、生まれた時から人と出会う度に風船はどんどん体につながっていく。

子供の頃は母親と父親の分。

おじいちゃんやおばあちゃん、もしかしたら兄妹の分。

大きくなるにしたがって、友達や仕事仲間、恋人なんかの分がどんどん増えていくのだけれど、その風船の糸は自分で切ることもできる。

その風船のおかげで少しだけ体が浮いているので、たくさん風船のつながっている人はまるで月面を歩いているかのように大きくジャンプすることもできる。

子供は体が小さいので、それこそ飛ぶことだって可能。

だけど、中には自分でその糸を切ってしまう人もいる。

じゃまくさいとか、めんどくさいとか。

また、糸がほつれて切れてしまうことだってある。

鳴らなくなった携帯電話とか、連絡先も知らない友達とか。

本人は気が付いていないけれど、風船が少なくなればなるほど、歩くのは遅くなるし、転ぶとその衝撃をやわらげてくれるには浮力が足りなくなる。

生きることが重くなる。

マンションの一室で、横になってテレビを見ながら、バラエティー番組を見て笑ってはいるけれど、その体には赤い風船が一つしかつながっていなかったりする。

もう空を飛ぶことができたってことも忘れている。

道行く人の頭の上に、それぞれいろいろな色の風船が浮かんでいる。

それは家族だったり、知り合いだったり、友達だったり、恋人の分の風船かも知れない。

たまに糸がもつれたり、行く手を阻むこともある。

いいことばかりとは限らない。

ある男は空を見る。

自分の思うように生きてきたつもりだけれど、風船はどんどん増えていくものだから、自分でどんどん切っているうちに、いつの間にか一つだけになってしまった。

残っていると思っていた風船も、自分が見ていないうちにどこかに飛んで行ってしまった。

今では体が重くて一歩も踏み出すことができない。

しかし男は気が付いていない。

男の手には自分の体につなげることはできないけれど、他人の体にはつなげることのできる風船がたくさん握られているってことに。

そして自分だってたくさんの人に風船をつなげることができるってことに。





…そんなイメージがふいに浮かび、ちょっと反省しました。

自分もずいぶん風船を切ってきてしまったなぁ、って。

風船は目には見えないけれど、きっとつながったその人が歩くのを、そっと支えているんだろうなぁ、って。

これは何の精神的兆候?

もうお風呂に入って寝ることにします。

明日から頑張ろう。



『高野聖』

2010-09-03 20:10:00 | 本と日常
仕事中に目の中にゴミが入ってしまい、すでに遅い時間だったのですが、時間外診察を受け付けてくれる大きな病院に駆け込み診察してもらいました。

当直の先生は目の洗浄をしてくれましたが、あいにく目の痛みはとれず、すでに帰宅していた眼科の先生が電話で呼び出され、一時間もかけて駆けつけてくれました。

到着して10分。
まぶたの裏に刺さっていた1ミリにも満たない金属片をすぐさま見つけてくれて、無事治療終了。

あぁ、医者ってありがたい。

ちょっと黒目に傷が付いてしまいましたが、感染症に注意すればもう大丈夫なんだとか。

この痛みをとってくれるなら5万円くらい払ってもいい! と眼科の先生を待つ間、心の中で叫んでいました(5万円ってところが貧乏性?)

あまりの激痛にいろいろなことが脳裏をめぐりましたが、その中で一番心配していたのが、

片目が失明したら本が読みにくくなるなぁ…

てこと♪



もっと他に心配することあるだろう!!



…思わず自分で自分にツッコンでしまいました。

携帯電話を「iPhone4」に機種変してから読み始めた電子書籍。

著作権が切れた作品をインターネット上で公開している「青空文庫」を電子書籍として読めるアプリがあるので、最近はそれを使って古い作品を読んでいます。

読んだのは…

*(キラキラ)*『葬儀記』 芥川竜之介

*(キラキラ)*『高野聖』 泉鏡花

*(キラキラ)*『明治時代の湯屋』 岡本綺堂

*(キラキラ)*『魔法修行者』 幸田露伴

*(キラキラ)*『渋江抽斎』 森鷗外

*(キラキラ)*『ドグラ・マグラ』 夢野久作

*(キラキラ)*『昌子詩篇全集』 与謝野昌子

*(キラキラ)*『家庭の幸福』 太宰治

携帯電話で読めるので、ちょっとした待ち時間に手軽に読めるのが便利です☆

面白かったのは幸田露伴の『魔法修行者』♪

『万葉集』や『水鏡』の昔より登場する不思議な力を持つ人々や、「まじない」「九星の卜」「八門遁甲の説」などを振り返りながら、修行者の祖といわれる役小角や九尾の狐の名前も登場します!

中でも室町時代の人で「飯綱(いづな)の法」を修め、空を飛ぶことも出来たという細川政元や、織田信長と対面した同じく「飯綱(いづな)の法」を操る九条植通の話は興味深かったです☆

泉鏡花の『高野聖』は、NHK教育放送の「Jブンガク」という海外からの視点で日本文学を読んでみようという番組で紹介されていて面白そうだったので読んでみました。

怪談っぽかったので夏の暑い夜にはピッタリかと思って。

内容は、飛騨の山中で旅の僧が経験した妖しくも不思議な物語…

こういうのけっこう好きかも♪

森鷗外の『渋江抽斎』は…誰かがどこかの本でこの作品について書いていたので(笑)

どの本だったか忘れました。

太宰治の『家庭の幸福』はいつもコメントを寄せて下さるharuniwaさんがご自身のcafe日記で取上げてみえたので読んでみました。(haruniwaさんありがとうございます☆)

文豪太宰治がラジオ受信機から流れてくるインタヴューに答える官僚のいやらしい笑い声にくやし涙を流し、ある短編小説の筋書きを考える…

役人っていつの時代でも変らないものなんですね~

その必死で守っているものに対する太宰治の鋭いツッコミが面白かったです♪

その中にも太宰治の売りである人間の悲哀がしっかり書き込まれていてよかった。

眼科の先生からは感染症予防のための目薬を処方してもらいました。

痛みもまったくありません。

これからも読書が続けられるように、目は大切にしたいと思います。