桜のキレイな季節になりました。
先月京都に行ったのですが、その時はまだタクシーの運転手さんの話だと京都御所の桜は三分咲きとのことでしたが、今月に入って行った桜の名所ではもう満開。
たくさんの花見客で賑わっていました。
最近読んだのは、伊坂幸太郎さんの、
『火星に住むつもりかい?』(光文社)
光文社
発売日 : 2015-02-18
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タイトルはデビット・ボーイの名曲『LIFE ON MARS?』から。
国民の安全を守るため、国民同士でお互いを監視しさせ、危険分子を見つけたら「平和警察」と呼ばれる組織が拷問により取り締まり、ギロチンによる公開処刑が当たり前になっている日本。
危険分子とされるのは、普通の主婦だったり、病院の医者だったり、未成年の少年少女だったり、リストラ担当のサラリーマンだったり、誰かに密告された人々で、取り調べという拷問では、肉体的、精神的なありとあらゆる方法を使って人間の心を殺していく・・・それはまるで魔女裁判のよう。
選ばれたら最後。拷問に耐えきれず罪を認めてギロチンにかかるか、それとも、こんな世界から逃げ出して、いっそ火星にでも移住するか?
正義ってなんですか?
どんな争いも戦争も「大切なものを守るため」という大義名分の元の行われてきた。
公開処刑を”人ごと”のように見物し楽しむ人々。
どうせ悪人なんだから。どうせ悪いことをした人なんだから。何もやっていなくても危険人物なんでしょ? どうせ関係ない人なんだから。
誰もが自分が ”今回は幸運にも選ばれなかった” ことを喜び、他人の不幸をあざ笑う。
そこに隠された矛盾に気付かず、想像力も働かない。
警察が、政府が悪いと決めた人は悪い人。
権力者は自分たちに都合のいい事実しか認めようとはしない。
そんな中、「平和警察」に反抗し危険分子とされた人々を救い出すヒーローが現れた!
その犯人を逮捕するために警視庁からやって来たのが、頭は切れるが変わり者の真壁捜査官。
果たして犯人は誰なのか?
様々な事件が絡み合い、犯人を追いつめるワナが張り巡らされ、ギロチンの刃がうなりを上げる!
・・・正直、読んでいて最後のどんでん返しには気がつきませんでした。
有能ではあるけれど、ちょっと人を食ったような性格の真壁捜査官がいいキャラです☆
「平和警察」とか「ギロチン」とか、大げさな要素も人を食ったようでまさに伊坂ワールド。
いい世の中なんてものはない。
常に社会は揺れ動きながらバランスを取ろうとしている。
いきすぎたらブレーキをかけ反対方向に動く力が働き、また戻る力が加わってくる。
どちらかに行き過ぎることがよくないんだ。
本人は作者インタビューで社会へのメッセージではないと否定していましたが、今の安倍政権で暮らしている国民にしたら社会風刺にとれてしまう(苦笑)
言いたいことも言えない風通しの悪い時代になってきましたからね。
事件が起こるとマスコミより先にTwitterなどのSNSで犯人らしき人物が特定され、名前も住所も家族さえも一般市民によって公開される現代は、ある意味魔女裁判に近いのかも。
よく知りもしないのに、国籍や風貌だけで「危険分子」と判断しちゃったり。
でもこれが人間。実際にこういう人が多いのではないでしょうか?
伊坂幸太郎さんの小説は軽妙な文体が魅力的で、会話などの言葉の使い方も面白いのですが、最近はちょっとその傾向が薄れ気味かな?
誰もが望む世界なんてそれこそ望むべきもないけれど、火星に住むわけにもいかない。
一人の人間にできることなんて小さいけれど、たった一人の人間の行いが周りに影響を与えることもあるんですよね。
先が気になって、一日で読破してしまいました。