愛しあっている友は
幸福である
―ペギィ―
かつて、日曜日の7時半といえば、カルピスの提供でおなじみ、アニメ「世界名作劇場」の放送時間帯でした♪
今でも”懐かしのアニメ”といえば必ず登場する「アルプスの少女ハイジ」や「フランダースの犬」、「母をたずねて三千里」といった数々の名作を送り出したアニメ界の金字塔のような番組です。
もう、テレビにかじりつくようにして見てました☆
ハイジやおじいさんの食べるとけたチーズに憧れ、ネロとパトラッシュの最後のシーンに涙し、マルコがお母さんを捜してボロボロの靴で見知らぬアルゼンチンの荒野を旅するのを固唾をのんで見守ったものです。
アニメーターとして就職した時の初仕事もこの「世界名作劇場」の仕事でした。
スポンサーはずっと前にハウス食品にかわっていましたが、憧れの作品に携われたことがとっても嬉しかったなぁ~
さて、今回はそんな名作劇場の作品の中でも、とっても好きな作品。
両親を亡くし、たった一人パリの街に取り残されてしまった少女ペリーヌが、苦難の末に愛する家(ホーム)を見つけ出す物語、「ペリーヌ物語」。
その原作になった作品をご紹介したいと思います☆
アニメの「ペリーヌ物語」はご存知ですか?
「あらいぐまラスカル」の後に始まって、「赤毛のアン」の前の作品です(笑)
NHKの衛星放送でも去年(2005年)密かに再放送されていましたね♪
原作者は19世紀末に活躍したフランスの作家エクトル・マロ。
小説として日本に紹介された時のタイトルは、『家なき娘』といいます☆
原題は「En famille」(アン・ファミーユ)。
エクトル・マロはその前に日本語にすでに翻訳されていた少年を主人公にした物語、『家なき子』(原題「サン・ファミーユ」)が広く知られていたので、こんなタイトルが選ばれたんでしょうか。
ちなみに「アン・ファミーユ」は『家なき子』でも使われていて、最後の章のタイトルなんだそうです。
その時は「家にて」と翻訳されています。
とにかく、このペリーヌが原作でも健気です!!!!!
遠くインドからフランスまで旅をしてくるのですが、途中で優しく頼りがいのある父親を亡くし、やっとたどり着いた巴里(パリ)の街で、今度は最愛の母親との別れが待っています。
しかもペリーヌはたったの12歳!
お父さんの残してくれた写真機や家馬車を売り、ギリシアからずっと一緒で何度もペリーヌ達を助けてくれたロバのパリカールまで手放して、必死でお母さんの薬代を用意するペリーヌ。(このパリカール大好きです☆)
しかし、キチンとした宿屋にも泊まれず、ひどい臭いと湿気の中、しだいに命の火が消えかかっていくお母さん…(まだ20代!)
せめてもと野に咲く花を摘んで飾り、必死で看病をするペリーヌ。
そんなペリーヌを病身でありながら優しく気遣うお母さんの深い愛が胸を打ちます!
ちくしょう、いい話だなぁ~(涙)
…舞台は産業革命により大きな工場があちこちに建つようになった頃のフランス。
ペリーヌのお父さんはフランス人で、当時イギリス領だったインドでお母さんと出会い、フランスにいる父親の反対を押し切って結婚したという過去があります。(二人はとっても愛し合っていたのです☆
そしてやがてペリーヌが生まれるのですが、お母さんの両親がインドで経営する工場が倒産してしまい、その上だまされてお金もなくなってしまったので、許してくれるかわからない父親、つまりペリーヌにとってはお祖父さんにあたる人を頼って、何とかして親子三人、フランスにたどりつこうとしたのです。
巴里(パリ)でお母さんを埋葬し、貧しいけれど親切にしてくれた人々に別れを告げて、一人旅立つペリーヌ。
彼女に残されたのは、擦り切れた上着に、繕いすぎて布もあてられなくなった靴下や身に付けている下着、細々とした小物にボロボロの靴と行き先を示した地図だけ。
しかもパリカールを売って手に入れたわずかなお金さえ、立ち寄ったパン屋で、身なりがボロだからと見くびられ、泥棒と言いがかりをつけられ巻き上げられてしまうという不幸!
許せんゾ、あのパン屋!!!!!
恐怖と不安、足の痛みや飢えと渇きに苦しめられ、それでも決して泥棒や乞食のようなマネはすまいと誓うペリーヌ。
たった一人、雨水をすすり、木の皮をかじってでも生き抜こうとするペリーヌを支えるのは、お母さんが残した最後の言葉です。
「お前はきっと幸せになる…」
…しかし、どんなに頑張ろうとも、ひとりぼっちの12歳の少女には、ただ生きることさえ、困難なことなのでした。
お金もなく、食べ物もなくなり、頼る人さえいない外国の地で、ついに、ついに力尽き、飢えのため道端に倒れ込んでしまうペリーヌ!!
あぁ~~~、ペリーヌ~~~!!!!!
さて、この後どうやってペリーヌは窮地を脱すのでしょう?
それは本を読んでのお楽しみ♪
とにかく、見どころ読みどころの多いこの物語。
盛り上がるのは後半です!!
大きな工場で、オーレリーと名前を変えて働くことになったペリーヌ。
お金がないので誰も使っていない小さな狩猟小屋で寝泊りし(ここでの生活がなんともペリーヌらしい☆)、安い布地を工夫して下着を仕立て、靴を手作りして間に合わせる。
やがて英語ができるという理由で(ペリーヌのお母さんはイギリス国籍のインド人でしたから、普段は英語なのです)、思わぬことから工場主の秘書として、その盲目の老人のそばで働くことになります。
ペリーヌの優しさと、内に秘めた知恵と勇気を見えない目で見抜いた老人は、少女を気に入り、やがて彼女を自分の屋敷に引き取ることにします。
その老人は、数年前に行方不明になった跡取り息子を必死に捜していて、その妻や娘のことを今も許してはいませんでした。
「ヴュルフラン様、あなたはあなたのお嬢様から慕われたくありませんか?」
「あれもあれの母親もわしは嫌いなのじゃ。ひとの倅を取ってよこしをらぬ。あれ共が倅を籠絡せなんだら、倅はとうの昔にわしのところにいるのじゃ!」
老人の怒りに落胆し、身を震わせるペリーヌ。
やがて息子の死の知らせを聞き、何もかも終わりだと、気弱になってしまった老人を、しかしペリーヌは必死で支え続けます。
「人に愛されるためには、まず自分が人を愛しなさい」
老人の口から、息子を奪ったインド人の女と、その娘のことを聞かされるたびに傷つくペリーヌ。
しかし、彼女は自分の両親を愛するのと同じように、この孤独な老人を愛し、自分の生まれについては一言もふれず、老人のために尽くすのです。
そしてラストは…
インドに始まり、父を亡くし、母を失って苦労に苦労を重ね、それでもあきらめずに、多くの人に助けられ、果敢に運命に挑戦して来たペリーヌの想いがやっと、やっと通じる瞬間!!!!!
不覚にも、読み終わってテッシュの箱片手に号泣してしまいました*(汗)*
ペリーヌが、ペリーヌがさぁ…(T_T)
もちろん、ハッピー・エンドです♪
読み終わってこんなにも幸せな気持にさせてくれるなんて、ペリーヌってスゴイ!
ただ健気というだけでなく、自分の頭と手の技だけで生きる工夫こらし、意思をしっかり持って行動するペリーヌに感動!
自然や動物達を愛する姿もいいです♪
もうベタ褒!
岩波文庫の『家なき娘』(上下)は旧仮名づかいなのでちょっと読み辛いという方は、他の出版社の本を探してみて下さい。
アニメの方もとてもよく出来ているのでオススメです☆
こちらにはバロンという原作には出てこない犬が登場していて、これまた面白い活躍をしてくれます♪
でも、やっぱり原作を読んでもらいたい!!
たくさんの人に読んで欲しい。
ホントにそう思わせてくれる物語です☆
エクトル・マロ 著
津田 穣 訳
岩波文庫