私的図書館

本好き人の365日

『謎の転校生』、『中国嫁日記三』

2014-02-22 21:51:52 | 本と日常

牡蠣が安かったので、思わず買ってしまいました。

鍋もいいのですが、ちょっと小麦粉をまぶしてオリーブオイルで炒めて塩コショウとレモンをふりかけて食べました。

はぁ、身がプリプリで美味しかった♪



最近注目しているドラマが、テレビ東京で深夜に放送されている「謎の転校生」

もうタイトルだけでピンとくる、原作はもちろん眉村卓の名作SF。

それを「スワロウ・テイル」などの作品で知られる映画監督、岩井俊二が企画・プロデュースし脚本もてがけています。

監督は「夜のピクニック」などを手がけた長澤雅彦。

 

有名なものはNHKの「少年ドラマシリーズ」(1975年)で放送されたものでしょうね。

眉村作品で有名なものはやっぱり「ねらわれた学園」かな?

そんな懐かしのSFジュブナイル作品が、平成26年に再ドラマ化。

深夜ドラマなのでそんなに予算があるようには見えませんが(笑)、パラレルワールドの世界観や、映像の美しさなど、見所いっぱい。

最近は「LOST」とか「 アンダーザドーム」とか、海外のSFドラマを見ていたので、こういう日本製のSF作品が見られるのは嬉しい。
星新一さんの作品もドラマになったりしていましたね。
村上春樹の短編もドラマ化してくれないかな?

 

最近読んだ本は、井上純一の『中国嫁日記 三』(KADOKAWA/エンターブレイン)

著者 : 井上純一
KADOKAWA/エンターブレイン
発売日 : 2014-02-14


中国人の女性と結婚し、その日常を綴ったブログが人気の書籍化第3弾。

さえない(失礼)中年男がどうしてこんなにカワイイお嫁さんをもらえたのか納得のいかない「中国嫁日記」ですが、中国と日本の文化や習慣の違いから生まれる笑いの数々に加え、今回は国際結婚の大変さ、中国の住宅事情など(仕事の関係で日本から中国に引越した)、ニュースにはのらない国際情勢を知ることができてとっても楽しい♪

芸術写真っていうの?(笑)

中国式の結婚式って、すごく派手なんですね~

まぁ、結婚式はお嫁さんが主導権を握るというのは、日本でも同じかな?(苦笑)

中国人と日本人の距離感(なんてったって中国の国土は日本の25倍もあります) の違いとか、公権力と市民の関係の違いとか(車ぶつけても小額の紙幣を渡して立ち去る武装警察(笑)とか)、実際に中国で暮らしているだけあって、スーパーの商品の値段や品質とか、ネット環境の違いとか、日常生活の細々とした情報を知ることができます。

日中韓と、なんだか政府同士は最近うまくいっていないようですが(そういえば今日は「竹島」の日でした)、中国で暮らす一般の人々は、当たり前ですが、いい人もいるし悪い人もいる、日本と何も変わらないんですよね。

両親を大切にし、親戚の子の面倒をみたり、一緒に買い物したり。

最近は留学する学生さんが少なくなったそうですが、どんどん国外に出て、他の文化、違う習慣を持つ人たちと接したらいいのに、と思います。

私も中国には2回ほど行きましたが、すごく楽しかったし、すごく面白かった(危ない所に行けば危ないです。どこの国にも明暗はあります。それは日本でも同じ)

『中国嫁日記』は、旦那さんの職業がかなりオタクなので(笑)、あまり一般の市民とはいえないかも知れませんが、奥さんの月さんがとってもカワイイので(反応が♪)、読むと月さんのファンになります。

日本の首相もマンガやアニメを活用しようといっていることだし、国際会議なんかで翻訳して中国関係者に配ったらどうかな?(笑)

殺伐としたニュースの多い中で、これは久しぶりにほのぼのとする中国のお話でした。

面白かった。

 

 


竹下文子 『旅のはじまり 黒ねこサンゴロウ1』

2014-02-17 17:09:49 | 児童文学

オリンピックに大雪に確定申告と、気になることの多い2月ですが、まだお正月に読んだ本の紹介をしています(苦笑)

ただし、この本はまだ読みかけ。

というか、シリーズ物で合計10冊もあるので、まだすべて読み終わっていないんですよね。

 

竹下文子 『黒ねこサンゴロウ』シリーズ(偕成社)

 

著者 : 竹下文子
偕成社
発売日 : 1994-07

 

児童文学作家の竹下文子さんと、画家の鈴木まもるさんによる作品。

「黒ねこサンゴロウシリーズ」全5巻。「黒ねこサンゴロウ旅のつづきシリーズ」全5巻があります(他に同じ世界観の姉妹作品あり)

 

2本の足で歩き、電車にも乗り、うみねこ族の船「マリン号」をあやつる黒ねこ、サンゴロウ。

第1巻で、一人旅の好きな人間の少年ケンは、隣の席に座った人物にビックリします。それはねこ。車掌さんが来て「猫は電車に乗ってはいけません」といわれるんじゃないかとドキドキ。しかしその猫は、むっつりしたままポケットから切符を取り出して車掌さんに渡したのでした・・・

 

淡いタッチで描く鈴木まもるさんのイラストがいい!

日常の生活に根付いた「生きること」をテーマにしながら、ファンタジーの世界と現実の世界をすぐ隣にある世界として描く竹下文子さんのストーリーがいい!

漁師であるサンゴロウが命よりも大切に思う船、「マリン号」がさらにいい!

 

うみねこ族にやまねこ族。

様々な顔を見せる海。

海賊に灯台守。

 

活動的なムーミンの世界?

スナフキンと気が合いそうな世界です♪

あ、でもサンゴロウは漁師としてしっかり働いているし、ずっと旅をしていたので生活力はすごくあります。

電車にも乗れますしね(笑)

 

猫に旅って似合います!

この作品、途中までは夢中で読んでいたのですが、全巻揃えることができなくて、おわりまで読むことができていませんでした。

本屋さんでなかなか見つけられなかったので、しかたなく注文(児童書のコーナーってあまり大きくないんですよね)

この間ようやく全10冊が揃いました。

待ち遠しかった!

オリンピックや見たいドラマがあって寝不足ですが、これは読まないと。

楽しみです☆

 

 

 


金原瑞人『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』

2014-02-13 23:40:09 | 日本人作家

このタイトルだと分かり辛いですが、翻訳家、金原瑞人さんによる「翻訳面白話」です♪

私としては、『翻訳者は裏切り者(Translator,traitor)』というタイトルがオススメ(笑) 

 

『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』(ポプラ文庫)

 

著者 : 金原瑞人
ポプラ社
発売日 : 2009-02

 

海外の児童文学を読むにあたって、タイトルも作家も聞いたことがなくても、金原瑞人さんが翻訳をしている本はなんとなく安心して買うことができます。(他に神宮輝夫さんとか清水眞砂子さんとか)

まぁ、たまにハズレもありますけどね(苦笑)

なにせ翻訳している数が300冊を超えるっていうんですから!

私にとっては翻訳家としての金原瑞人さんしか知りませんが(TVにチラッと映ったのは見たことあります)、現役の法政大学教授でもあり、芥川賞作家、金原ひとみさんの遺伝子提供者でもあります☆

 

卒業の迫った大学四年生の時、出版社の採用にことごとく落ちてカレー屋を始めようとしていた矢先に、卒論の指導教授にススメられて大学院に行くことになり、翻訳家としての道がひらけたんだとか(笑)

そんな生い立ちも織り交ぜながら語られる、本との出会い、出版社や仕事仲間との関係、翻訳業にまつわるあれやこれやがとっても面白い!

まだ日本で知られていない海外の良書を紹介したい! そんな人たちが登場すると、児童文学好きにはたまらないです!

 

日本語と他の言語についてのお話も興味深いものばかり。

英語で一人称を表す言葉は" I ” しかないけれど、日本語には「ぼく、おれ、わたし、自分、わし・・・」とたくさんある。これをどう訳すかで、原書の持つニュアンスをいかに伝えるか。

例えばラスト近くまで語っているのが男性か女性かわからない物語の場合、日本人の小さな男の子なら自分のことを「わたし」とは言わない。「わたし」と呼んだ時点で女の子だとわかってしまう。

逆に日本の小説で、思春期の女の子が自分のことを「ぼく」と呼んでいたら、それだけで強烈な個性になるけれど、英語に翻訳する時は困ってしまう。

終助詞の話もあって、「かわいいね」「かわいいよ」「かわいいな」といった、語尾について変化しているのが終助詞で、これは欧米の言語や中国語にはないそうで、日本語では多彩な印象を与えるこの終助詞の使い方も悩ましいところなんだとか。

確かに、「かわいいでありんす~」とか訳したら職業が限定されそう(笑)


(注)「ありんす」は終助詞じゃないのかな? わかりません。助詞は難しいですね~

 

ハムレットの名作『真夏の夜の夢』は有名な誤訳と紹介されています。

原文の「midsummer」というのは「夏至」のことで(確かに物語は夏至の夜のできごと)、日本では梅雨時の6月。

でも私はそこまで気にして読んでいなかったので、この本を読むまで気がつきませんでした(私の読書がいいかげんなのかも)

 

翻訳家の収入の話は厳しいです。

リーディング(原書を読んで要約をまとめる作業。それをもとに出版社が出版するかどうかを決める)一冊いくらとか、何ヶ月もかけた翻訳本が初版しか売れず印税が何万円とか、具体的な数字(2005年頃)が書かれています。

文学翻訳一本で食べていくのは難しいという現状みたい。

 

こうした裏話や、言語の違いについてのお話も面白いのですが、金原瑞人さんの周りって、変な人が多くて笑えます(いい意味で♪)

特に大学の教授って変人ばっかり!(いい意味です)

誰もこれないような山奥に自費で海外児童書の図書館を作ろうとして、「そんな所じゃ誰も読めないじゃないですか?」とつっこまれたら「本が傷まなくていいじゃないか」というお返事(苦笑)

もうどこまで本気なの!?

 

他にも金原瑞人さんが触れてこられた本が数多く登場するので、それを見ているだけでも楽しいです!

児童文学はもちろん、ファンタジーに絵本、SFやハーレクイン、アメリカ、イギリス、フランスに、もちろん日本の作品と、片っ端から読んでみたくなりました。

江國香織さんとの対談も面白いし、解説(のようなもの♪)は上橋菜穂子さんが書かれています。

 

文化も習慣も違う言葉を翻訳するのって、すごく難しくてすごく面白そう。

ロシア語通訳として活躍された米原万里さんの本も面白く読みましたが、文字だけの翻訳には文字という制約の中での苦労や技術が必要だということがよくわかりました。

『翻訳者は裏切り者(Translator,traitor)』という言葉は、元はローマだかイタリアのことわざらしいですが、あまりにも違う意味のことを翻訳されたからこんなことわざができたのかな?(笑)

でもそのおかげで英語もフランス語も中国語も読めない私が、他の国の本を読めるのだから、翻訳家の方々には感謝感謝です。

あー、面白かった☆

 

 

 


この国のかたち『子どもにつたえる日本国憲法』

2014-02-12 23:19:09 | 哲学

これも最近読んだ本です。

いわさきちひろさんの描く子どもたちに引かれて手にとったのですが、内容もすごく良かった。

 

井上ひさしの

『子どもにつたえる日本国憲法』(講談社)

 

著者 : 井上ひさし
講談社
発売日 : 2006-07-21

 

 

意見が違うことを極端に恐れる日本人社会では、よく「政治と宗教とスポーツの話題は避ける」なんてことがまことしやかにささやかれますが(笑)、互いの意見を交わす「議論」は別に悪いことじゃないし、お互いを知らないと尊重することもできません。議論することによって新しい考え方が生まれることだってあります。

考え方が違うのは当たり前なんですけどね。

たまに日本人の代表みたいな顔をして「もめごとを起こすな。日本人は和が大切なんだぞ」と暗に「黙って言うことを聞け」と圧力をかけてくる人もいますが(私の元上司がそうでした(笑))、日本人お得意の「和」という考え方も、こんな使い方をされたんじゃたまったもんじゃありません。

「和を以って貴しとなす」で有名な「十七条の憲法」には、他に「私利私欲を捨てよ」とか、「真心をもって行え」とか、いろいろ書いてあるのですが、最後の第十七条には、「大切な事は独断で決めずに多くの人と話し合って決めなさい。小さなことならともかく、大事なことを決める時は間違いがあってはならないから、よく相談するように(意訳)」と書かれています。

 

さて、本の内容ですが、現在(出版は2006年です)の日本国憲法が作られた時代背景を少し説明したのち(戦争中の平均寿命って、女性でも30歳後半くらいだったんですね!)、日本国憲法の前文と、第九条の内容が子どもにもわかりやすい文章で紹介されています。

 

二度と戦争はしない。武力でもって解決しない。我々は戦力を放棄する。

 

武器も持たず、相手の前に立つことは、銃を持って突撃するよりも勇気のいることです・・・

度胸もいるし、知恵もいるし、とても難しい生き方です。

ですが、私達はその難しい生き方に挑戦するのです。

それが、人類の未来にとって理想だと信じるから。

 

とても薄い本なんですが、その中に大きくページを使って、いわさきちひろさんの描く子どもたちがのせられています。

これがまた胸に響くんですよね。

 

少し前の本になりますが、いま読むといろいろと考えさせられます。

現在の日本の総理大臣である安倍晋三氏は、憲法を改正するために必要な前段階の発議条件である国会議員の三分の二の賛成がハードルが高いとして、これを二分の一にしたらどうかと頑張っていますが(そもそも二分の一じゃ多数決になってない気もしますが)、東京都の都知事選挙でも自民党推薦の方が当選しましたし、いよいよ第九条の改正が現実味をおびてきましたからね。

本屋さんに行くと、戦争(太平洋戦争)を取り扱った書籍があふれていてびっくりします。

3年後、この国のかたちはどうなっていることでしょう・・・

 

「大切な事は独断で決めずに多くの人と話し合って決めなさい。小さなことならともかく、大事なことを決める時は間違いがあってはならないから、よく相談するように」

 

我々が歴史として学んできた物は、のちの研究と新しい発見によって変わってくることがあります。
この十七条の憲法を定めたとされる聖徳太子も、現在では実在しなかったかも知れないといわれているそうです。

教科書を墨で黒く塗らなくっちゃ!(笑)

まぁ、誰が決めたかなんて案外どうでもいいのかも知れませんね。

 

この世の中はいろんなものがつながっていて、一つを変えたことですべてが狂ってしまうこともありますし、少しの変化で全体にいい影響が出ることもあります。

人間万事塞翁が馬。

 ただいえることは、間違いをおかすことが愚かなのではなく、同じ間違いを繰り返すことが愚かなんだと思います。

 

まぁ、人間なんていなくなったって、季節はめぐるし、地球は回り続けますけどね(笑)

 

 

 

 

 

 私達は皆、他人の不幸ではなく、お互いの幸福と寄り添って生きたいのだ。私達は憎しみあったり、見下しあったりしたくないのだ。この世界には、全人類が暮らせるだけの場所があり、大地は豊かで皆に恵みを与えてくれる。
 人生は自由で美しい。

 私の声が聞こえる人たちにいう、「絶望してはいけない」

 愛されない者だけが憎むのだ。愛されず、自然に反する者だけが。

 独裁者たちは自分たちを自由にし、人々を奴隷にする。
 今こそ、約束を実現させるために闘おう。世界を自由にするために、国境のバリアを失くすために、憎しみと耐え切れない苦しみと一緒に、貪欲を失くすために闘おう。

      ―チャップリン「独裁者」(1940)ラストシーンのスピーチより一部抜粋― 

 


『ベーオウルフ』 ローズマリ・サトクリフ版

2014-02-10 00:04:22 | 海外作品

何十年ぶりかの大雪で、各地で交通機関に混乱が生じていますね。

そんな中行われた東京都の都知事選挙は、元厚生大臣の舛添要一氏が当選しました。

私は東京都民ではないので、シチューを作ったり、コタツに入って大河ドラマを見たり、本を読んだりしていました。

 

最近読んだ本。

ローズマリ・サトクリフ版『ベーオウルフ ―妖怪と竜と英雄の物語―』 (原書房)



「ベーオウルフ」というのは英文学の古典で、『指輪物語』などにも影響を与えたとても古い叙事詩です。

成立は8世紀頃といわれていますが、古い英語が使われていて、舞台もデンマークやスウェーデンが登場します。

物語は、若き英雄ベーオウルフが、グレンデルという怪物を倒す第一部と、王となり年老いたベーオウルフが、王国を襲う竜を倒すために最後の戦いにおもむく第二部から成っています。

馬に剣、英雄と怪物、そして火を吹く竜が守る黄金。

トールキンの『指輪物語』や『ホビット』が好きな人には、すごくすんなり入っていける世界観です。

 

8世紀というと、日本では古事記や日本書紀が編纂された頃ですね。

奈良時代から平安時代の初期にあたります。

古事記や日本書紀で活躍するスサノオも、八つの頭を持つヤマタノオロチという怪物を退治します。

同じ時期に同じようなモチーフが取り上げられるというのは面白いですね♪

もっとも、サトクリフ版の「ベーオウルフ」では、神様や女性の影は薄くて、英雄が正面から戦いを挑みます。

 

前々からいつか読んでみたいとは思っていたのですが、なかなか読む機会がなくてようやく読むことができました。

英文学というか、海外のファンタジーの元ネタによく使われているそうで、そういう文化の下敷きを知るのはとっても楽しいです。

あとがきで訳者の井辻朱美さんが書いていますが、例えば「戦い」のことを「剣の嵐」と表現してみたり、「ドラゴン」を「宝の守護者」、「王」を「指環の主」と表現するといったとってまわった表現がたくさん出てくるのですが、現在の文化にもそういう元の意味を知らないとわけのわからない表現があって、やっぱり元ネタを知るとわかることがあるんですよね。

例が違うかも知れませんが、日本語でも「永田町」とか「大黒柱」とかいいますよね。

ちなみに「君は僕の太陽だ!」なんてセリフは、砂漠の国ではほめ言葉にならないらしいです。「君は月のように美しい!」といわないと♪

「大黒柱」を英訳すると「breadwinner(パンを勝ち取る人)」になるの?

 

あぁ、話がそれました(笑)

 

ともかく、『指輪物語』や『ホビット』に影響を与えた古典ということだけでも読む価値がありました。

面白かった。

今月末からは、いよいよトールキン原作の『ホビット』映画化第2部、『ホビット竜に奪われた王国』が日本でも公開されます。

これも今から楽しみです☆


アクセル・ハッケ 『ちいさなちいさな王様』

2014-02-03 23:23:24 | 哲学

どんな細胞にも変化可能な万能細胞が、ごく簡単な方法で製作できると発表し、世間をビックリさせた「STAP細胞」

その成果にも驚きですが、製作に成功した理化学研究所のユニットリーダーが、若い女性だということで日本のマスコミは騒いでいましたね。

理化学研究所の研究員、小保方(おぼかた)晴子さんは30歳。

白衣じゃなくて割烹着を着て実験しているとか、研究室にムーミンのキャラクターが貼ってあるとか、研究成果以外の情報も報道されていました。

マスコミの幼稚さはこの際おいて置いて(苦笑)、その小保方さんが中学生の時、読書感想文を書いてコンクールで最優秀賞を受賞したんだそうです。

その時に読んだ本が、ドイツの作家、アクセル・ハッケの書いた

 

『ちいさなちいさな王様』 (講談社)です。


講談社
発売日 : 1996-10-18



挿絵は私の大好きなミヒャエル・ゾーヴァ。

ミヒャエル・ゾーヴァについては、小さなウサギの王子様が東西冷戦下のベルリンの町を駆け回る、『エスターハージ王子の冒険』も紹介させていただきました♪



 小保方さん人気の影響で、『ちいさなちいさな王様』 はネット販売大手のAmazonのランキングでいきなり上位に躍り出ました。

中古本も定価近くで出品されていましたが、古本屋さんに行けば100円で買えます(笑)

田舎だから? 東京の古本屋さんが品切れってこと? 落ち着けみんな。

 

ある日突然、部屋のすき間から出てきたのは人差し指くらいの小さな小さな王様だった。

王様も最初は大きかったそうで、彼らの世界では大きく生まれ、齢を重ねるごとに小さくなっていき、やがて誰にも見えないほど小さく小さくなって、次の王様に代わるのだとか・・・

人間は大きくなるにしたがい、いろいろな事を覚え、そして現実を受け入れ夢をあきらめていく。

王様は小さくなるにしたがい、いろいろな事を忘れていき、どんどん自由に世界を夢見ることができるようになっていく。

それが素晴らしいことだという王様。

「STAP細胞」じゃないけれど、小さくなって子供に戻るってことは、何にでも変化できる万能性を手に入れるってこと。夢はどんどん増えていく。

サラリーマンの部屋の持ち主に、なぜ想像力を使って自分の頭で考えないんだ? と問いかける王様。この世界は自分の思う通りのものかも知れないのに?

仕事が現実。王様との遊びは夢みたいなもの。

しかし、現実が実は夢で、ベットに入ってからが本当の現実だとしたら?

その違いは何?

 

価値観の違いは『星の王子さま』みたいだし、現実と夢の話は「胡蝶の夢」みたい!

 

私が好きなのは、ベランダで夜空の星を見上げながら(王様は部屋の持ち主のお腹の上に寝そべりながら)、人は死んだら星になるという話をしているシーン。

大人になるにしたがい、不安になって不自由になっていく人間と、小さくなるにしたがい、開放され自由になっていく王様が対照的。

すごく哲学的なことをいっているのですが、内容は小さな王様が可笑しくて、中学生でも読むことができます。

 

小保方(おぼかた)さんに対するマスコミの姿勢には反発を覚えますが、この本が人気になるのは嬉しい♪

刺激を受ければ受けるほど、人間は変化する可能性があるわけですからね。

そういう意味では、とっても刺激になる本です。

 

 

 

 

 最も強い者が生き残るのではなく

 最も賢い者が生き延びるでもない。

 唯一生き残るのは、

 変化できる者である。

 

         ―チャールズ・ダーウィン―