ジブリ最新作、宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見てきました。
泣いたぜ。
太平洋戦争で日本軍の主力戦闘機となった零戦の設計者、堀越二郎の物語を縦軸に、同時代を生きた堀辰雄の小説「風立ちぬ」「菜穂子」を横軸にして、まだ貧しく、混乱した日本に生きる若者たちの夢と恋と挫折の人間ドラマを描いています。
子供には向いていません。
いや、大人でもただ単にジブリが好きっていう人にわかるかな?
先輩たちと衝突しながら自分の好きな作品を作りたくて作りたくて、挫折も経験してきた宮崎駿。その人生と堀越二郎の人生にはオーバラップするものがあります。
主人公がカッコよく煙草を吸うのは、自信も喫煙者で、スタジオでは煙草を吸うのは自分だけだといっていた宮崎駿の無言の抗議かも(苦笑)
サナトリウムのシーンは、トーマス・マンの「魔の山」を彷彿とさせます。
なぜ愛する二人がああいうことになるのか、それが痛いほどわかるのは、これまで宮崎監督が描いてきた女性キャラがあるから。お姫様しか描けないと揶揄されたこともある宮崎監督の、ある種の答えなんだと思いました。
作ろうと思えばこの作品もいわゆる「大作」にはできたと思うんです。エンターテイメントを狙って活劇にもできたはず。でもそれをあえて抑えて、人間ドラマを描く。それも堀辰雄のような世界を。
あの年齢になり、いわゆる大御所と呼ばれる監督なのに、ここにきてこんな作品を作るなんて。
最初は今回初めて声優を務めた庵野秀明(アニメ監督、アニメーター)に、「庵野~!」とか思っていたのですが、物語進むにつれ、「ここにたどり着くんだ・・・」と感慨深いものがありました。
帰りにさっそく本屋さんにより、堀辰雄の『菜穂子』(新潮文庫)を購入。
小説の『風立ちぬ』も好きでしたが、この『菜穂子』もいい物語です。
すべてを赤裸々に描くことが物事の本質を見誤らせる場合もあります。
「描かない」ことも時には重要なメッセージになりうる。
そんなことを教えてくれる、とても余韻の残る作品でした。
宮崎監督ありがとう!!
風立ちぬ、いざ生きめやも
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