なぜなら、第二の恋愛では、また第二の恋愛によって、
恋愛の最高の意味が失われるからである。
―ゲーテ「詩と真実」―
シモネタ好きですか(笑)
しまった! 一行目は新着日記の一覧に載るっていうのに、こんなで出しで大丈夫なのだろうか?
今回はちょっと昔になりますが、’97年講談社エッセイ賞受賞作。
米原万里さんの 『魔女の1ダース~正義と常識に冷や水を浴びせる13章~』 をご紹介します☆
米原万里さんといえば、日本におけるロシア語通訳の第一人者。
いまやその顔はTVのコメンテーターとしてもお馴染みですね。
そんな彼女が、通訳をしながら体験した様々な事柄、見聞きした出来事、出会った人物や考え出した結論などを、古今東西縦横無尽に語り尽くした本書。
異文化コミュニケーションの面白さ、難しさ。
政治論から経済論、アダムとイブの国籍に、立ちションの男女におよぼす影響まで、全編にジョークを交えて織りなす内容は、抱腹絶倒間違いなしの面白さ♪
普段信じて疑わない身の回りの”当たり前”を笑い飛ばしてひっくり返してくれる、そんな一冊です☆
世間一般で1ダースといえば、12個を1組とした数え方。
でも魔女の世界では1ダースは13個が当たり前。
文化が違えば、常識だって違って当然。
たった一つの常識。
たった一つの正義なんて、あると考える方が非常識。
食べ物一つとっても、その受け取り方は様々。
ご飯がパラパラのほうが美味しいチャーハンだと思っている日本人。
ところがキルギス人はタップリとした油の中に浸っているチャーハンこそ、本物のチャーハンだと主張する。
映画大国アメリカが、自慢のハリウッド映画をカザフスタンで上映した時、名画と名高い「カサブランカ」が銀幕にかかると、観客のカザフ人の間で、失笑嘲笑が絶えず、評判は散々だった。
この映画、主人公がナチス・ドイツ占領下のヨーロッパの解放をさかんに叫ぶのに対し、自分達がフランスの植民地であるモロッコのカサブランカで支配者面していることについては、いっこうに気にかけていない。
これを名画だとする欧米人の無神経さに即座に気付いたカザフ人には、「カサブランカ」は人気がなかったのだ。
また、通訳で苦労するのが、駄洒落。
言葉の響きに由来する”遊び”なんだから、他の言語にしてしまっては面白くともなんともない。
「スウェーデン食わぬはオランダの恥ってなもんだ、ハハハハ」
「ただいま、スピーカーは語呂合わせをやりましたが、通訳不可能です。申し訳ありませんが、ムードを盛り上げるため笑ってやってください」
…まさか本当にこんなことを言っているのかどうかはともかく、駄洒落好きは通訳の天敵だとか。
また音の似通った言葉による、笑い話も紹介されていて、これが可笑しい☆
日本の民謡で合いの手に使われる「ホイホイ」という言葉。
これ、ロシア語では男根を意味する俗語と非常に響きが似ているため、歓迎の席でこれを聞いたロシアのレニングラード・フィルの楽団員達はイスからずり落ちるようにして笑い転げたんだとか☆
また「エビスビール」でおなじみの「エビス」。
これはロシア語では、fuckの命令形に相当するらしく、食卓にこのビールが並んだら、さぞロシア人はビックリした顔をしそう。
さらにイタリア語で、やはり男根を意味する言葉は、日本語の「カツオ」という言葉の響きに限りなく近い。
イタリアに料理留学していた作者の妹さんは、「日本ではスープのだしを何でとるのか」と尋ねられ、「カツオという魚の乾物で」と答えたんだとか(笑)
ご愁傷さまです☆★
ベトナム語には類冠詞というのがあって、例えば樹木をあらわす言葉の前には、樹木をあらわす冠詞の「カイ」というのを付ける。
柳は「リョウ」という名称なので、発音する場合は冠詞に名称をくっつけて「カイ・リョウ」となる。
同じように、鳥をあらわす言葉には「チム」という類冠詞が頭に付く。
日本に来たベトナムの美しい民族歌舞団の随行員になった独身のS君。
なんとか親しくなろうと、おぼえたてのベトナム語で、近寄ってきた鳩の群れを指差してその名を呼んだ。
ベトナム語で鳩の種類をあらわす言葉は「ボコ」。
「チム・ボコ。チム・ボコ」
美女たちも嬉しそうに応じて答える。
「オーッ、チム・ボコ、チム・ボコ、チム・ボコ…」
~~☆~☆~☆~~☆~☆~☆~~
こんなことばっかり書いていて、はたして読む気になった人がいるのかどうかとっても不安ですが、最後にしつこくもう一つ♪
「あなたがシャワーを浴びている最中に突然、男がドアを開けました。とっさに貴女はバストかアソコか、どちらを隠しますか」
男の立場から言うと、どちらが見えても、何だか得した、という感じになるそうで、一番つまらないのは、顔が見えない場合。
ですから、正解は「顔を隠す」だそうです。
~本文あとがきより(けっして私の意見ではありません)~
…と、とにかくこんな本です(汗)
米原 万里 著
新潮文庫