私的図書館

本好き人の365日

「アオイホノオ」と「花子とアン」

2014-08-25 20:16:55 | 本と日常

残暑お見舞い申し上げます。

甲子園では三重県代表の三重高校が59年ぶりに決勝進出し、東海地方に住む者としておおいに盛り上がりました♪

惜しくも敗れてしまいましたが、準優勝だってたいしたものです。

やっぱり高校野球は面白いですね~

 

深夜ドラマも面白い!

漫画家、島本和彦の自伝的ドラマ「アオイホノオ」と、深夜の飯テロ「孤独のグルメSeason4」

どちらもマンガが原作ですが、「炎の転校生」を読んでいたサンデー派の私としては「アオイホノオ 」は見逃せません。

アニメ制作会社「ガイナックス」の面々も登場するので面白いんですよね~
マクロスの石黒昇さんとか、板野サーカスと言われた板野一郎さんから直接お話をうかがったこともありますし、庵野秀明さんには一度だけお会いしたり、知り合いがガイナックスに一時勤めていたこともあって、個人的に「そうそう」とうなずくシーンが多くて笑えます。

演出もそれっぽくて面白い!



『赤毛のアン』の翻訳者、村岡花子さんを取り上げた朝ドラ「花子とアン」も見ています。

村岡花子さんが主役というよりは、「アンをめぐる人々」という感じで、村岡花子さんの周りの人のドラマばかりが目立っていますけどね。

兄やんと醍醐さんは架空の人物ですけどね。

特に「翻訳家になりたい!」という想いが伝わってこないので、ストーリー重視の人には辛いかも知れませんね。

ようやく「ラジオのおばさん」まできましたが、まだまだ「赤毛のアン」は登場しません。

いつになったら「花子とアン」になるのやら。


最近読んだのは、積読状態だった『ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~』(アスキー・メディアワークス)

登場人物の意外な過去がわかったり、イライラするくらい進まない二人の仲に進展(?)があったりと物語的にも面白いのですが、やっぱり本についてのお話が興味深いですね。

手塚治虫のエピソードはよかった。

でも栞子さん、かわいいというより、だんだん面倒くさく思えてきた(苦笑)


著者 : 三上延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
発売日 : 2014-01-24

 

 

もう一冊は、明木茂夫さんの『中国地名カタカナ表記の研究』(東方書店)

地図帳のカタカナ表記から始まり、国語審議会の漢字追放や文部省などの資料も紹介されていて、知的好奇心を刺激されました。

中国では川の名前に、◯水、◯江、◯河とつくので、日本語表記にした際、例えば漢水(ハンシュイ)なら「ハン川」とカタカナ表記になる。華北平原を南北に走る大運河は大(ター)だから日本語表記で「ター運河」(笑)

これは例えば日本で地名の白浜を「sira  beach」と訳すようなもの、と紹介されていました。

いや、sira て何だよ?(笑)

何か道路標識でも誰のための標識なのかわけのわからないものがありましたね。
「~公園」を「~koen」と書いたり「~通り」を「~dori」と、そこはローマ字じゃなくて英語だろ、という標識。

カタカナって日本人は普通に使っていますが、そのルールってあまり意識しないですからね。
「カルフォルニア」も「カリフォルニア 」も同じ地名だと判断しちゃうし、「ロスアンジェルス」も「ロサンゼルス」も同様。
ただし政府機関で使う言葉はさすがに統一しようと、変なルールが決められていて、例えば「ロサンゼルス 」が一応政府公式。

「テストで 『遼東半島』 を 『リャオトン半島』 と書いたら×で、正解は 『リヤオトン半島』 だった」なんて話も。

ずいぶん前からこのカタカナ表記ってあったそうで、私も地図帳眺めるのは好きですが、そこまで意識したことがありませんでした。

エベレストのチベット側の呼び名、チョモランマもやっと違和感無く受け入れられるようになったのに。

 

著者 : 明木茂夫
東方書店
発売日 : 2014-04

 

あと読んだのは、瀧波ユカリさんの『はるまき日記: 偏愛的育児エッセイ』(文藝春秋)

こちらはちょっと毒舌なマンガ家さんの子育てエッセイ。

読みやすいのでスラスラ読めました。


著者 : 瀧波ユカリ
文藝春秋
発売日 : 2012-06-29




現在読んでいるのは、お気に入りのマンガ『草子ブックガイド 3』(講談社)と、ボルヘスの『伝奇集』(岩波文庫)。

本を読んでいると一時的に暑さを忘れます。

それだけならいいのですが、やらなきゃいけないこともたまに忘れます。

洗濯の途中だったりすると、いつの間にか洗濯が終っていて干すの忘れたり(苦笑)

あれスマホの時計みたいにスヌーズ機能とか付けてくれないかな?

洗濯が終ったら「洗濯が終了しました」→(5分後)「早く干して下さい」→(さらに3分後)「早く干せ!」みたいな音声ガイドとか(笑)

人間そこまで落ちぶれたらダメでしょうか?

私はすごく必要としているんですけど・・・

 


玉川重機 『草子ブックガイド』(講談社)

2014-08-04 21:32:10 | 日本人作家

このところ、実在の書物を扱った作品をいくつか読みました。

以前も紹介した片山ユキヲさんの朗読を取り上げたマンガ『花もて語れ』2巻~4巻(小学館)

池澤夏樹さんの書評、『嵐の夜の読書』(みすず書房)

そして玉川重機さんのこれまたマンガ『草子ブックガイド』1巻、2巻(講談社)

 

著者 : 片山ユキヲ
小学館
発売日 : 2012-03-30

 

毎回その作品の解釈にハッとさせられる『花もて語れ』ですが、今回は斎藤隆介の『花咲き山』と芥川龍之介の『トロッコ』が取り上げられます。

不覚にもマンガの中の朗読(ヘンな表現ですが 笑)に感動して涙ぐんでしまいました。

 

自分がやりたいことをやらないで、
涙をいっぱいためてしんぼうすると、
そのやさしさと、けなげさが、こうして花になって咲き出すのだ。 

 

家が貧乏だから、祭りの日の着物を妹にゆずり自分は我慢する・・

自分だって本当はキレイな着物が欲しい。涙をいっぱいためてお姉ちゃんだから我慢する。

そんな時、花咲き山でひとしれず一輪の花が咲く。

 

「しんぼう」とか「けなげさ」って、もう死語なんですかね?

合間に挿入された朗読作品が、宮澤賢治の『春と修羅』と、高村光太郎の『ぼろぼろな駝鳥』だったのもとってもよかった。

すごく個人的な思い入れなんですが、私が中学生の頃、熱を出して学校を休んだ時に「何でもいいから詩が読みたい」とねだって、親が本屋で買ってきたのが、たまたま宮澤賢治の『春と修羅』と『高村光太郎詩集』の2冊で、私の思い出の中では二人セットで大好きな作家さんなんですよね。(『ぼろぼろな駝鳥』もその詩集にちゃんと収録されていました)

偶然なんですが、ますます『花もて語れ』が好きになってしまった。

 

著者 : 玉川重機
講談社
発売日 : 2011-09-23

 

『草子ブックガイド』は、人見知りで口べたな中学生の女の子 ”草子” が主人公。

家が貧乏で本の買えない彼女は、古本屋からこっそり本を失敬しては本の世界に没頭します。

読んだ本は次の本と交換でいちおう古本屋の本棚にそっと戻すのですが、せめてものおわびに、読んだ本の感想(ブックガイド)を書いてはその本にはさんでおきます。

物語が進むとブックガイドを書く理由は様々に変化しますが、毎回この草子のブックガイドによる作品世界の紹介が魅力的なんです。

そしてそれに輪をかけて、草子のキャラクターがいい♪

芸術家の母は父と草子を捨てて家を出て行き、今は別の家庭を持っています。

かつて画家を志していた父はその夢があきらめきれず、今は酒におぼれ家は荒れています。

学校にもなじめず、どこにも居場所のない中学生の草子ですが、本を開けば世界のどんな場所へも、どんな時代へも羽ばたいて行ける・・・

 

う~ん、わたし、薄幸な主人公に弱いのかな?(笑)

貧乏ってところだけですごく共感できているのかも(苦笑)

 

ただ、紹介されている作品の選び方にもとっても共感できるところがあるんですよね。

これぞ本好き! って感じで。

1、2巻に登場するのはこんな感じ。(カッコ)内のコメントは作品とは直接関係ありません☆

 

ロビンソン・クルーソー三部作。
『ロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚くべき冒険』(←皆が良く知っている話はコレ)
『ロビンソン・クルーソーのその後の冒険』
『ロビンソン・クルーソー の生涯と不思議で驚くべき冒険における真面目な反省』

『ティファニーで朝食を』
『ダイヤのギター』

『山月記』(森見登美彦ファンなら絶対読むべき!)

『山家集』(松山ケンイチの大河ドラマ「平清盛」にも出てきた西行の作品)

『老人と海』

『山椒魚』(井伏鱒二の「山椒魚」には一般的な「山椒魚」と児童向けに直された「山椒魚」、ラストをバッサリ切った最晩年の「山椒魚」の三種類に、もっとも初期に書かれ、「山椒魚」の原型となった『幽閉』という作品があります)

『バベルの図書館(ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』より)』

『銀河鉄道の夜』

『夏への扉』(SF界の巨匠、ハインラインの代表作!「お掃除ガール」【文化女中器(ハイヤード・ガール)】という機械が登場するんだけれど、「人工知能学会誌」の表紙が女性型アンドロイドで問題になったことを思い出します。SFの世界にも確かに男性優位の考え方が根強い。それに対抗するようなル・グィンの一連の作品もあるけど)

『月と六ペンス』(画家ゴーギャンをモデルにした作品)

『飛ぶ教室』(児童文学作家として有名なケストナーの作品。ヒトラーのナチスが台頭してきた時代、ケストナーはナチスに批判的でした。言論弾圧は児童文学にもおよび、多くの作品が焚書の対象になりましたが、当時すでにドイツ国民に愛されていたケストナーにはさすがのナチスも手が出せず、彼は最後までドイツに留まりました)

 

名作揃いで有名なものばかりですが、ボルヘスの『バベルの図書館』は読んだことがなくって、さっそく図書館で探してみようと思っています。
無限数の六角形の回廊が積み重なり広がる図書館。
無我の境地に達すると、円形の部屋の壁をぐるり囲む切れ目のない背を持った一冊の大きな本が現れる・・・ 

「図書館は永遠を超えて存在する」って何のこと!? 

古本屋の老主人と猫、そしてそこのアルバイトの男性がサブキャラで登場するので、手をのばせばその場面にぴったりの本がすぐ取り出せるのが、とってもうらやましい!

主人公、草子の人生や父親との関係も気になります(中学生の育ち盛りなのにお昼ご飯が買えないとか、もう読んでいて応援したくなってしまう~)

 

こういう本を紹介する本ってやっかいですね。

次々と読みたい本が増えてしまいます(苦笑)

そして私も何回か紹介したことのある、吉野弘さんの詩も作中で取り上げられていました。

 

 吉野弘 「風が吹くと」より

 ー生命はー

 

 生命は

 自分自身だけでは完結できないように

 つくられているらしい

 花も

 めしべとおしべが揃っているだけでは

 不充分で

 虫や風が訪れて

 めしべとおしべを仲立ちする

 生命は

 すべてその中に欠如を抱き

 それを他者から満たしてもらうのだ

 

 

私も他者からたくさんたくさん満たしてもらってきました。

自分の行いも、めぐりめぐって誰かの欠如を満たす助けになっていればよいのですが、こんな考えはちょっと傲慢かも知れませんね。

人知れず咲く花に美しさがあるように、咲いている花は懸命に生きているだけで、それを「美しい」と思うのは、その花を見ている人だけですからね。

それは人じゃない存在かも知れないし、言葉にしたら「良心」とか「善意」とか人によって色々な言い方になるのかも知れないけれど。

こうしてマンガや本からもたくさん満たされます。

作者や編集者には伝わらないかも知れないけれど、。

いい読書ができました。

 

さあ、次はどの本を読もうかな?