永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(210)

2008年11月03日 | Weblog
11/3  210回

【乙女(おとめ)】の巻】  その(20)

 源氏の方でも、紫の上や花散里に仕えています童女(めわらわ)や下仕えの中ですぐれた者をお選び出しになります。その者たちは、それぞれ身分身分によって誇らしげです。

 帝がご覧になるその前の稽古に、源氏は、その者たちをご自分の前を通らせて、最後のお選びをなさいますが、皆姿や器量が優れていました。

「今一所の料を、これより奉らばや」
――もう一人の舞姫の付き添いもこちらから差し上げようか――

 などと、お笑いになって、態度と心構えの優れた者が選ばれたのでした。

 夕霧は、あれからお食事も進まず、ひどく塞ぎ込んで、書物も読まれずぼんやり横になっておられましたが、少し気分も紛れようかと、お部屋を出てお歩きになります。
夕霧は、ご様子やご態度がご立派で物静かで気品がありますので、若い女房達はお美しいと眺めております。

 源氏は、
「上の御方には、御簾の前にだに、もの近うももてなし給はず、わが御心ならひ、いかに思すかにありけむ、疎疎しければ、御達なども気遠きを、今日はものの紛れに入り立ち給へるなめり。」
――源氏は夕霧に、紫の上には御簾の前にさえ近寄る事を許さず、ご自分の若いころの、あるまじきお心癖を、若君が再び繰り返してはならないとお思いなのでしょうか。とにかく日頃は疎遠がちですので、女房達なども夕霧と親しくなさってはいないのですが、今日はこの混雑に紛れて、内にお入りになり、物陰に佇んでいらっしゃる。――

「舞姫かしづきおろして、妻戸の間に屏風など立てて、かりそめのしつらひなるに、やをら寄りてのぞき給へば、なやましげにて添ひ臥したり。」
――舞姫(惟光の娘)を車から大切に降ろして、廂の隅の間に屏風などを立てて、臨時の控えのお部屋にしてある所に休ませています。夕霧はそっと近づいて覗いてご覧になりますと、舞姫は疲れている様子で悩ましげに物に寄りかかっているところでした。――
 ちょうど忘れられないあの方ほどの年頃で、背は少し高く、姿かたちの際立ってあでやかな様子は、雲井の雁より立ち優っているようにさえ見えます。

ではまた。



源氏物語を読んできて(五節・童女)

2008年11月03日 | Weblog
童女(めわらわ)選び

 新嘗祭に奉る五節の舞姫に 介添えとして付き従う童女を選ぶため、光源氏が童女達に自分の前を渡らせている・・・という華やかなシーン。

 ここは、二条院です。階(きざはし)の上段に源氏がいます。右下は、下仕え(しもづかえ)の女たちです。
 
◆写真:風俗博物館