永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(184)

2008年11月29日 | Weblog
11/29  236回

【玉鬘(たまかづら)】の巻】 その(15)

源氏は、つづけて、
「上も、年経ぬるどちうちとけ過ぎば、はたむつかり給はむ、とや。さるまじき心と見ねば、あやふし」
――紫の上も、われわれ年寄り同士が親しくしすぎては、やはりお気にさわるだろうね。
そうではないと言えないお心だから、危ないことだ――

などと、右近を相手にお笑いになります。そのご様子は、たいそう愛嬌がおありで、洒落っ気さえ添っていらっしゃる。源氏が、

「かの尋ね出でたりけむや、何さまの人ぞ。尊き修行者語らひて、率て来たるか」
――その捜し出した人というのは、一体どういう人か。尊い修行僧でも口説いて連れて来たとでもいうのか――

 右近が、まあ、人聞きのわるい、これこれしかじかと、玉鬘のことをお話しになります。源氏は

「よし、心知り給はぬ御あたりに」
――よしよし、ここに事情をご存知ない方もいらっしゃるから――

と隠し事のように言いますのを、紫の上は、

「あなわづらはし。眠たきに、聞き入るべくもあらぬものを」
――ああ、煩わしいこと、こちらは眠くて耳をそばだてるどころではございませんのに――
と袖で耳をお塞ぎになります。

 源氏は、右近からいろいろと聞き出されます。「その玉鬘の容貌は夕顔に比べてどうか、劣っていないだろうか。誰くらいの器量かな、紫の上とはどうだろう。もっとも私に似ているならば安心だがね」などと、もう玉鬘の親のようなおっしゃりかたです。

 それからは、右近一人をお召しになって相談しては、

「さらばかの人、このわたりに渡い奉らむ」
――では、かの姫君玉鬘を、この六条院にお引き移ししよう――

ではまた。