永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(221)

2008年11月14日 | Weblog
11/14  221回

【乙女(おとめ)】の巻】  その(31)

秋の彼岸のころに、六条院へ移転されます。はじめに花散里の御方、少し遅れて秋好中宮、そして源氏と紫の上、世間の非難もありはせぬかと、大げさな御仕度ではないようにと、なさったものの、矢張り盛大で、四つの区画の堺には、塀や廊を設け、あれこれ行き来出来るようにして、お互いの間を、親しみ深く風情あるように御造りしてあります。

秋好中宮と紫の上は、女童をお使いに立てられて、お互いに御歌をやりとりなさったりと、なるほど、源氏のご様子がご立派な上に、女の方々も親しく音信し合われる理想的な御邸宅ですこと。

「大堰の御方は、かう方々の御うつろひ定まりて、数ならぬ人は、いつとなく紛はさむ、と思して、神無月になむわたり給ひける。御んしつらひ、ことの有様おとらずして、渡したてまつり給ふ。姫君の御ためを思せば、大方の作法も、けじめこよなからず、いとものものしくてもてなさせ給へり。」
――明石の御方は、みなさまのお移りが落ち着いた頃に、数の内に入らぬ自分は、いつということなく目立たぬように移りましょうと、思われて、十月になってからお移りになりました。源氏はお部屋の準備万端、他の方々に劣らぬようにして、お呼びになりました。これも明石姫君の将来をお考えになってのことで、明石の御方についての一般の儀式も他の方々とあまり区別をつけずに、たいそう重々しく待遇されました。――

【乙女(おとめ)】の巻】終わり。

この巻では、源氏の二条院時代の人物を多く登場させて、次の六条院の物語への準備をしています。六条院の広大さを、丁寧に説明しつつ、これからの物語の複雑・雄大さを暗示します。

ではまた。