永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(359)

2009年04月17日 | Weblog
09.4/17   359回

三十一帖【真木柱(まきばしら)の巻】 その(30)

 源氏は、やはり我慢がおできになれず玉鬘にお便りをお書きになります。あまり人の目についてはとお思いになって、たいそう真面目風に、

「おぼつかなき月日もかさなりぬるを、思はずなる御もてなしとうらみ聞こゆるも、御こころひとつにのみはあるまじう聞き侍れば、ことなるついでならでは、対面の難からむを、口惜しく思ひ給ふる」
――久しくお逢いできぬ月日が積もりましたのを、思いの外のお仕打ちとお恨みしましたところで、あなたのご一存でもないように伺いますので、特別の折でもなければお目にもかかれまいと残念におもいます――

 などと、親らしくお書きになって、さらに「あなたを一体どんな人が手に入れたのでしょう、そんなに厳しく守らなくても…、妬ましくなります」と書き添えてあります。

 髭黒の大将もご覧になって、苦笑されながら、

「女は、まことの親の御あたりにも、たはやすくうち渡り見え奉り給はむこと、ついでなくてあるべき事にあらず。まして何ぞこの大臣の、折々思ひ放たずうらみ言はし給ふ」
――女というものは、実の親の所にも、何かの用事がなくては、めったに行って逢うものではない。まして親でもない源氏が、なんで折々諦めきれずに恨み事をいわれるのか――

 と、つぶやいていますのを、玉鬘は憎らしいと聞いていらっしゃる。

「『御返り、ここにはえ聞こえじ』と書きにくく思いたれば、『まろ聞こえむ』とかはるもかたはらいたしや」
――「(玉鬘が)ご返事は私には書けません」と書きしぶっておられますと、髭黒の大将が「私が書こう」と、代筆なさるのも、全く変な話ですこと――

お返事は、「お子様の数にも数えられない鴨の子のような玉鬘を、いまさらどちらへお返しすべきでしょうか」とお書きになって、さらに、

「よろしからぬ御気色におどろきて。すきずきしや。」
――あなた様のご機嫌の悪いご様子に驚きまして、風流めかして恐縮でございますが――

と、ありました。

◆写真:手紙

ではまた。