礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『独学の冒険』に対する尾崎光弘さんの書評

2017-03-31 00:01:46 | コラムと名言

◎『独学の冒険』に対する尾崎光弘さんの書評

 数日前、敬愛する尾崎光弘さんから、拙著『独学の冒険』(批評社、二〇一五年月)に対する書評をいただいた。正確に言えば、拙著刊行当時に尾崎さんが書かれた書評について、ほんの数日前、当ブログに転載させていただくお許しを得た。
 というわけで、本日は、この書評を紹介したいと思う。タイトルはなし。

 そういえば自分も『独学』者の一人かもしれないと思い、自分に足りないのは何かを探そうと一読。三つ発見。①学問研究の動機の切実さ、②思考の柔軟さ、③アクション力。どれも欠如していた半端な「独学」者は簡単に粉碎され、一瞬、もうやめてしまおうかと思ったほどです。特に①を反省することが切実でした。たとえば、喜寿にして初めて本を出した郷土史家・清水文弥。土俗学者・中山太郎の私情に込められた「学者魂」。さらに「ふだん記」運動の異色の思想家・橋本義夫の、「人間には書かねばならないことがある」という歴史的使命感からくる言葉。三人の衝撃は大きかった。まとめていえば、学問研究への執念。
 私にもまだ首の皮一枚の執念が残っていると見えて再読は必然でした。そうすると、これまで愛読してきた柳田国男をはじめとする大独学者たちの、だれかれにも、こちらが畏怖するほどの執念が底流していることが見えてきました。みずからを「資料収集家」と称する佐々木喜善にさえ韜晦する執念を、です。
 本書は、いかにも入門風を装った「独学の冒険」ですが、この冒険には「執念」あるいは「気迫」が必然だったこと、しかもそれは個々の時代を生きる歴史的な実存から生まれ養われるものだと学ぶことができました。「執念」は時代を生きる思想だったのです。いってみれば、「独学者魂の研究」の一書。
 私のような半端な独学者は意外にたくさん潜伏している気がしますが、本書は独学志望者を含めて我々への朗報です。いつかは役に立つであろうと捨てないでおいた、『日本人の自伝』全25巻。埃をかぶった姿がにわかに輝いて見えてきました。

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ウソも真実も、さして多くを語りはしない

2017-03-30 01:48:22 | コラムと名言

◎ウソも真実も、さして多くを語りはしない

 一昨日のコラムで、映画『理由 Just Cause』について論じた。本日は、その続きである。一昨日は、この映画のテーマは、「夫婦の信頼関係」だと述べたが、この映画には、もうひとつ、「ウソ」という重要なテーマがある。
 主人公のポール・アームストロング(ショーン・コネリー)に対し、妻のローリー(ケイト・キャプショー)は、ひとつ、重大な隠し事をしていた。結果的に、このことが、夫婦および娘のケイティ(スカーレット・ヨハンソン)を、生命の危機に陥れることになるのである。
 死刑判決を受けたボビー・アール(ブレア・アンダーウッド)の「冤罪」を晴らさんと、フロリダで再調査を始めたポールは、現地の保安官タニー・ブラウン(ローレンス・フィッシュバーン)から、意外なことを聞かされる。妻のローリーが、かつて検事として、ボビーを起訴したことがあるというのである。
 ポールは、妻に、それが本当かどうかを確認する。すると妻は、結婚前に話しているという。即座にポールは言う、「ウソだ」。さらに、なぜ、この再調査に着手する前に、そのことを伝えなかったのかと、妻を追及する。
 刑務所を訪れたポールに対し、ボビー・アールは、「真犯人は別にいる」と伝える。同じ刑務所にいるブレア・サリヴァン(エド・ハリス)が真犯人だというのである。
 続いてポールは、ブレア・サリヴァンと面会する。この男はタダモノではなかった。サリヴァンは、「あなたのことが知りたい」と言って、ポールにいくつかの質問をする。そのうち、「子どもはいるか」、「不眠症か」、「死はこわいか」という三つの質問に対し、ポールはウソをつく。そのたびごとに、サリヴァンは、ポールのウソを見抜く。
 そして、激しくポールを非難する、「ペテロも三度、イエスを否定した。死刑囚にウソをつくとは、恥を知れ」。この非難に対して、ポールは静に答える、「ウソも真実も、さして多くを語りはしない」。
 サリヴァンは、意外にも、「OK」と言いながら、ポールの言葉に、深くうなずく。
 帰り際、サリヴァンから、重要な情報を得たポールは、その足で、ブラウン保安官の自宅へ向かう。
 保安官の自宅では、その娘が誰かと電話をしている、「彼はあなたにウソをついているのよ。ゆうべ、彼女と居たもの」。こういう、どうでもよい会話にも、「ウソ」という言葉が出てくる。
 ネタバレになるので、すべては言わないが、このあとの展開でも、ふたりの人物がついた大きな「ウソ」が明らかになる。

 というようなことを、くどくど書いたのは、例の「森友学園問題」が解決していないからである。この問題が浮上して以来、誰が「本当のこと」を言っているのか、サッパリわからない状態が、二か月近く、続いている。
 関係者のほとんどが、多かれ少なかれ「ウソ」をついている。そして、そのことが、さして不思議とも思われない状態が、この間、ずっと続いている。これ自体が、何とも不思議なことに思えてならない。
 いったい、この事態は、どういう形で、決着するのであろうか。

*このブログの人気記事 2017・3・30(1位・10位に珍しいものが入っています)

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夜郎自大・無知蒙昧・唯我独尊・油断大敵

2017-03-29 03:16:16 | コラムと名言

◎夜郎自大・無知蒙昧・唯我独尊・油断大敵

 谷学謙・劉鴻麟編訳『漢日成語諺語対訳』(吉林人民出版社、一九八一)から、「日語四字成語漢訳」のところを紹介している。本日は、その最終回で、「む」の部から、「わ」の部までを紹介する。中国語の「簡体字」は、入力の都合上、日本で使用されている漢字に直してある。

 
無知蒙昧   愚昧無知
無学文盲   不識字。文盲。
無色透明   無色透明。
夢幻泡影   夢幻泡影。
無味乾燥   枯燥無味。
無念無想   ①万念俱空。②懊悔。悔恨。
 
明鏡止水   明鏡止水。没有私欲。
明窓浄机   窓明机浄
面向不背   表裏一様、美麗無瑕。〔テンはママ〕
明眸皓歯   明眸皓歯。
面従腹背   要両面手法。陽奉陰違。
 
門戸開放   門戸開放
門外不出   不出門外。
 
夜郎自大   夜郎自大。高傲。
 
唯我独尊   唯我独尊。
勇往邁進   勇往直前。
優柔不断   優柔寡断。
優勝劣敗   優勝劣敗。
悠悠閑閑   悠悠自得。
油断大敵   切勿麻痺大意。
 
余韻嫋嫋   余音裊裊。
用意周到   準備周到。
余裕綽々   従容不迫。
羊頭狗肉   (挂)羊頭(売)狗肉。
 
利害得失   利害得失。
流汗淋漓   大汗淋漓。汗流浹背。
離合集散   離合聚散。
臨機応変   随機応変。
龍頭陀尾   虎頭蛇尾。
流言飛語   流言蜚語。
粒粒辛苦   粒粒皆辛苦。
 
厲声一番   大喝一声。
連戦連勝   連戦皆捷。連戦連勝。
連鎖反応   連鎖反応。
連帯責任   共同負責。
 
老少不定   黄泉路上無老少。
論功行賞   論功行賞。
 
和気藹藹   非常和睦。
和洋折衷   日西合璧。日西折衷。

*このブログの人気記事 2017・3・29(5位と8位以下を除き、すべてきわめてレア)

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映画『理由』(1995)のテーマは夫婦の信頼関係

2017-03-28 06:05:31 | コラムと名言

◎映画『理由』(1995)のテーマは夫婦の信頼関係

 数日前に、ビデオで『理由 Just Cause』(ワーナーブラザーズ、一九九五)という映画を鑑賞した。概略、こんな話である。

①ハーバード大学法学部教授を務めるポール・アームストロング(ショーン・コネリー)のところに、まったく面識のない老婦人が尋ねてくる。この婦人は、孫であるボビー・アール(ブレア・アンダーウッド)の「冤罪」を晴らさんとし、ポールに再調査を依頼するために、わざわざ、フロリダからやってきたのだった。
②ポールは、この二十五年間、弁護士としての活動をしていないと言って、この依頼を断ろうとするが、婦人はなかなかあきらめない。
③ポールは、妻のローリー(ケイト・キャプショー)とも相談した上で、婦人からの依頼を引き受けることにした。その後、フロリダに赴いて、事件の再調査に着手する。
④妻のローリーは、ボビー・アールという人物を知っていた。かつて検事を務めていたころ、別の事件で、ボビーを起訴したことがあったのだ。しかし、ローリーは、夫にこの事実を隠したまま、ボビーの「冤罪」を晴らすよう、夫にすすめたのであった。
⑤ポール・アームストロングは、きわめて困難な状況の中で、精力的に調査をおこない、ついに、ボビーの「冤罪」を晴らすことに成功する。
⑥しかし、その直後、事態は急展開する。まったく予期しなかった形で、アームストロング夫妻、そして、その娘ケイティ(スカーレット・ヨハンソン)に、生命の危機が迫るのである。この危機は、実は、妻のローリーが、かつて、ボビーを起訴したことに由来するものであった。
⑦アームストロング一家に生じた生命の危機は、夫婦の信頼関係に生じた危機でもあった。しかし夫婦は、一家に生じた生命の危機を乗り越え、同時に、夫婦の信頼関係に生じた危機をも乗り越える。

 この映画を鑑賞しながら私は、日本のある高名な夫婦に生じた「危機」を連想しないわけにはいかなかった。面識のなかった人物Kからの強引な依頼を、夫人Aが引き受けることになる。夫人が、この依頼を引き受け、実際に動いてしまったことから、その夫Sに、思いもかけない形で「政治的生命の危機」が訪れる。想像するに、夫のこの危機は、「夫婦の信頼関係の危機」という一面も持っていたのではなかったか。

 映画の最後で、ポール・アームストロングは、保安官のタニー・ブラウン(ローレンス・フィッシュバーン)から、「これから大丈夫か」と尋ねられている。場面設定からして、保安官は、「あなたたちの夫婦の信頼関係は、これから大丈夫なのか」と尋ねていると判断できる。この質問に対し、ポールは、「心配ない」と答える。この映画で、最も印象に残るシーンであった。

*このブログの人気記事 2017・3・28(1・4・10位にきわめて珍しいものが)

 

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本日は「このブログの人気記事」のみ

2017-03-27 19:37:12 | コラムと名言

◎本日は「このブログの人気記事」のみ

 本日は、都合により、「このブログの人気記事」のみ。

*このブログの人気記事 2017・3・27(4・8位に珍しいものが入っています)

 

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