◎高田保馬訳・グロッパリ『社会学綱要』について
坂上信夫の『土地争奪史論』から、高田保馬の話に跳んでしまうが、ご了解いただきたい。高田保馬の初期の著作(翻訳)に、グロッパリ原著・高田保馬訳『社会学綱要』(有斐閣書房、一九一三)がある。グロッパリは、イタリアの社会学者である。高田は、それまでイタリア語を学んだことはなかったが、この本を読むために、イタリア語を学び、読破すると同時に翻訳を完成させたと聞いたことがある。
国立国会図書館のデジタルコレクションで、この本を閲覧すると、本扉に「経済学資料第三冊」とある。
この「経済学資料」というのは、経済学者の河上肇が、当時、編集していた叢書で、第一冊はフェター原著・河上肇評釈『物財の価値』(有斐閣書房、一九一一)、第二冊がファイト著・河上肇抄訳『唯心的個人主義』(有斐閣書房、一九一三)であった。そして、その第三冊に、高田保馬の翻訳書『社会学綱要』が選ばれたということである。
その『社会学綱要』の巻頭に、「発行の趣旨」という文章がある。内容からして、「経済学資料」という叢書の発行趣旨である。本日は、これを紹介してみよう。改行は原文のまま。
発行の趣旨 河上 肇
一、本叢書は一般社会科学殊に経済学に関する古今名家の著述
論説を紹介するを目的とするものである。
一、 紹介の方法は、或は翻訳に依り、或は抄録に止め、或は解説を以
てし、或は評論を加ふる等、時の便宜に依りて必しも一様にせ
ぬ積りである。
一、本叢書には時として自分以外の人の労作を編入することもあるであらう。
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