今晩は、「待つ」を考えたいと思います。今の時代は、「待てない時代」だと言われて、久しいです。会社でも、役所でも、大学でさえ、短期的な成果が求められる時代です。大学生が就職しても、3年以内に3分の1の人が辞めてしまう状況が20年近く続いているようです(http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html)。企業がブラック化しているからかもしれません。基督教独立学園高校の校長でした、安積力也さんが、教育テレビの番組「待てない時代にどう育てるか~人間教育を支えるもの」(日曜朝5時~6時)に出演したのが、もう5年前になるそうです。
「待てない」のは、なぜなんでしょうか?
先日、NHKの「switch interview 達人達」で、京都大学総長の山際壽一さんが、そのことを明確に話されていて、とてもいい学びが出来ました。皆さんとシェアしたいと思いました。横道好きの私。山際壽一さんをWikipediaで調べましたら、国立第1中学校のご出身とか。私は、国立第3中学校ですが、小学校の時にリトルリーグ「サンダース」で一緒に野球をやっていて、中学になってからも、同じ学習塾「知望塾」で学んだ宇梶剛士が、国立一中でしたから、なんか親近感が湧きましたね。
その山極さんによると、「待つことは、一番人間らしいこと」だと言うんですね。何故だと思いますか? なぜなら「人だけが待つことができるから」なんですね。山極壽一さんは、京都大学霊長類研究所などで、ゴリラを研究されてきた方ですから、そう言えるのだと思います。山際壽一さんは、待つことができないことは、「人間的な本質をどんどん失いかけているんじゃぁないか?」と、さっきの番組で嘆いていました。
「待つ」と言うのはどういうことなんでしょうか? 山際壽一さんによれば、「時間を、現実の価値観ではない、未来の価値観に賭けて、使う」ことだと言います。そして、言葉を重ねます。「短期的視点でみれば、それはすごく無駄に見える。でもそれをやり通すことが、ブレイクスルーに繋がったり、イノベーションに繋がったりする…それを人間はずっとやってきた」と。
非常に大事な指摘ですね。私なども、日ごろ子どもの心理臨床をしてますでしょ。「待つこと」が仕事です。子どもは時に、短期間で劇的に変わることが確かにあります。しかし、それは「奇跡」であって、そうそう「奇跡」は起きない訳ですね。子どもがゆっくり成長するのを、「待つ」ことが、ですから、私のほとんどすべての仕事になります。ただ、私の場合、ただ単に待つのではなく、あるいは、「寝て待て」でもなく、「遊びながら、待つ」パターンですけれどもね。
私に言わせたら、「待つ」というのは、「信頼」と同義語ですね。どんなに「悪い」と言われている子どもでは、「必ず発達する」と信頼すればこそ、「待つ」ことができます。また、「信頼」の話でゴメンナサイね。でも、真実がそうなっている訳ですね。「信頼があればあるほど、待てる」。その昔、やはり、基督教独立学園で、習字を教えていた「100歳の高校教師」こと、桝本梅子先生が、医学部志望で浪人になった、今は北大法学部教授の真壁仁さんに、「3年や、4年、何ですか、本当に医者になりたかったら、何でもありません」と話していたのを思い出しますね。
私どもも、その「信頼」を、日々培って生きたいものですね。