新・本と映像の森 262 呉智英『インテリ大戦争』JICC出版局、1982年
255ページ、定価980円
すごく面白い論争集です。ただし、むかしの本なので手に入るかどうか知りません。
第Ⅰ部の「悪書槍玉」で片っ端から槍衾にしている。
竹村健一 悪書以前
石子順 代々木の森の蝙蝠は
桐山靖雄 バチあたりな粗雑さ
倉前盛通 三流の論理
五木寛之 いいことづくめ
清水幾太郎 明治から疑え
天声人語 教養スノッブ
岸田秀 現代ヤミ市
山本七平 イエスがわからない
渡部昇一 エホン読みの原典知らず
津村喬 全共闘の恥部
日高六郎 脆弱思想を考える
ほかの批判されている主な人は、以下のようです。
宮城音弥
司馬遼太郎
樋口清之
野間宏
いちばんおもしろいところは、石子順さん批判と津村喬vs稲葉三千夫のマンガ「論争」。熟読すべきだと思いました。マンガを読んだことのない人は、この瞬間からでも遅くはないから、読んで欲しい。
「名著の教え」もおもしろい。「史記」「世説新語」「論語」「荘子」
むしろ、こっちの古書に関連した話の方が、呉さんの論理はさえている。また機会があれば紹介したい。
なお呉智英さんの後の実像は、小林やすのりさんのマンガ『ゴーマニズム宣言 9』(双葉社、1996年)で生き生きと描かれている。
小林やすのりさんのマンガなど読まないという人はいると思うが、小林やすのりさんは時期によってすごく振り幅の大きい人で、あっち側にいる時もあるけど、こっち側に来ることもある、そういう複雑な人だと思います。
ところで、呉さんのたくさんのステキな教訓の1つ。
「バカが教科書の国家主義的反動化を進めようとしている時、それに抵抗するのに、
別のバカをのさばらせなっければいけないとは。“バカを以てバカを制する”のは1つの有力な戦術であるが、自分がバカに伝染しないだけの心がまえは忘れてはならない。」(p
83~84)。
もちろん、これは80年代の話です。