新・本と映像の森 296 泊次郎『プレートテクニクスの拒絶と受容 新装版』東京大学出版会、2017年
副題「戦後日本の地球科学史」、2008年旧版、A5版、258ページ、定価本体3900円。
ボクは高校の頃から地質学に興味があって1960年代から1970年代のとくに地団研・井尻正二さんの文献をよく読んだ。いまでも井尻正二さんの本は10冊くらいあるだろうか。
ところがその井尻正二さんが地団研のプレート・テクニクス反対の指導者で、地団研が1980年代なかばまで方向転換できない原因になったのだ。
井尻正二さん自体の分析は別にやります。
とにかく「井尻正二さん」「地団研(地学団体研究会)」「戦後日本の地球科学史」を見すえた、ただ1つだけの本だと思います。
プレート・テクニクス(PT)を日本列島で理解するひとつの鍵は「付加体」という概念であるように思います。
固定した場所での「地向斜造山」は、けっきょく「仮説」に終わったわけっですね。
本来、この本は井尻正二さん自身か地団研自身が書くべき本だと思います。でも、口をぬぐって黙っているのか、と思います。
なぜ井尻正二さんや地団研は「固定説」に固定されてしまったのでしょうか。
日本列島PT形成説・付加体説にたったいい本のひとつが「新・本と映像の森 285」で紹介した「平朝彦『日本列島の誕生』岩波新書、1990年」です。
以下、再掲。
「新・本と映像の森 285 平朝彦『日本列島の誕生』岩波新書、1990年
たいらあさひこ、岩波書店、226ページ、定価650円。
著者は次のように書く地質学者です。
「私は、とくに西南日本の太平洋側に分布する四万十帯の研究を通じて、日本列島の地史を書き改めなければならないことに気がつきました。その研究はやがて深海底の研究へと発展しました。
以前の地史は、浅い海に産する化石と地殻の上下運動を重視する、いわば静的で、地域的な考えから成り立っていました。新しい日本列島の地史は、深海の化石を基に組み立てられ、プレートの水平運動を考えたダイナミックで地球的視野にたった考え方によって根本から書き換えられたのです。その考えの基本は・・・・・・付加作用で日本列島の土台ができ上がったということです。
この新しい考え方は、日本列島に分布するさまざまな地層や岩石の分布、地質構造の新しいデータを見事に説明することができます。」(pⅲ~ⅳ)
以下、主なおもしろい報告。
○南海トラフ水深4800mにある火山岩の起源
○タービダイト層、乱泥流の謎
○四万十帯はどうしてできたか。下ほど地層が新しい謎
○放散虫化石・フズリナ化石が語る
○黒瀬川構造帯・飛騨外縁帯はどこから来たか
○海山の沈み込みとサンゴ礁・石灰岩
○日本海の拡大と日本列島の誕生と折れ曲がり
これはひじょうにおもしろいけど、1990年、つまり30年弱前の報告です。いま最前線報告を聞きたいです。
このプレート・テクニクスと日本列島に関しては、また別書を紹介します。」