新・本と映像の森 299 恩田陸「新・D坂の殺人事件」(『江戸川乱歩に愛をこめて』光文社文庫、2011年)
ミステリー文学資料館編、371ページ、定価本体686円。
恩田陸さんの江戸川乱歩「D坂の殺人事件」(1925年)へのオマージュ。
ただし「D坂の殺人事件」は密室だったが、ここでは大都会の雑踏という「密室」で殺人はおきる。場所は渋谷のD坂(道玄坂)。
その場に居合わせた主人公の男と関根老人の会話で物語は進行する。2人と若者たちとの対比がおもしろい。
佳品だと思う。
この江戸川乱歩「D坂の殺人事件」は江戸川乱歩が本屋を営んでいた池袋の団子坂であって、渋谷道玄坂ではない。
そのことは恩田陸さんも別の場所で読者に謝罪している。
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ビルを氷山に例える関根老人の感性もおもしろい。
「堕天使 ルシフェル」がストーリイのキイワードになっている。もちろん若者たちは堕天使の絶好の餌食になる。
ボクは関根老人は「堕天使 ルシフェル」なのではないかと妄想した。