本と映像の森 210 福岡伸一さん著『動的平衡 2 ー生命は自由になれるのかー 』木楽舎、2011年11月初版第1刷、254ページ、定価1524円+消費税=1600円
遺伝子が生命の全ての現象を決めるという「セントラルドグマ」批判であり、遺伝子によって一義的に決まるという、固定的・一面的な生命像の批判です。
単なる論理学ではなく、生命や芸術をリアルに感じながら論じる生命論なので、空中に浮かずに、説得力があると思います。小さい頃の昆虫マニアである筆者は、一匹いっぴきの虫たちへの愛情に満ちています。
本論で言うと、「常に分解するので維持される」「生物の多様性が動的平衡を支えている」「遺伝子は生命の楽譜に過ぎない」…。
この本を読んだ則子さんとの対話で浮かび上がったこと。
生命の外界からの栄養の摂取と分解と吸収は、人間が外界から感覚と言語で情報を吸収して、それを分解して吸収するのと、極めてよく似ている。
生物学的人間がタンパク質を食べてもそのまま胎内に吸収するのではなくて、いったんアミノ酸に分解して吸収するように、すべての情報もそのままではなくて人間の心の中ですべて分解されて、一つ一つがその正しさを吟味しないと、その人の心の「本当の栄養」にはならないと思います。
同じように、一つの集団・組織でも、外界からのニュース・論理・情報を、その集団・組織で、一つひとつ詳しく吟味して、その集団・組織としてその正否を確認しないと、その集団の知的財産にはなりません。
個人であれ、集団であれ、「鵜呑み」は、いけません。
生物学的に言うと、分解せず「鵜呑み」にした細菌などは、その人の体内で「異物」として認識されて、病気の元になります。人間の心や集団でも同じではないでしょうか。
つまり、① 生物の動的平衡(代謝) ② 人間個人の外界情報の処理過程 ③ 人間集団の決定過程、の3つには、基本的同一性があるという発見でした。あれ?前に、こういうことを発見した人いました?