本と映像の森 236 朗読CD、宮沢賢治さん『銀河鉄道の夜』岸田今日子さん
いつもは城北図書館へ行って、クラシックの音楽CDの棚しか探さないのですが、少し広範囲に探索したら、日本文学の朗読のCDコーナーがありました。
しかも、大好きな「銀河鉄道の夜」!
岸田今日子さんの朗読です。うわあ!衝動的に借りて、すぐ聞きました。
とてもいいです。ちゃんと、音楽入りで。
読むのとは違って、物語を精密に聞いていくと、印象が違います。つまり、カンパネルラに恋しているジョバンニの「嫉妬の物語」のようです。
ジョバンニは「みんなのさいわいのため」と言っているわりには、自分とカンパネルラの間を邪魔するザネリに心をたぎらせ、自分と銀河鉄道の旅に出たカンパネルラとの間を邪魔する、少女かおるこに嫉妬するのですね。
もちろん、少年ザネリは、カンパネルラとジョバンニの仲に「嫉妬」して意地悪をしているだけなのですが、ジョバンニは、それに気づかないのでです。それにジョバンニが気がつけば、もっとおおらかにザネリに対処できて、カンパネルラの水死の悲劇につながらなかったのでは?とも思います。
それにしても、親友(というより恋友)ジョバンニのイライラ・思いに答えられないカンパネルラが、なんだか情けないのですが、そのカンパネルラを水死させる、という作者の意図が、いまいち、わかりません。
そうか!ジョバンニの秘かな期待に背いたカンパネルラは、水死の運命になるということかな?
だとすると、カンパネルラを殺したのは、ジョバンニの秘かな意志でしょうか?
「カンパネルラ殺人事件」ですか?
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「銀河鉄道の夜」の最初と最後に出てくる、「銀河」と「牛乳」の意味が、ぼくは分かったように思います。ここには、まだ書けませんが、いつか「銀河鉄道の夜 解決編」を書きたいです。
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残念なのは、朗読が賢治さんの最終稿によるのではなくて、第3版の、プルカネルラ博士の「実験」によることです。これでは、ジョバンニは「博士」の指導で生きていくことになってしまいます。ジョバンニの「切符」の、親友カンパネルラと別れて、どこまでも一人で行くジョバンニの「孤独さ」が薄まってしまいます。
ジョバンニは、自立した、自由なジョバンニでなければなりません。