雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

厳しいトコロだった

2016-07-18 21:19:34 | 初めに、タイトルの話
「わたし、羊が好きなの」
「羊に囲まれて写真を撮りたい」



その少女はただでさえ丸くて大きな瞳を見開いて、
僕にそう言いました。
とある晴れた日の午後。東京のオフィスビルの会議室。
天才少女詩人と謳われた17才の「螢」と、
彼女と僕が信頼する美人凄腕デザイナーのちーさんと3人で、
次にリリースしようとしていた彼女の作品の
「ジャケット写真」の打ち合わせをしていた時のことです。



「(  ゚ ▽ ゚ ;)エッ!!ひ、ひつじ!?
マジか!?
そう.....」



僕は少女の発言に少々の意外性を感じながら、
頭の中で、
その為に必要な経費をチロチロ.....っと計算していました。
け、けっこーカネかかりそーだな......これ......( ̄ー ̄; ......



「ほ、ほ、、ほたる様ぁ、、、えっと、エェーーーット。。
そのヒツジさんというのわぁぁ、
タアーーーーーックさんのヒツジさんですよね?
何十頭って感じの?」



「そう。何百頭って感じ」



「な!?ナンビャク!?ってか!? (゚ロ゚ノ)ノヒイィィィ!!!!」



「多ければ、多いいほどイイ」



「ほ、ほぉーーたるさま。。
エォーットおぉ、、
千葉のあたりにですね、、
なんとも良い雰囲気の牧場があってですねぇ、、
そこで羊の毛刈りショー!ジャジャジャジャァァーーン!
なーーーーんてっ!
ショーなんかもやっててですね、ええ。
そこなんかトォーーーーーッテモ、オススメなんですけど。
ええ。ええ。
羊ショーの隣でわジンギスカン食べれるレストランがあったりしてですね。
ええ。
さっきまで見てた羊ちゃうの!?これ!?
みたいな、
なんともクールなレイアウトなんすけど。ええ。
予算的にも。ええ。。クールで。ええ。A´ε`;)゚・゚アセアセ...」



「ふぅーーん。。千葉。。」



「!?σ( ̄∇ ̄;)??ち、千葉?じゃだめ?なの?」



「ううん。。でも、広いところがイイの」



「ち、千葉も広いよよよーーん!ヾ( ̄o ̄;)
なんてったってボーソーゾクだっているんだから。
広いよぉぉーーーーん。。」



「うん。。」



「お!?アッ!?
じゃ!じゃさ、ホッカイドーーーッ!てどう!?北海道!?
でっかいどぉぉーーーーっ!って!ね!ホッカイドー!
ど? ど?ヾ( ̄∇ ̄;)
ね!?
ちーさん!いいとこだよね!?ほっかいどー!ね?
ちーさんもそー思うよね!?ね!?
デザイナーとして。ね!
そーだよね!(;゜◆゜)σ スガルオモイ」



「......」



「ん!?? どなの? ホッカイドー!
そーしよーよ。ホタル!
ちーさんもヘアメイクだとかスタイリストだとか連れてくの大変だし。
俺もさ、ビデオクルーだけでもたぁぁーーーくさんいるし。
千葉か北海道あたりがイインじゃね?どよ!?ね?
二人とも。ね!ヾ(°∇°*) 」



「わたし......」



「ん!?ナニ?螢?」



「わたし、モンゴルがいい」



「ううぇウェウェェウェッッウェエエーーー!?Σ( ̄Д ̄lll)☆※▷▪️♩×!!
だ!?だ、、
か、海外わ、、ち、ちょっと、お、お金、、、じゃなく!
お時間が!
お時間!がさ、かかるからさ!
あ、あまりオススメで、できないなぁぁ。。
ほたるぅぅ。大変だよぉぉ。。
スタッフ全員のスケジュール難しいよぉぉ、、きっとぉ。。
ええ。ええ。
大変だよぉぉ。。
お化けだって出ちゃうかもよぉぉーー。
トイレも壊れてるかもよぉぉ。。
大変だよぉぉ。。( ̄▼ ̄|||) アハハハ...」



「......」



「ほ!? ホタル? ん? ね!
大変だよぉぉ。。
ね!
ちーさん!
そーそー!!ちーさん!ね!
ちーさんもそー思うよね!?デザイナーとして!ね!
国内がいいよね!ね!?(*゚∀゚)/」



「モンゴルいいわね」



「(☉∀☉)ちーーーーん。。



———————————僕らはその後、
モンゴルの大平原に一週間寝泊まりして、
螢初のDVD作品を撮りに行ったのですが......
まぁ、十年以上も前の当時、
まだ経済発展前だったモンゴルでの撮影は色々と大変なことばかりでした。
首都のウランバートルには、
暖を取るために道端のマンホールの中で暮らす人々もまだ沢山いました。
でも、なんだか、螢だけでなく、
その時同行した全てのスタッフさん達含めて、
とても良い経験となった撮影だったと思います。

遊牧民のゲルを拠点にさせてもらって、
色々な絵を撮ったりもしましたが。
肝心の「羊」はというと、
ただひたすらに続く広大な大平原では、
その存在は人々の命に等しく、大切に扱われていました。
遊牧民の人々はそんな羊がもたらす多くの恵みに寄り添って生きていました。
なので、彼らは、
普段の生活ではそう簡単に羊を屠る(ほふる)様なことはしません。
生きるための、必要最低限分だけです。
それでも彼らは、
しばらく滞在する僕ら客人をもてなす為だけに、羊さんを一頭、
僕らの目前で捧げてくれました。

彼らにとって、僕らへの最高のおもてなしです。

大空の下、純粋で透明な祈りを捧げられ、
屠られ(ほふられ)た羊さんは、
僕らには神様のように神々しく見えて。
そして、羊だけでなく、その命の先に見える全ての存在、
自然、地球、月、太陽、宇宙の恵みを感じました。
仕組みを感じました。

その肉は人々の体を創り、乳は勿論、飲み物であり、
お茶に混ぜれば時に甘いミルクティーに。
血は薬や虫除け、魔除けの塗り物ともなり。
骨や角はゲル......「家」を支えるパーツとなり。
獲物を捕らえる刃物や道具ともなり。
生活を助ける犬の餌にも、
牙を研ぐためにカジらせる餌ともなり。
そして毛皮は、家の断熱材や敷物となり、服ともなり......

何一つ余ることのない命の力に、
何一つ余すことのない人々の知恵と感謝に、
僕らは心底驚嘆し、ココロ、ひれ伏しました。

羊は、命です。

厳しき大地を生きる生命の代弁者です。

聖書に記されているキリスト教における「羊」の表現は、
だから、
僕個人としてはそのまま捉えてはいません。



......汝らは羊で、キリストや神父は羊飼いである......



旧約聖書<詩篇23篇1-2節>には、
ダビデ王が語ったこととして、羊を自分に、
恵み深い羊飼いを神に例えたこんな言葉が記されています。



====================================
「主(神=ヤハウェ。新訳ではイエス・キリストに転化)は私の羊飼い。
私は、乏しいことがありません。
主は私を緑の牧場に伏させ、いこいの水のほとりに伴われます」

—————羊は牧草を食べて生きています。
牧者である羊飼いは、羊の群れを牧草と水のある所に連れて行き、
必要な物を十分に与え、羊たちを育てます。
人間が生きていくためにも多くの目に見える物と目に見えないものとが必要です。
良い牧者は羊飼いであり、その羊飼いである主、イエス・キリストは、
私たち羊に必要なものを十分与え、
私たちを養い育ててくださるのです———————
====================================



モンゴルの大地では、
羊さんは「動物としての人間の体そのもの」の様に僕には思えます。
空腹を思い、生きるために利のあることを反射的に考えてしまう
「動物脳そのもの」「生命そのもの」の様にも思えます。
僕らの中にはそんな生存の為の本能と、
それらを許し、制御もする理性があって、
そのさらに奥深くには魂があります。

主とは、キリストとは、牧師とは......
全ての人々の中にあるそんな魂や理性や霊性のこと。
全ての人の中に宿り、気付きさえすれば、既に自らの内にあるもの。
だから神と人は、牧師と羊......という、
そんな「分離」された関係ではなく。
ましてや、
動物としての羊と人とは全く違うように僕には思えるのです。

そんな分離された関係で神と人とを捉えている限り、
争いも、紛争も、戦争も、テロも、
いつまでも消えないようにも思えます。

羊を囲む「檻」とは、
組織や会社、
時に国や資本主義、通貨経済という様な
「生まれ落ちた世界そのもの」
の様にも思え、

誰かが作り上げた社会概念のコトの様にも思える時があります。
そう思うと、
人がその中で飼われている羊の様に思える時も......ありますが、
そういう時にはきっと、確かに、誰かに?何かに?羊飼いに......
飼われているのかもしれません。



でも、



だから、



僕らは羊ではありません。



ましてや、



羊飼いでもありません。



屠られた羊の喉元に素早く差し出されるバケツ。
そのバケツには羊の真っ赤な血が落ちていきます。
遊牧民の彼らは、この血すら、無駄に扱いません。
先に記したようないろいろな用途があります。
とても大切なものです。

それに気付かされる時、羊の血は、
途端に神々しいものに見えてきて。
その死には限りない感謝の気持ちが湧いてきます。
気持ちワリィィ......なんて、
とてもじゃないですが言っていられません。

あなたの命で、僕の命が繋がれます。。

モンゴルから帰って、
螢とちーさんと僕とで一生懸命に小さな写真集を作りました。
「マーブルビニィル」というDVD作品の
初回限定パッケージにのみ入れる特典写真集。
数多くの写真からバケツの写真を抜くことは僕達にはできませんでした。











あの、東日本大震災の後、
2012年の7月14日から記し出したこのブログ。
記し始めるにあたっては幾つかの明確な理由がありましたが、
それは一部、今も変わっていません。

一回目の記事に記した「ブログタイトルの由来」となっている少女の話は、
一年ごとのマイルストーンとして記す約束を読者としていますので、
今日の記事はその約束の記事となります。
4回目のマイルストーンですが、悪しからず。
(カテゴリーメニューの「初めに、タイトルの話」にまとめています)

写真集の中には螢の紡いだ言葉を手書きでレイアウトしましたが、
その言葉も、
今回のマイルストーンとしてココにも入れて置こうかと思います。
今見ても、なかなか......
彼女の感性にはいつも笑みがこぼれてしまいます(^^)
彼女はこの後、ヒマラヤにほど近い国の学校へと、留学を決意しました。



————厳しいトコロだった
人の歩く足の重みがちがってみえた

————モンゴルは物さしではかったような
まっすぐな線はほとんど見えなかった
たてものも 車も バスをまつ人も ひこうきぐもも
人のえがおも
私は それがけっこうすきになった

————厳しいトコロだった
生きるということが すごくシンプルにみえた
かいだことのないニオイがたくさんあった
日本でみつけられなかったものが たしかにそこにあった
すべての物に人の体温がかんじられた




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8 コメント

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日清チキンラーメン (プリリンねーさん)
2016-07-19 08:09:51
初めて出会った時に

日清のチキンラーメンは、本当においしかった。

と言っていたことを思い出しました。


私は、ビールとチキンラーメンが夕食になることがあるので、それは子供の時の郷愁ですね。
返信する
プリリンねーさんへ。 (amenouzmet)
2016-07-19 09:27:37
たしかに、あれ以上美味しいラーメンは無いですな。今のところ。でも!日清の!
カップラーメンだお(^_^)
返信する
Unknown (名無し)
2016-07-20 03:42:11
難しいとわかっていますが、
蛍さんみたいなことがしたくて、憧れて、
今音楽の世界の端っこにいます。
蛍さんのことを教えてくれてありがとうございます。
仕事でどうすればいいのかと悩むたびに、いつも文章を読ませて頂いてます。
返信する
名無しさんへ。 (amenouzmet)
2016-07-20 14:33:24
いつも答えは「自分らしさ」の中に舞っているのでしょうね(^_^)
返信する
ありがとうございます (蓮華)
2016-07-21 01:03:05
未だに、螢のことは忘れておらず、このような記事に触れ、螢を始めて知ったときのこと、ラジオ螢の星屑をひたすら聴き続け、悩んだ思春期を思い出します。そんな私も気が付けば一児の父となりました。でも、心の中はあの頃のまま。螢に出会い、良かったこともあれば、悩み悩み辛かったこともありました。でも、螢に出逢えたからこそ今の自分があるし、出逢えなかったら今のように好きな自分でいられなかったと思います。毎年ありがとうございます。彼女はヒマラヤに向かったのですね。そのまま、あちらで変わらない螢として生活しているのでしょうか。気になります。
返信する
蓮華さんへ。 (amenouzmet)
2016-07-21 01:44:47
日本にいると思いますよ。
変わらない彼女でいると思います。
約束通り、またマイルストーンとさせて頂きました(^^)
返信する
Unknown (Unknown)
2017-08-05 14:32:51
今年のマイルストーンも期待しています
返信する
Unknownさんへ。 (amenouzmet)
2017-08-06 00:24:22
そーですね。
書き溜めていた記事があって、次々回、8月中旬に!必ず!申し訳ありません!(>_<)/
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