新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

日本の医療を何とかしろ!

2009-08-09 16:13:45 | 医療

こんにちは

 

帰ってきました。

 

先週1週間は怒涛のような(津波がやってきたのか・・・というような)毎日でしたが、漸く落ち着いてきました。

 

落ち着いたといっても「患者さんの死」が多い病棟で、急変も多いため油断はできませんが・・・恐らく本当に想定外のことが起きない限りは大丈夫でしょう。

 

 

想定外だから急変なのではないか…と言われても、想定していて手を打っていても「正常な人の抵抗力」の10分の1もない人だと何が起きてもおかしくないです

 

急性白血病で治療しているときに…多くの場合、白血球数は100以下になったりします。

正常な白血球数は4000~8000/μlですから・・・・大変です。

 

言ってしまえば例えば「城」を守っている兵隊の数が4000~8000人いるところが、戦う(細菌に侵入される)前から100人とかに減っているようなもの

 

100%感染すると分かっていて、手は打っていても抵抗力がここまで落ちると何が起きるかはわからないです。だからこそ…僕らは24時間On Call体制でいるわけですけど。

 

 

さて、そんな勤務医の状況(僕の場合は血液内科の…ですが)に関していくつかの記事を紹介します

 

マニフェスト点検「医療」…勤務医疲弊、解決策は

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090809-OYT1T00173.htm  

 

医師不足や救急など国民の命に直接かかわる医療問題について、自民、民主両党とも、医師の増員や診療報酬の引き上げなど積極的な施策を公約に掲げている。  

実現性はどうか。医療の崩壊は食い止められるのか。  

岩手県北部の山あいにある九戸(くのへ)村。7月下旬の午後10時ごろ、男性(40)は急な腹痛と吐き気に襲われた。  

 

人口約7000人の村にあった県立病院(45床)は、医師不足や赤字のために2年前、診療所(19床)に縮小され、今年4月には病床も廃止された。村には休日・夜間は医師がおらず、男性は妻が運転する車で約30分離れた二戸(にのへ)市の県立二戸病院(300床)に向かった。  

 

同病院のこの日の当直は眼科医。自宅待機の消化器科医が呼び出され、急性すい炎と分かったのは夜明け前。男性は入院して治療を受け、症状は治まった。  

 

同県の県立病院の医師は、5年前より約14%減少。二戸病院でも、常勤医は基準に15人足りない30人。呼び出しなどで超過勤務が月100時間以上、休みは月2日の診療科もある。激務が悪循環を招き、14人いた内科系医師のうち5人が次々と退職。佐藤元昭院長は「医師は慢性的な疲労状態にある」と話す。  

 

救急をはじめとした医療危機の根幹にあるのが医師不足問題だ。人口1000人当たり医師数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3・1人に対し、日本は2・1人と少ない。自民、民主両党とも医師数増加を公約に掲げる。  ただし、医学部に入った学生が一人前の医師になるには研修も含め最低8年かかる。指導教官を増やしたり、校舎を増築したりするなどの整備も不可欠で、実現までの課題は多い。  

 

そもそも日本の医師は10年前より約15%増えている。だが激務の外科、産科医は10%前後も減少。岩手の例のように、地域によっては内科医も足りないなど「偏在」の問題も大きい。  

 

済生会栗橋病院(埼玉県栗橋町)の本田宏副院長は「医師不足が深刻な地方での対策が両党とも明確でない。地域で必要な医師数を算出し、それに応じた医師を育てる仕組みを作る必要がある」と注文をつける。  

 

また両党とも、救急や産科などに医療費を手厚く配分することなどで、地域医療を整備するとしている。  

政府はこれまで、医療費を含む社会保障費の伸びを毎年2200億円削減する抑制策をとってきた。診療報酬も本体と薬価部分を合わせた全体で02年度からマイナス改定が続いている。  

 

これについて民主党は「地域医療の崩壊に拍車をかけた」と批判。GDP(国内総生産)比で8・2%の我が国の医療費を、OECD平均(8・9%)まで引き上げるとする。  一方、政府も今年6月の「経済財政改革の基本方針2009(骨太の方針09)」で、来年度の社会保障費の抑制方針を撤回。自民党は公約で診療報酬を来年度プラス改定するとした。  

増える医療費を、だれがどう負担するのか。具体化に向けた課題も多い。(医療情報部 坂上博、高梨ゆき子、山崎光祥) (2009年8月9日01時53分 読売新聞)

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大きな問題だと思います。当然ながら増大する医療費を誰がどう払っていくのか?

 

「村社会」的な要素が残る日本であれば…助け合っていく・・というのも納得されるかもしれません。

しかし、アメリカ的な考え方(というと語弊があるかもしれませんが)でいくと

「自分が何かあった場合はそれに備えて準備しておくもの。私は医療費を年間2000円しか使っていないのに、何故こんなに莫大な保険料を払わなくてはいけないのか?」

という人が必ず出るでしょう。

 

それを納得させられるだけの理由を、ビジョンを示せなくてはならないと思います。

 

 

また、現実的に上記の岩手県の病院のようなことはいくつか起こってもおかしくないと思います。

 

研修医の1年目のころ、研修協力病院(隣にあった病院)の副当直として勤務についた際に当直の先生は眼科医で

「私は内科的なことはわからないからよろしく」

と言われたことがあります。

 

 

僕は昔から「引きまくる」タイプでしたので、緊急の処置が必要な患者が3名位いて(風邪とか肺炎とかは・・まだいいんですけど、たしか消化管出血のショックの患者を含め3名ほど)・・・当直の先生に報告した後、消化器のバックアップドクターを呼んだり大変だった記憶があります。

 

今の僕がどこか地方の病院で勤務したとして、「手技」があまり入らない緊急であれば一人で対応可能かもしれませんが、消化管出血や心筋梗塞・緊急手術が必要なもの・・・様々なものが僕では対応できません(初期診療はしますよ。救急得意+好きですから)。

 

そういうものも含めて、今の日本では100%の対応は不可能な状態になっています。もともと100%ではないのですけど、さらにひどい状況になっていきます。

 

いろいろ考えなくてはならないと思っています

さらにこちらも紹介します

 

なんとかしろ!:09年衆院選 将来見通せる政策を--平田真紀さん /岩手

8月9日12時0分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090809-00000063-mailo-l03  

◇盛岡 岩手医科大3年・平田真紀さん(25) 

どうしてころころ変えるんだろう?」 歯科医を目指す盛岡市の岩手医科大3年、平田真紀さん(25)は開口一番、疑問を口にした。近年の山積する医療の課題に対し、政府は診療報酬の引き下げや患者の自己負担増などの政策を立て続けに打ち出した。 

 

その影響は身近なところで出ている。山あいに約1万7000人が暮らす宮城県山元町で、外科医の父が経営する病院の患者数が減ったと聞く。「初期症状のうちに受診しなければ余計お金がかかる。お金をかけないと健康を維持できないのは間違っている」と制度改革に危機感を募らせる。 

 

医師不足に対応した医学・歯学部の定員増も、自身の進路を考えると複雑だ。「特に歯科医は盛岡のように地域によっては飽和状態。医師としては一般企業への就職も難しい」と表情は厳しい。 

投票先の決め手は将来を見通せる政策があるかどうか。「素人目でもこれは実現できそう、と思える政策が一つでもあれば、そっちを選ぶ」。誰もが安心できる医療の構築を願う。【山中章子】

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実際のところ偏在、偏在というが実際は医師不足があって、そのために余計に偏在の要素が目立つだけだと思います。

 

本当は各診療科に10の配分があるとすれば、どこも10に至っていなくて…場所によっては2~3しかないと思えば良いのではないかと思います

 

歯科は10を超えてきている。それで今のような状況になっている。

 

例えば、産科・小児科・救急・血液内科(笑)・・・様々な診療科は2~3でしょう。2~3で10の仕事をやろうと思えば・・・当然きつくなります。さらに人は来なくなります。

 

一方で、7~8くらいの状況であれば・・・まだまだ入る余地がありますし、仕事がなくなって困るわけでもなく勤務状況が普通・・・であれば、そちらに人が集まりやすいのは当然と言えば当然の話。

 

偏在ではなくて「絶対数の不足」から、偏在に見えるだけ…にすぎない。本当に偏在しているのならば・・・歯科と同じで…余るんですよ。余ればそこに入り込む余地はない。

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

だから、足りないといってよい・・・・。

 

そういった現状に対してどういった政策で臨むのか。僕も楽しみにしています。僕は・・いつも医療教育に関しては「医局の垣根をなくせ」というスタンスで、さらに「大学以外の病院との教育提携を」+「ポートフォリオをうまく生かせ」+「国家試験の仕組みを変えろ」で…なんとかなるかと思っていますが・・・。

 

それでは、また。

コメント (3)
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