おはようございます。
今日までお休みをいただいております。
けど、年末年始に休みをもらっていると何が起きているか気になるので、、昨夜帰り際に病棟によりました。病棟で患者さん(入院患者20名くらいですかね)がどういったことが起きているか・・・ということの確認です。
抗癌剤治療に関しては、だいたいどの時期にどのような有害事象が生じるか予測しています。
予測してそれをできるだけ予防し、それでもおきたら治療する。そうやって抗癌剤治療による体のダメージ(特に血液疾患の場合、もっとも怖い有害事象である骨髄抑制が強いので:強くしないと効かないですから)から回復するまで頑張る。
そうやって治療を行います。
先程、ミカンさんのコメントでCAG療法という単語が出てきたので、少し解説を含めた記事を書いてみようかと思います。たまにはそういうBlogの記事もよいかな…と思いました。
急性白血病などに関しては日本の治療施設であれば標準治療として主にJALSG(Japan Adult Leukemia Study Group)の標準Protocolによる治療がおこなわれると思います。
標準治療が効かなかったとき(標準治療は多くの方に治療効果があり、有害事象も許容範囲内である)に他の治療法ということになります。
僕は急性骨髄性白血病の患者さんに関しては標準治療が効果に乏しかった時にこう言います。
「標準治療で効果が乏しいので、他の治療法を選択しないといけません。大きな考え方としてはより大量の抗癌剤を投入するか、少量をダラダラと行くやりかたか・・・です」
で、ここから細かく説明するわけですが…大量の抗癌剤を投入するというのはこの場合はHigh Dose AraCを含む様なレジメンですね。当然抗癌剤の量が増えますから、有害事象も効果も上がるかもしれない。
今回、CAG療法の話が出ましたが、CAGと言われて何が思い浮かぶでしょうか。
CAG:Coronary. Angiography、CAG リピートなどなど・・・
基本的には少量ダラダラ作戦の一つです。他にもCAM療法、AVG療法などがあります。
何をしているかというと抗癌剤ってそれぞれの薬の違いがあります。
急性骨髄性白血病で重要な薬剤としてAraC(シタラビン):キロサイドという薬があります。
この薬は細胞周期、難しいですね。癌細胞が増えるときに癌細胞を壊す性質が強い薬です。因みにある一定濃度より増やしても効果はないといいます(だから、特殊なやり方でなければ移植の前処置とかには使用しない)が、癌細胞が増えるときに壊すわけですから癌細胞を増やすように仕向ければいい。
これはMDSのようなタイプにも効くわけですよね。ゆっくりしか増えませんけど、無理やり増やせばいい。
急性骨髄性白血病の細胞は早いと4日で倍になります。それを考えれば固形腫瘍と全く違うというのは一目瞭然なんですが、この速さがない場合・・・効果が乏しくなります。
だから治療法はこうなります
1 14
G-CSF ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
アクラルビシン ↓ ↓ ↓ ↓
Ara-C → → → → → → → → → → → → → →
というふうになります。
CAMはG-CSFをM-CSFにすることで単球性白血病に、AVGはアクラルビシンをエトポシド(VP-16)に変更した治療ですね。
何をしているかというと、G-CSFやM-CSFというのは通常抗癌剤と同時に使用するのは「禁忌」です。何故なら有害事象が増えるから。
これらの薬は「好中球減少時」に使用することでこれらの回復を助けます。
逆にもし抗癌剤と同時に使用すれば、好中球の細胞回転が増加しますから、より好中球が減るわけです。
そしてここがPointですが、白血病細胞のなかでゆっくり増えるタイプだとかMDSから進展したタイプなど・・・そのゆっくり増えることが原因でどうも効果が乏しいのではないか…と考えた時に「AraC」の効果を高めるには
白血病細胞を増えるように仕向ければよい!
http://blog.with2.net/link.php?602868
人気ブログランキングへ←応援よろしくお願いします
ということになります。
急性骨髄性白血病の細胞は基本的に「顆粒球」から発生していますので、G-CSFで増える可能性があります。で、これでプライミングしてあげることで、白血病細胞が増えるように仕向けて抗癌剤が効きやすいようにする。
G-CSFで白血病細胞を増えるように仕向ける
→白血病細胞が増えようとする
→増えようとするとAraCがそれを破壊する。
この治療法だと、血液毒性は高いですけど…他の有害事象はそれほど大きくないというのがあります。使用している抗癌剤の量は少ないですからね。
高齢者などでも使用できる治療法ではありますね。
そんな治療法(考え方)ですね。
では、また。