新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

日本の医療はTriageが必要な非常事態:災害時と同じというのは以前から同じ状況かも・・・

2011-01-26 23:21:14 | 医療

こんばんは

今、帰ってきました。

先程、医局に行くと新しい聴診器が届いていました。聴診器を先日救急患者受け入れの際に無くしてしまい、探しましたが見つからず思い切って新規購入しました。

ただ、黒い聴診器に黒いNameのため、はっきり言ってわかりにくい。きちんと確認すればよかった・・・orz

 

21時ころから一人でペテペテと英語で論文を書いておりました。「論文をさっさと書くように」と言われて、約2年。まず書けと言われていたものがあまりにとっつきにくく (確かにImpactはあるが・・・)、手が出せずにおりました。それを書いていたPCの調子が悪くなり、思い切って題材を他のものにして書き始め・・・・。

 

意外と書けるじゃん!

 

そんなことを思いながら、帰ってきました。

 

さて、今日はこちらの記事が気になったので紹介します。

 

病院「患者を廊下に」 軽症受診、救急車“タクシー”
 
 「非常事態」「災害時と同じだ」。これまでほとんどなかった消防からの救急搬送受け入れ要請拒否が大幅に増加し、「断らない救急」を誇ってきた県内の医療体制に赤信号が点滅し始めている。病床が足りず、「患者を廊下に寝かさざるを得ない」と窮状を訴える病院も。軽症にもかかわらず救急病院に頼る患者も多く、関係者からは県民に対して昼間の受診やかかりつけ医の受診、救急車の適正利用を求める意見が相次いだ。
 患者数の増加で、救急搬送の受け入れが困難となる状況は急激に冷え込んだ昨年末から起きている。沖縄気象台によると昨年12月下旬の平均気温は16・1度で例年の17・7度を1・6度下回った。今月に入ってからも例年の平均気温を1・5~2・3度下回る状態が続いている。
 患者は主に高齢者。肺炎や脳卒中などが増加している。通常でも満床に近い状態を退院調整でやりくりしている現場に、患者数の急増があり「災害のような状態」(県医務課)という。病院側は「夜間救急は待ち時間が長くなる。自覚症状がある場合は昼間に受診してほしい」と一様に要望した。
 県防災危機管理課は「救急車の適正利用をお願いしたい」と呼び掛ける。2009年に病気で救急搬送された例のうち、53%は入院に至らない軽症患者だった。琉球新報の取材に対して各消防本部からは救急車をタクシーのように利用する“常連”の存在や、病気でないのに救急車を呼ぶ人がいる実態を明らかにした。
 一方、搬送受け入れ拒否がほとんどなかった中部地区も病床に余裕があるわけではない。ある病院は「救急室の廊下に患者があふれ、入院できずに廊下で寝かさざるを得ない状況。断っていないが限界に近づいている」と現状を説明。「中部は病床数が足りていない。後方施設も患者がいっぱい。一つの病院で対応できる問題ではなく、地域の問題として医療行政が何とかしてほしい。救急病院や連携する後方施設を中心に病床数を増やしてほしい」と要望した。

<解説>高齢者長期入院も背景
 救急搬送患者の受け入れが難しくなっている背景には、緊急でないのに救急車を利用したり、救急病院を受診する人の多さに加え、高齢者を中心とした救急病院の長期入院患者が多いことがある。
 国は入院医療から在宅医療への転換を進めるが、県民所得が全国一低く、共働きが多い県内は家族の介護力は低い。訪問診療をしている医師も少なく、訪問看護も充足しているとは言えない。在宅医療、介護は難しく、現状は施設や病院頼みだ。
 医療機関は緊急性が高く症状が安定しない「急性期」、状態の安定した「慢性期」で機能を分担しているが、近年は国の療養病床の削減もあり、慢性期を担う病床が不足している。急性期病院が状態の落ち着いた患者を慢性期病院に転院させようにもできない事態が発生している。県内の救急病院の中には30日以上入院している長期入院患者が全入院患者の3~4割を占める病院もある。
 救急病院に働く医師からは老人保健施設などでみとりができないため、終末期の高齢者が救急搬送され、延命治療をしているという指摘もある。ただ施設側も本人や家族の明確な意思表示がなければ、救急搬送せざるを得ない。高齢社会の中で限りある医療資源をどう有効活用するか、老いをどう支えていくかが問われている。(玉城江梨子)
-----------------------------------
これが沖縄だけの問題かというとそうでもないと思う。
僕ら血液内科が余裕のない診療科というのもあるのかもしれないが、とりあえずいつも病床利用率>100%になっている(汗
まず、急患が多いから予定の患者さんの病床を押しのけることがあるし、かといって予定入院だからといってのんびり待てる患者が多いわけではない。
病床利用率が100%を超えているから、予定入院の患者さんをなかなか受けれないわけだが、かなり待ち時間が長くなった患者さんもおり・・・・。
そういう意味では今の日本の医療が「災害時」と同じような状況のように思える。
以前にも書きました。
今の日本という「限られた医療資源でTriageしている国」では「医療が成立しない」
先日受診された患者さんが言っていました。
今の日本の医療って、病院に行けばいつでも入院できる。自分で入院できる病院も選べると思っていました
それを聞いて、
「一般的に・・・まだ、そういう認識だから救急車の利用や救急外来の利用も減らないのだろう。白血病のような疾患は受け入れられなかったら、受け入れ先を探し続けるしかない。しかし、今は限られた医療資源でやっていて、どの病院もほとんどその余裕がない。だから『受け入れ不能』という状況になっている」
と思いましたが、こればかりは僕らが頑張るよりはマスメディアの方々に啓蒙活動してもらうほかはなく・・・・。
医療資源が乏しい地域から、このような状況が顕在化しつつあるだけで…日本国内全体が似たような状況だと思っています。
だから、どうにか改善したい。それが僕達の共通の思い(たぶん)です。
さて、明日もまた頑張ります。
P.S 転院先を探すのも大変なんですよ・・・。本当に回らなくなっている状況ですね。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イレッサの和解勧告:現場の医師の意見は・・・

2011-01-26 00:09:41 | 医療

こんばんは

 

先程、火曜日行きつけの喫茶店(というか、晩御飯を食べに23時ころにいっております)で日韓戦がやっていました。丁度、店に入ったとき、いきなり韓国に一点取られ

「おぃおぃ」

と思いましたが、その後はすぐ取り返し・・・・。

店の中は観戦モード。

その店の中に・・・・

「先生・・・・」

言われてみてみたら、外来で診ている患者さん。

「この近くにお住まいなんですか?」

お互いに聞いてしまいました。

 

韓国戦は今延長に入りましたが…どうなる事やら。

 

さて、今日の記事ですがこちら・・・。

 

いつも僕は新聞を病棟に持っていっているのですが、何人かの病棟を担当している医師が、一面に記載されていたこの記事をみて

「こんなこと言われだしたら、医師としてはやっていられませんね」

ということであった。

僕も同意見である。「副作用がある」のは抗癌剤ゆえわかっている。血液疾患以外で、抗癌剤を使用しなくてはいけない疾患は少なく「肺癌」(まぁ、臨床腫瘍学会は肺癌の学会の印象が強いですけど)で抗癌剤を使用するということはそういう状態だったということになる

 

その時に「間質性肺炎で死ぬ可能性が○%ありますが、治療を受けますか、受けませんか・・・」と言われたときにどうするかということなのだろう。

僕はちなみに迷いますね。抗癌剤を使用する立場ゆえに、他の医師が「どうせ受けたんでしょう?」と言っていたのに対し「そういう人もいたかもしれないし、逆に治らないなら死ぬ可能性がある治療はしない…という人もいたかもしれない。まぁ、今更だけど」と思ったりしました。

しかし、抗癌剤に副作用がないわけもなく、それに対してどうのこうの言われたら抗癌剤治療なんてできないわけで・・・。

毒を以て毒を制する。メリットとデメリットを比べてみる。その時どうするか・・・。起きるか起きないかわからない状況で、あとだしじゃんけん以外でどうするのか・・・・?

それが問題だと思います。

 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で被害を受けたとして、患者1人と遺族14人の計15人が国と輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)に総額約1億8000万円の賠償を求めている訴訟で、ア社は24日、東京・大阪両地裁が出した和解勧告(今月7日)を拒否する方針を両地裁に書面で回答した。ア社は「副作用の警告は十分しており、適切に対応してきた。法的責任はない」としている。国は和解勧告への態度を表明していないが、和解協議は事実上、困難な見通し。

 致死性の副作用である間質性肺炎は、承認(02年7月)直後の添付文書(医師向けの説明書)の2ページ目で他の副作用と共に記載されていたが、国が緊急安全性情報(同年10月15日)を出した後、冒頭の警告欄に赤字で記載されるようになった。両地裁の和解所見は「十分な注意喚起がなかった。国も行政指導するのが適切だった」と指摘。緊急安全性情報よりも前に服用した原告について被告は「救済を図る責任がある」とし、緊急安全性情報の後に服用した原告とも誠実に協議するよう求めた。

 ア社代理人の池田裕彦弁護士は記者会見で「当時のルールや知見に基づき十分に警告していた」と説明。和解所見について「理解しにくい部分もある。警告のあり方について裁判所の判決を仰ぎたい」と述べた。【日野行介、苅田伸宏】
-------------------------------------
原告が悪いとは思わない。副作用で・・・ということに関して、不幸な事故は起きたのだと思う。
しかし、我々のような「副作用がある」薬を使用する側から言えば、そんなことを言われても…と思う。
例えば、ロイナーゼ。この薬急性膵炎が起きることが有名な薬だが、国内一例目は予測不能であった。急性膵炎で致死的になるとわかっていても、使うと使わないとでは「治癒」の可能性があまりにも違う。使わないことによるデメリットが大きい
だから、もし運悪く急性膵炎が発症した場合は…できるだけ対応するが死ぬ可能性がある。そういうふうにしか言えないだろう
難しい問題だが、現場の医師はいずれにせよ…この話に関しては疑問を投げている。
いま、日韓戦2対1になりました。
もう少し観戦したいと思います。
では、また。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする