1.針灸に来院するのは慢性頭痛
頭痛を急性と慢性に区分すると、針灸に来院するのは慢性頭痛が多い。急性頭痛は、病医院で診療を受けている。頭痛に急性頭痛の中には緊急を要する頭痛もあるので、針灸師側にしても、これはありがたいことである。
数年来の頭痛といった慢性頭痛で、危険な頭痛は考えにくいので、治療に専念できるからである。
2.片頭痛
片頭痛は、頭蓋外を走行する外頸動脈の分枝の血管拡張が原因とされる。夕立のように発作的に起こる頭痛で、月平均2回(週1回~年数回まで)、発作的に繰り返して起こる。1回の発作持続時間は、4時間~1日くらい。頭の片側のコメカミから眼のあたりに起こるズキンズキンとした拍動性頭痛で、吐気を伴う。
片頭痛の特殊タイプに群発性頭痛があり、これは片頭痛の1/100の発生頻度である。頭蓋内の内頸動脈や、その分枝の眼動脈の血管拡張が原因とされる。
一度起こると、群発性地震のように、1~2ヶ月間、連日のように群発する。1回発作は1時間程度。眼や眼の上、コメカミあたりの、えぐられるような激しい頭痛で、じっとしていられない(狭義の片頭痛は、痛みをこらえるため、じっとしている)。睡眠中に起こりやすい。
片頭痛は、よくある疾患だが、医師による薬物療法がよく効くので、実は針灸の出番はあまりない(それゆえ本疾患に対する鍼灸の効果は不明である)。片頭痛に対する治療薬には、昔は酒石酸エルゴタミン製剤(製品名カフェルゴットなど)が使われ、発作前兆期に服用しないと効果がなかなった。しかし平成12年からはトリプタン製剤(製品名イミグランなど)が使われるようになり、拍動性発作期に服用しても効果が出るようになった。
3.緊張性頭痛
1)概要
緊張性頭痛は、1998年頃までは筋収縮性とよばれていたが、精神緊張による頭痛と筋緊張による頭痛は区別がつかないので、これらを一体化して緊張性頭痛とよぶようになった。頭痛発症は不明瞭で、梅雨時の雨のように何日も続く。頭痛の7~8割を占める。鎮痛剤は、あまり効果なく、その作用時間だけ症状軽減する。
<症状の病態生理>
精神緊張・抑うつ状態・頭頸部外傷などによるストレス→頭頸部筋の持続的収縮→血行循環不良→疼痛物質発生→さらにこれが筋収縮を惹起、という悪循環状態となる。
なお後頭神経痛というのは症候名であり、診断的には緊張性頭痛に含める。実際には後頭神経痛が引き金となって生じた緊張性頭痛が非常に多い。
2)緊張する筋と興奮する神経
後頸部痛(頭に重石をのせらせている感じ)
原因:大後頭神経(C2後枝)の運動枝支配→深頸部筋
後頭下神経(C1後枝)の純運動神経支配→後頭下筋群
頭蓋周囲痛(被帽感)
原因:顔面神経支配→前頭後頭筋、耳介筋、側頭頭頂筋
三叉神経支配→側頭筋
頭頂部痛
原因:三叉神経第1枝興奮
3)緊張性頭痛の針灸治療
重石がのっている感じならば後頸部筋深層に、被帽感ならば頭蓋周囲筋層に置針する。頭頂部痛ならば、頭頂に筋はないので、頭頂の皮膚知覚支配の三叉神経第1枝刺激を目的に、頭頂部圧痛点に置針する。
なかには、頭全体が痛むと訴える者もいるが、とにかく、圧痛を一つ一つ全部針でつぶしていく気持ちで置針することを心がける。治療後も症状にあまり変化ないと訴える患者は、まだつぶしていない圧痛点が残っていることを意味するから、症状部位を中心に圧痛探索して施術すること。