ヘーゲル『哲学入門』中級 第二段 自意識 第二十四節[自意識の三つの段階]
§24
Das Selbstbewusstsein hat in seiner Bildung oder Bewegung die drei Stufen: 1) der Begierde, insofern es auf andere Dinge; 2) des Verhältnisses von Herrschaft und Knechtschaft, sofern es auf ein anderes, ihm ungleiches, Selbstbewusstsein gerichtet ist; 3) des allgemeinen Selbstbewusstseins, das sich in anderen Selbstbewusstsein und zwar ihnen gleich, so wie sie ihm selbst gleich, erkennt.
第二十四節 [自意識の三つの段階]
自意識の形成あるいは活動には三つの段階がある。
1) 欲望───自意識が他の物に向けられる場合。(※1)
2) 支配と隷従の関係───自意識が自分と対等でない他の自意識に向けられる場合。(※2)
3) 普遍的な自意識───他の自意識が自分と彼が同質であると認めるように、同時にまた自意識も他の自意識の中に自己を認める場合。(※3)
※1
自意識はまず個人として生きるためには、欲望をもって他の物に向かわなければならない。他の物とは水や空気などの無機物にかぎらず、果実や魚肉など、さらには同じ個体としての異性に向かう。それは食欲であり、性欲などである。(個別)
※2
次に自意識は、同じく多くのさまざまな他者との社会関係におかれて、他の自意識と向き合うが、さしあたっては、お互いの承認をめぐって抗争する関係である。その端的な例は戦争である。敗者の自意識は命が欲しければ勝者に隷属し支配されるしかない。(特殊)
「Herrschaft und Knechtschaft」については、金子武蔵氏は「主であること奴であること」、牧野紀之氏は「主人であること召使であること」と訳している。
※3
自意識は第二の段階を経ることによって、さらに家族、市民社会、国家や人類といった人倫の社会に向かい「普遍的な自意識」に至る。
「私は私である」というここでの自意識の命題がフィヒテの「自我哲学」が踏まえられていること、また、自意識が三つの段階(個別ー→特殊ー→普遍)をたどるその発展の論理過程については、金子武蔵氏の訳業になる『精神現象学』の解説などに詳細に説明されている。ただ、このヘーゲル『哲学入門』の翻訳と註解は「生活に使える哲学」として、基本的な骨格のみの把握を目指している。
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