玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*Awichとは?

2024年12月01日 | 捨て猫の独り言

 素朴なツワブキの花が咲いている。ネリネも咲き出している。碁仇の義弟が2泊3日で伊勢原市から出かけてきた。剪定技術はプロ並みで毎年のようにやって来て、庭木を整えてくれる。今回はチェーンソーを使ってかなりの数の庭木を20㎝ほど切り落とした。切り口の保護のためクリームを塗るのは私の役割だ。

 朝日新聞には随時掲載されるテーマごとの「季評」がある。歌人の穂村弘は「言葉季評」、作家の安藤量子は「福島季評」、琉球大准教授の山本章子は「沖縄季評」などである。これらは4カ月に一度だから、練り上げられて読み応えある文章だと思う。今回の沖縄季評の小見出しには「琉球独立万歳」とあって驚く。

 この季評で1986年生まれで沖縄出身の女性歌手・ラッパーのAwich(エーウィッチ)の存在を初めて知った。本名の浦崎亜希子を英語に直して、Asia wish childそれを縮めてAwichだ。《彼女が出演するミュージックビデオ「ロンギネス リミックス」が中国で若者を中心に人気を集めている。「ザ・リューキュー ザ・オキナワ098」の「琉球教訓伝承分かる奴らが変えてくネイション」などのラップに合わせて中国語に翻訳された歌詞が表示されると、「琉球独立万歳」といったコメントが次々と流れてくる。この曲にそのような主張は皆無で、示唆する歌詞や映像もないのにだ。

 歌詞と無関係に「これが琉球独立だ!」と中国の若者が熱狂する理由は、ビデオにあふれる沖縄の日常的風景が中国人に強い親近感を抱かせるからではないかと、中国に1年間留学した琉球大学の学生は言う。おばあの数え年97歳の長寿祝いで数世代にわたる親戚が集まり、オリオンビールで乾杯してごちそうを食べる映像。南国の木々が揺れ、琉球王国時代の女性の髪形を結ったAwichが琉装で舞う。沖縄の人々が沖縄アイデンティティーを表現することが、中国への帰属意識の発露と読み替えられてしまう現象が中国の中で起きている》

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*再びの九州旅行②

2024年11月25日 | 捨て猫の独り言

 2日目の大分県の中津市と玖珠町にある山国川流域に広がる耶馬溪は、中国の山水画のような風景だろうと思い描いていた。60年も前に宮崎の高千穂峡を訪ねたことがある。それに比べると今回目にした耶馬渓はどこかインパクトに欠けた。紅葉の時期は、訪れる車で大渋滞が発生するという。耶馬渓の見せ場はこの短い期間だけだが、高千穂峡は年間通して人気を集めていると聞いた。

   

 昼食は日出町(ひじまち)にある的山荘だった。これは杵築市山香町の金鉱石の山を的てた富豪が建てた邸宅という。料亭として営業を始め、これまで皇族も食事に立ち寄ることがあったという。2010年に所有は日出町に移り、管理されるようになった。高崎山を築山に、別府湾を池に見立てた庭園を散策した。この散策で別府湾がより身近に感じられるようになった。

 昼食に時間がかかり宇佐神宮参拝が中止となる。旅程変更はめずらしいことだ。宿泊は別府市内の高台にある「杉乃井ホテル」だった。全国的に名の知られたホテルで、別府市民の間にも人気が高いという。ホテルの広い敷地に8つのコンテンツが終結し、巡回バスが走り回っていた。高台にあるので宙館4階の部屋からでも別府湾や市街が眼下に見渡せる。出歩かず、もっぱら宙館13階の展望露天風呂を利用した。

 入浴ではなく観覧を主な目的とした温泉は地獄と呼ばれ、別府観光の目玉の一つだ。最終日はホテルを10時に出発して「海地獄」を見学する。地獄はいろいろあるが最初に開設されたのが「海地獄」だという。4月のときはホテルが別府駅のすぐ近くで、展望は楽しめなかった。しかし今回は高台のホテル、それに「海地獄」も見学することができた。そこで私の中に「別府温泉」という一枚の絵が完成した。

 

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*喃語

2024年11月21日 | 捨て猫の独り言

 辞書には、喃語とは乳児が発するアーアーとかブブブというような繰り返し音。言語の習得に先立って生理的に発せられる音声とある。朝日新聞は11月19日の夕刊と翌日の朝刊で、谷川俊太郎さんの死去をどちらも一面トップで報じた。20日の朝刊には詩人の佐々木幹郎氏のつぎの寄稿文があった。

 「文化面に毎月一回掲載された〈どこからか言葉が〉と題した谷川さんの詩の欄は、谷川さんが13日に亡くなった後、17日に〈感謝〉と題した詩で締めくくられた。いつ書かれたのかわからないが、おそらく意識が遠のいていた時期に、側近の方が手配したのであろう。もし谷川さんが生きていたら、そういう死の直後の自分の詩の発表の仕方をおもいっきりからかったかもしれない」

 また佐々木氏は、谷川さんのつぎの言葉を紹介している。「人の年齢を私は樹木の年輪の喩で語るようにしているのですが、老齢にはその年齢の中心に向かう動きもあるようです。意味ある言葉とともに、喃語のような脳とともに身体から生じる言葉、意味よりも存在そのものに触れる言葉を今の私は夢みています」

 それと関連する谷川語録を拾ってみた。「何歳になっても子どもの視点で詩を書く。言葉上だけで子供になるってことはないんですよ。こどもの気持ちになるのとも違う。言語はもともと古い歴史を持っているでしょう。言語そのものが持つ古さって体が知っているんじゃないかと思っているんですよね」

 

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*再びの九州旅行①

2024年11月18日 | 捨て猫の独り言

 4月は個人で選択して九州旅行(4日間)に参加した。宿泊地は嬉野、雲仙、別府の温泉地だった。長崎の平和公園やグラバー邸、阿蘇の大観峰、柳川の北原白秋記念館などを初めて訪れた。今回の11月は年に一度の自由参加の会員旅行で、総勢40人での九州旅行(3日間)だ。宿泊地は博多と別府である。

 九州は空港が整備された地域だという。4月は羽田と佐賀空港の往復で、今回は行きは羽田から佐賀空港、帰りは大分空港から羽田だった。初日の午後から雨となり柳川では、頭からすっぽりと雨合羽を着用しての川下りとなった。4月は白秋記念館を選択して見学したので、これで柳川観光は完結したことになる。

  

 初日の宿泊ホテルは「グランドハイアット福岡」で、10階の窓から川の流れと、夕暮れのネオンが眺められた。ワインをたくさんいただいた夕食後は、隣接するショピングモールに出かけた。そこではイルミネーションや噴水ショーが行われていて、喧騒の世界が繰りひろげられていた。

   

 私は博多の街には、ほとんど馴染みがない。あとで調べると部屋から眼下に見えているのは中州那珂川通りである。近くには福岡国際センターがある。この日は大相撲九州場所が初日を迎えたところだった。博多駅も遠くはなさそうだ。浴室のシャワージェルはいい香りで、原産国はマレーシアと書かれていた。

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*美しく崇高な世界

2024年11月11日 | 捨て猫の独り言

 囲碁名人戦七番勝負の第6局で、挑戦者の一力遼棋聖(27)が芝野虎丸名人(24)に勝ち新名人となった。これで棋聖、名人、本因坊、天元の四冠である。一力は9月に世界メジャー棋戦で優勝したこともあって、名人戦を主催する朝日新聞も今回は報道に熱がこもった。

 また「異次元の数字愛」と題して、一力をつぎのように紹介している。4歳の時にはカレンダーを書き、幼稚園のお絵描きの時間には画用紙いっぱいに数字を書いた。現在でもたとえば「こだま731号」の表示を見ると、瞬時に17×43と素因数分解したりする癖がある。記者が生年月日を告げると数秒後に当日が何曜日かを即座に言い当てた、ということなど。

 そして張栩九段が印象的な談話を寄せている。「七冠や他の国際棋戦の優勝を期待する声もありますがこれ以上のことを求めるべきものかなという思いもあります。彼の言うメンタリティとは、とても広い範囲のものだと思います。美しく崇高な世界で尊いもののために戦っているんだという、人生観も含むような何か。今は自分は勝者にふさわしいんだと思えているように映ります。日本社会は彼をもっと誇りにし、彼にもっと憧れて欲しいと思います」

 枝のない渋柿をどうして吊すか。私が思いついた方法は、かろうじて残る「なり軸」の細い中心部に安全ピンを差し込むということだった。安全ピンもこんな使われ方をされるとは思ってもみなかっただろう。遠目にはいつもの吊るし柿だ。その後、近くに住む若き友人がこんな便利なものがあると持参してくれた。ステンレススチール製の「柿クリップ」という商品だ。交差した爪を押し開き、果肉に食いこませて爪の復元力でしっかり支えることができる。これだと、なり軸のないのっぺらぼうでも大丈夫だ。

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*バタフライガーデン

2024年11月07日 | 捨て猫の独り言

 自宅から東西南北にコースを定め2週間おきぐらいに歩き回っていたがいつのまにやら、その計画から遠ざかっていた。体重減少を遅らせようと、自室で始めた筋肉トレーニングも時おり思い出したようにやるだけだ。体育館のトレーニング室に出かけることを勧められているがどうもその気になれない。唯一続けているのはラジオ体操だけだ。継続は力なりというがなかなか難しい。

 秋晴れのある日、久しぶりに東へ2時間散歩に出かけた。登山靴をはいてリュックを背負って玉川上水の緑道を小金井公園を目指す。公園の直前で、予定を変更して格安スーパーに立ち寄り折り返すことにした。この遠出に少しの意味を持たせたくて、リュクに安く手に入れた1800mlの紙パック焼酎を入れた。

 玉川上水緑道を歩くとき、いつも思い浮かべるのは玉川上水を愛する鈴木忠司氏のことだ。私が出歩かないせいか最近お会いしてない。玉川上水の桜橋には西武多摩湖線の踏切がある。ここは鈴木氏が生まれ育った場所でもある。かつてここには桜堤駅とそのすぐ北に小平学園駅があったが、現在は廃止されてそれら2つの駅の中間地点に一橋学園駅ができている。

  

 鈴木さんが関わった自生野草保護観察ゾーンは、桜橋を起点に上流の小川水衛所までの五日市街道沿いにある。ここは手入れが追いつかない様子だ。鈴木さんがオープンギャラリーを終えたあとに企画したのが桜橋のバタフライガーデンだ。第1日曜日には有志がガーデンに集まるという。この日の散歩の往復の途中で目にしたバタフライガーデンはよく手入れされていた。それを見て鈴木さんが今でも元気で玉川上水を歩かれていることを確信した。

 

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*日々の中の変化

2024年11月04日 | 捨て猫の独り言

 ブログ「海鳴りの島から」が10月11日に再開された。そこには簡単な挨拶があった。「久しぶりに辺野古の抗議行動に参加したが、もと国語教師とて、この1ヶ月余のことを10字以内にまとめると以下の通り。『いろいろあった』  参考/清水義範(国語入試問題必勝法)」目取真俊氏の体調の問題ではなかったようで、これでひと安心である。無償の抗議活動では手弁当代を稼ぐ必要もあるだろう。

 カレンダーの季節になった。大安や仏滅といった概念は、古代中国の「六曜」という暦の考え方に基づいている。大安、仏滅のほか、友引、先負、先勝、赤口の六つの星のめぐりによって吉凶を占う。暦にはいまだに「六曜」が入ったものが多い。これは暦業者の販売戦略にすぎないようだ。仏滅は江戸時代には「物滅」で、物がなくなったり、物事がうまくいかなくなったりを表していた。いまやカレンダーは祝日・休日だけのシンプルなものや、それに二十四節気を加えたものなどが主流になりつつある。

  

 今年の柿の収穫は予想以上だった。葉がほとんど落ちても、まだ実をいくらか残している。そして空き家となった燐家には、小ぶりの2本の柿の木がある。一つは渋柿である。時おり親族が荒れた庭を整えに来る。その方たちは柿は食べないという。柿食わぬ人もいるものだと驚いた。許可を得た私どもは、去年から燐家の渋柿で干し柿づくりを始めた。

 今年もその渋柿をいただくことになり、勇んで取り込んだ。しばらくて、取り返しのつかないヘマをしたことに気づいた。吊るすためには、T字型に枝を残す必要がある。昨年はそれを実践したが、今回はすっかり忘れていて、すべて甘がきの場合と同じように枝を短くカットしてしまった。これでは引っ掛かりがなく吊るすことができない。その後、このことに私がどう対処したかは機会があれば報告したいと思う。

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*本格焼酎

2024年10月28日 | 捨て猫の独り言

 3泊4日の旅から帰ると、柿の葉が庭一面に敷き詰められていた。留守中に強風があったらしい。幸いなことに風向きの関係で柿の葉は公道側でなく、ほとんど庭の側に落ちていた。色づいた柿の実が姿を現し、熟するにつれてメジロやシジュウカラが柿の実を啄みにやって来る。それを観察するのは楽しい。しかしカラスが柿の木に飛来すると外へ飛び出して追い払う。

  

 故郷の鹿児島から贈り物が届いた。「南さつま市」の笠沙(かささ)町にある「杜氏の里笠沙」の「一(いっ)どん」という焼酎だ。これまで聞いたこともない名で、贈り主によると、まず注文しそして抽選の結果手に入るのだという。薩摩弁の「どん」は軽い敬意を表す接尾語で「~さん」を意味する呼称だ。西郷さんは「せごどん」という具合いだ。豪快なラベルには初代黒瀬杜氏片平一(はじめ)の愛称をそのまま名付けたとある。

  

 「黒瀬杜氏」は明治30年代から昭和中期にかけて、鹿児島県南部で活躍した焼酎造りの職人たちだ。その呼び名は発祥地である鹿児島県南さつま市笠沙町の地名である「黒瀬」に由来する。黒瀬杜氏が誕生したのは、焼酎が自家製だった時代が幕を閉じ、急速に産業化が進んだ時代。鹿児島には100社を超える焼酎蔵元がある。若き焼酎職人の中には、これまで焼酎業界を牽引してきた黒瀬杜氏に教えを請う人もいる。

 市町村合併で「南さつま市」と「南九州市」が誕生した。このことによって若くして県外に出た私のようなものには、合理化され抽象化された名称からは、悲しいことにその土地の自然の景色を思い浮かべることができなくなっている。加世田市、笠沙町、大浦町、坊津町、金峰町が合併して「南さつま市」となったと説明されてやっと、日本海に面した吹上浜や、野間半島の野間岳や、坊津町の海水浴場などの風景が浮かぶのだ。

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*安曇野への旅

2024年10月24日 | 捨て猫の独り言

 旅行社のキャッチコピー「北アルプスがそびえる信州が誇る景勝地~安曇野・穂高温泉郷で寛ぐさわやかステイ3連泊4日間」につられて旅に出た。宿泊ホテルは安曇野市穂高有明の「ガーデンあずみ野」とある。出発は新宿12:00発の「あずさ21」号で松本に14:35着、そこから迎えのバス70分でホテル到着である。

 松本城や上高地を訪れたことはあった。上高地を流れるのは梓川だ。狩人の曲の「あずさ2号」を思い出す。しらべてみた。「あす私は旅に出ます あなたの知らないひとと二人で いつかあなたと行くはずだった 春まだ浅い信濃地へ」そして「8時ちょうどのあずさ2号で 私は私はあなたから旅立ちます」がくりかえされる。

 2005年に、豊科町、穂高町、堀金村、三郷村、明科町が合併して広域名称である安曇野が市名に採用された。振り仮名を「あづみの」「あずみの」のいずれにするかは合併協議会において議論がなされ「あづみの」が採用されたという。なるほどガイドマップはほとんど「あづみの」だ。この旅はあらかじめの計画はなく、ひたすら安曇野のふところに飛び込んでいったようなものだった。

 

 宿は安曇野市の西側の有明山の麓の、日当たりのよいリンゴづくりが盛んな場所にあった。旅の2日めは、その宿の周辺の散策で終わる。「穂高郷土資料館」とんがり帽子の時計台の「鐘の鳴る丘集会所」「松尾寺」から、平地部に流れる水路に沿って山麓線と呼ばれる幹線道路を横切り斜面を下る。そこのリンゴ畑にはたくさんの落ちたリンゴが放置されていた。3日めの「ちひろ美術館」は見学が終わる頃小雨が降りだした。ちひろは20歳で不幸な結婚をして、二度と結婚はするまいと心に決めたことがあった、そのことを今回の旅で知った。

  

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*歎異抄読解

2024年10月21日 | 捨て猫の独り言

 ちくま新書「無宗教からの歎異抄読解」を読んだ。著者の阿満利麿(あまとしまろ)は1939年に京都の西本願寺の末寺に生まれた宗教学者である。これまでの歎異抄関連の中では、もっとも親しみやすい本だった。これからは日本各地の墓所で目にする「南無阿弥陀仏」や「俱会一処」の文字が、これまでとは違った印象で私に迫ってくるだろう。

 まず著者のつぎの表明に共感を覚えた。「歎異抄を読んでゆく際に、どこまでが日常的なものの考え方感じ方で十分に理解できるのか、どこから、あるいはどのような理由で常識とは異なる宗教的論理を受け入れなければならないのかをはっきりさせることだろう。いってみれば常識から宗教への飛躍のポイントを明らかにすることが必要になってくる。本書の力量が試される点でもある」

 道徳の尊重は善悪をわきまえた、しっかりした自己の確立を前提とする。それに比べると、宗教は自己の危うさや自己の矛盾から出発する。道徳に敗れ道徳で立ち行かなくなったところから宗教ははじまる。法然の仏教を受け入れるうえで立ちはだかる壁は、まず第一に自分が「凡夫」だという認識をどこまで認めることができるか。第二はなぜ阿弥陀仏の誓いが絶対的な救済の道となるのかを、心底から納得できるかどうかという点にあろう。

 子どもは「お母さん」というだけで母を実感できる。言葉には存在を呼び起こす機能がある。阿弥陀仏とは無数の人々が願い続けてきた人類の願いの結晶であり、そのシンボルなのである。本願念仏は自らの救済を願う心から出発する。人は自らの成仏を求めて阿弥陀仏の名を称するのである。凡夫成仏という事業を完成するためには、凡夫にわが名を称するという行為を実践してもらわねばならない。「我にまかせよ。かならずあなたを救う」

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