つぎは9月24日の朝日新聞から。早稲田大学の篠原初枝教授が国際連盟の教訓について語る。「ロシアのウクライナ侵攻が始まった時、私はすぐに満州事変を思い浮かべた。国際連盟は何とか妥協へ導こうとするが、連盟へのコミットを捨て満州を選んだ日本の決意の前には無力だった。結局国際組織というのは加盟国がその目的を理解してどれだけコミットできるかにかかっている。近年の安全保障理事会は機能不全で、建て直しは難しいだろう。しかし国際連盟の失敗を繰り返すべきでない。ロシアや中国、米国といった大国が国際連合を抜けるような事態は防ぐべきだろう。異なる考えを持った国が組織の中にいることは重要だ」
東京大学の遠藤乾教授は今の情勢と戦間期の類似点と相違点を語る。「類似点①現状変更を求める勢力の武力による実力行使②民主主義国が自滅・自壊し自由から逃走してゆく③国際社会のブロック化が広がる。相違点①超大国アメリカの民主主義が傷つき右傾化が見られる(戦間期の大国イギリスは極右化には至らなかった)②ブロック化にしても、中国の経済力は並外れており封じ込めの対象とならない(戦間期には日本に石油や鉄の輸出規制・禁輸したABCD包囲網があった)そして輝かしい歴史を持つ穏健保守が、票欲しさに極右におもねる動きが顕著になるなど、政治が不安定になっている」
米国の政治学者ハル・ブランズ氏はアジアで戦争が起きれば米中が互いに対抗し大惨事になる。この悪夢のようなシナリオを避けるには我々はどう対応すべきかについて語る。「中国が経済停滞の時代に入り、攻撃的な状況を乗り切るには〈決意〉と〈自制〉の両方が必要だ。決意とは、侵略には非常に厳しい制裁を加え、迅速に行動し、台湾進攻や海上封鎖は成功しないと説得することだ。同時に米国や他の国々が中国の政権を転覆させたり、台湾独立を支援したり、限界を迎えつつある中国が直面する課題を利用したりしないという、一定の保証を中国に与えなければならない」