最近は図鑑やパソコンなどで情報を得ることは容易だが、それだけで私達は満足できるわけではない。このような情報では曇りガラス越しに見るような、あるいは何かフィルターで遮られているようなもどかしさを感じる。直接体験は大切だ。例えば草花は自分の目で見、鼻で嗅ぎ、手で触れることで、愛着も湧き、その名を記憶するようになる。感謝すべきことに今年は幾人かの同窓の友人のおかげで、草花において私は視野を広げることができた。先ずは花オクラだ。初めて見る花野菜である。八月は毎日のように庭の花を収穫しておいしく頂いた。さて来夏はどうなるのかとどこまでも他力本願だ。
今週の月曜日に同窓の忘年会の席で参加者全員に水仙が配られた。持ち帰られた水仙は居間の三メートル四方に芳香を放っている。香りは凛として素晴らしい。ひがんばな科すいせん属だそうだ。これだけはさすがに知ってはいたが、香りをこのように胸いっぱい吸い込んだのは初めてのことである。配った人は過去にこの鮮明な香りに驚いたことがあるのだろう。そして多くの人にこの香りを知って欲しかったのだろう。
10月の中旬にご本人がわざわざ庭先までネリネを届けてくれた。彼岸花に似たピンク色の花を咲かせている。花びらに光が当たると宝石のようにきれいに輝く。ひがんばな科ネリネ属だそうだ。これまたはじめて見る花だ。彼岸花の後で10月から12月にかけて咲くという。葉と花が同時なので彼岸花と間違うことはない。別名ダイヤモンドリリーという。12月中旬の今でも葉の茎がすっと伸びて先端の花が可憐である。
ネリネと同時に届いたのが風ランである。山野の高い樹の上に着生しているため、野山を巡ってもなかなか見つけられないという。小さな木製の鉢におさまっている。夏に花が咲き、香りを楽しめるという。しかし今は細い葉が伸びているだけだ。本当に花が咲いてくれるのだろうか。来年の夏まで待たねばならない。待つ楽しみといえば今年の春に農家で買って植えた名高き沈丁花がある。それぞれ来年の春と夏に咲くことの保障を貰ったわけでないので少し不安である。