第二子出産を控えた母親は、前にも増して吾子を親に託すようになった。目の前で親にバイバイするせいもあって気楽なものだ。空腹や入浴はバアバの出番としても、ホイホイとこれまた嬉しそうに預るジイは、当然の事として夜泣きや早起きのお相手と相成る。
目ざめた1才半の彼女とジイは一番にブラインドを開ける。肩に頭を預けながら眼をこすりつつ小鳥の姿を求める。チィチィと音がすると目を凝らし指さす。食卓での定位置は朝日の差し込む東向きなのだが、日の出に向かって変化する空の色を見逃さない。いよいよ陽光が差し始めると眩しいと手かざししてニッコリだ。
部屋遊びに飽きたら散歩だ。「行きましょか~」の掛け声に玄関へ走り出す。靴を履くのももどかしく外へ飛び出す。手つなぎの手を振りほどき上水路へ走り出す。水の音に耳を澄まし小橋の方へ駆け出す。葉っぱを拾って川へ投げ込む。川面に乗って流れる葉っぱにバイバイする。子犬に近づくが大きめはコワイ。鳥の啼き声に木々を仰ぎ、語りかけてくれる人に笑顔を見せる。
そして寝物語は決まってバアバと「お散歩物語」。”サラサラァ~と川が流れ、葉っぱをパァ~と投げてバイバ~ィしたねぇ~。ワンちゃんもお散歩していて、小鳥さんがチチーチッて啼いて飛んでたねぇ~”。”サッサァ~、バイバ~ィ、チッチ~”となぞっていた声も小声になり次第に寝息に変わってゆく。