柿の若葉が他のどんな若葉より黄色味をおびて輝いている。9日の日曜日は年に一度の市民囲碁大会の日でもあった。少し迷ったがオープンギャラリーの例会の方に参加することにした。鈴木忠司さんの立夏の唄は「ミズキ、ウツギ類咲いた。グリーンロードを歩こうよ。イネ科が繁茂するね。ヤマガラ、コゲラ、シジュウカラ巣立ちが始まった。ノイバラ、エゴ咲くね。フタリシズカ見つけた。歩こうよ、ゆっくり歩こうよ」とある。この日のミニ観察は「コゲラの子育て」がテーマである。鈴木さんが探したコゲラの巣に案内してくれるというのだ。
ギャラリー出発の前に2つの唱歌の紹介があった。文部省唱歌の「茶摘」である。「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る」 明治43年から昭和19年までに作られた、いわゆる文部省唱歌は作詞・作曲者名を知ることができない。名は公表しないという作者との契約だったという。国が作る歌としたかったらしい。八十八夜とは立春から数えて88日の5月2日のことだ。そして5日は立夏である。あと一つは「夏はきぬ」だ。「卯の花のにおうかきねに 時鳥(ほととぎす)早もき鳴きて」 作詞者は国文学者で歌人でもあった佐佐木信綱だ。私は「卯の花」が「ウツギ」だということをこの日はじめて知り、恥じ入るやら嬉しいやら複雑な思いだった。
ウツギにはいくつか種類があるという。玉川上水の右岸を歩きながら左岸の崖を覗くと、川面に覆いかぶさるようにマルバウツギの白い花が咲き乱れている。北側の崖の方が日当たりが良いからだという。普段は左岸ばかりを歩くのでウツギがこんなにもたくさん咲いていることに気付かなかった。茎が中空のため空木と呼ばれる。また卯月に咲く花だから卯の花ともいう。鈴木さんの話では、以前この辺りは麦畑が広がりその畑にはウツギの生垣があった。そして麦畑が少なくなりヒバリが姿を消してしまったという。
ムクドリが地表に降り立って青虫を集めている姿を見かけた。よく見た光景なのだが私にはムクドリのくちばしの先の青虫はこれまで見えていなかった。そして生まれて初めて私はシジュウカラの親が巣箱に餌を運び込み再び飛び立つのを目撃した。いずれも人通りの多い場所なのに小鳥たちは平然とそれぞれの生活に忙しい。教えてもらったコゲラの巣は高い木の一部の枯れ枝の先端部分にあった。双眼鏡を覗いて丸い穴を確認する。枝に沿って下に彫り進んでいるのだろう。しばらく待っても巣の持ち主の姿を見ることはできなかった。(写真は庭のヒメウツギ)