玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*野川公園の柳橋③

2017年10月16日 | 捨て猫の独り言

 新聞連載小説を読み始めてから、髙村薫の単行本の一つでも読もうと図書館で手にしたのは新潮社の「太陽を曳く馬」の上・下二冊だった。読み始めてすぐに、これは歯が立たないと思った。ただでさえ眼の疲労はなはだしく拡大鏡なしには読み進めない。投げ出したくなるのを何とかこらえて上巻を読み終えた。返却期限が切れて下巻は読むことなくひとまず二冊とも返した。(深川界隈)

 

 刑事の合田雄一郎が登場して、事件に立ち向かうのだが、彼は作者や読者とともに年を重ねる。大阪府東住吉区生まれ、趣味は登山と読書 (ドストエフスキーを愛読)、特技はヴァイオリン、協力者は別れた妻・貴代子の双子の兄で学生時代からの親友・加納祐介検事である。小説の中の合田刑事は作者の分身と考えてもよさそうだ。作者は住吉区生まれで、吹田市在住である。

 「我らが少女A」の執筆に当たって作者はつぎのように述べている。「いわゆる大事件を書くことに興味が持てなくなった。単純に見えて実は複雑、複雑に見えて実は単純な一般の人びとの暮らし、価値観をありのまま書きたい。一回または二回ごとに人物の視点を変えて書き、それを重ね合わせて最後に一枚の大きな絵が出来上がるように書いていきたい」そして私は欠かさず読んでいる。

 つぎの投書には驚いた。「・・・おごる首相に他国との不穏な関係を払拭する能力もなく、政治はワイドショー化した。・・・確かなものは何かあるのか。それともないのか。日々模索し、路頭に迷うような気持になっていた。そんなところに登場した〈我らが少女A〉。時代を超えて再度、思考せよ、と迫られた気がする。・・・」吹田市に住む63才の再任用教員で、髙村作品の熱心な読者と思われる。(完)

コメント
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