玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*夕日

2013年11月14日 | 捨て猫の独り言

 NHKプレミアムアーカイブスの「永六輔の日本の夕焼け紀行」を見た。01年の放送というから永さん68歳の時の番組である。寄せては返す波打ち際で波と戯れながら永さんが夕日に向かって叫ぶシーンで番組は始まる。「入り日入り日まっかな入り日 何か言え 一言言うて落ちてゆけかし」これは大正から昭和にかけての歌人の今井邦子の歌という。永さんはまるで少年のように一度ならず二度もこの歌を叫んでいた。永さんはいつまでも少年の心を持ち続ける方であるようだ。

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 自称夕焼け評論家の永さんは世界中の夕焼けの絵葉書を30年で2万枚も集めたという。「人はなぜ夕焼けに魅せられるのでしょう」と語りかけてくるのは、私にも馴染みの遠藤泰子アナウンサーだ。まず青森岩木山、新潟佐渡、栃木中禅寺湖、北アルプスの夕日の紹介があった。その中の一つ佐渡は私がいつか夕日を見に行きたいと前々から思っていた場所である。来年あたりには実現できるような気がしている。番組は視聴者参加型で2時間もの長時間番組である。全国各地から寄せられた便りの中から永さんが直接投稿者に会いに出かけたり、永さん抜きの取材が行われたりする。

 視聴者の便りとは別に永さんが自ら選んで訪れたのは東京の日暮里と愛知のモンキーセンターだった。日暮里とは日の暮れるのも忘れてしまう里という夕焼けにちなんだ地名だ。永さんの地元でもあるらしい。この地で漂泊の俳人種田山頭火が夕焼けの句をいくつか残していた。永さんはそれらの句を色紙に書いた。そして夕暮れの谷中の町の随所に色紙を置きながら句を紹介してゆく。たとえばつぎのような句である。「蚊帳の中まで夕焼けの一人寝ている」「山のあなたへお日さま見送りご飯にする」「朝焼け夕焼け食べるものがない」「夕焼けうつくしく今日一日はつつましく」「今日いちにちのおだやかに落ちる日」

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 私たちは沈む夕日に手を合わせてその日一日に感謝、太陽に感謝、自然に感謝、感謝の気持ちをもう一回とりもどそうと番組は呼びかける。サルが夕日を見て涙ぐむという話を聞いた永さんはサル専門の動物園であるモンキーセンターを訪れて専門家に尋ねた。サルは本当に夕日を見つめるのか。その日はぼんやりした夕日だったが、小屋から外に出ていたサルは夕日が沈みはじめると静かになり、それをじっと見ていた。傍らの専門家はサルたちは暖かさの感じられる方向を見ているのでしょうと答えていた。ところで春分と秋分の日は真東から朝日が昇り、真西に夕日が沈む。大阪の四天王寺では春と秋のお彼岸に「日想観の法要」が行われ鳥居の向こうに真西に沈む夕日を見る人たちでにぎわうという。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 掲出の山頭火の俳句ははじめてです。各地を放浪... (今でも青春)
2013-11-14 21:25:59
 掲出の山頭火の俳句ははじめてです。各地を放浪した人ということで、独特な句を残しているようですが、夕日がありましたか。
 そう言えば夕日をじっくり見たのは一度だけでした。錦江湾の大隅半島側から薩摩半島の方に落ちる夕日もきれいでした。20数年前のことです。
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