今やAIによって本人の映像や声をもとに容易に「本人」の動画がつくれるのだという。そういえば、AIが作った美空ひばりの動画がテレビで流れて話題になったことは記憶に新しい。50年も前の1975年の映画「オーソン・ウェルズのフェイク」を紹介しながら、「虚と実のモラル」と題するエッセイが新聞にあった。
私はトランプ氏が登場した頃からフェイクというカタカナ語を覚えたような気がする。エッセイでは、オーソン・ウェルズの映画と共に11年前の2012年発行の南伸坊さんの「本人伝説」が紹介されていた。興味津々さっそくその本を図書館で借りてきた。
南さんは私の3つ年下の弟と同じ歳だ。イラストレーターが本業だが多才ぶりで知られ、有名人に顔を似せるのを得意技にする。たとえば吉本隆明さん、麻生太郎さん、櫻井よしこさんなどの本人になりすまし、それぞれの写真にはあたかも本人が書いたような文章が添えられている、顔面模写、文体模写の本だ。
写真担当は奥方の南文子さんである。あとがきに「顔に絵を描くことで、これを写真に撮ると、さらに本人に近づく。写真のテクニックについては我々は基本的に素人状態のままです。照明器具は卓上スタンド一本です。照明器具をもうちょっと充実させようかと私が提案しても、カメラマン文子はそういうややこしいことは言いっこナシと即座に却下します」とあった。
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