忘れ人の独り言

明治生まれの両親がさりげなく生きていた姿が今,私に語りかけてくる。

「いっぺん、おとうちゃん!って呼んでみたかったんや」

2022-02-17 | 日々の業

幼友達のAさんとの長話の続きだが、その話の中で胸が一杯になったことがあった。

Aさんのお母さんと私の父が偶然知り合いだったことがわかり親同士も仲良くなった。そんなある日私の母がAさんのお母さんに話したそうだ。

生まれて43日目で父親を亡くした私の二女R子はおじいちゃんっ子で育った。ある日おじいちゃんが孫のR子を連れてバスに乗りどこかへ連れていく途中、R子がバスの中で急に「お父ちゃん!」と呼んだ。

いつも「おじいちゃん、おじいちゃん」と言うR子.おじいちゃんは突然のことでビックリしたそうだ。バスの中だったということもあり家に帰って「わし、びっくりしたわ!恥ずかしかった」と母に話したという。何故お父ちゃんと呼んだのかと後で聞いてみると「いっぺん、おとうちゃん!って呼んでみたかったんや」と答えたそうだ。

その話を聞いたAさんやAさんのお母さんは思わず涙が出たという。

R子が小学校に入る前だったかはっきりわからないが初めて聞く話に私も思わず涙がこぼれた。

電話でそのことをR子に話すと全然覚えてないと言った。

父親の顔も知らずに生まれてきた子どもは世の中には沢山いることだろう。80年前の戦争の時もそれ以外でもあったことだろうが、私自身は当たり前のように「おとうちゃん!」と呼んで生きてきた。