空を飛ぶ機械でも、一般人や手荷物程度を乗せる航空機と、兵や物資を載せる輸送機では、役割も違えば機能も違う。
日本にいる米軍が配備することになったオスプレイという名の輸送機も、開発段階から初期配備期に8回の事故を起こしていて、危ないものと思っている人が多いだろう。
特殊な機能を要求されれば特殊な機構が当然必要で、その開発段階に失敗はつきものである。
機能の特殊性と、開発の困難度、試作初期の事故率は、比例するだろう。
しかし、使い始めてからも事故が続けばそのままでよいわけはなく、米国海兵隊が使用を中止した2000年暮から、2002年5月の使用再開まで改良が加えられてきた。
その後2年間で量産開始に漕ぎ着け、2007年にはイラクで実線に使われたという。
それを日本に持ち込もうということなのだが、この配備が、CH46という古い型の後継であると聞けば、さていまごろになってようやくか、という疑問が沸かないでもない。
CH46系の輸送ヘリは、海上自衛隊では1988年、陸上自衛隊では2002年、航空自衛隊では2009年に、すでに使われなくなっている。
それをまだ沖縄にいる米軍が持っていたのだった。
オスプレイの機能をCH46と比べてみると、時速は約500kmで2倍に近く、往復可能距離は約600kmでおよそ4倍、ヘリではできなかった空中給油も可能で、1回の補給で行動半径は1000kmを超え、沖縄を中心にすると、朝鮮半島、中国大陸東部、南シナ海までを含む範囲になる。
輸送兵員も24人で2倍、貨物の搭載量も約3倍、最高飛行高度は約7500mで攻撃も受けにくい。
これで在来型のヘリと同様に学校の校庭のようなところにも着陸できるとあっては、行動半径内の諸国にとっては脅威となるだろう。
ここまで見えてくると、初期事故の情報をタネに配備反対を叫ぶのは、どこのどなたの御用なのかと想像がついてくる。
TV放送などで印象に残りやすいのは、事故や災害の実写映像だから、それがいつのものかも紹介されずに放映を繰り返されると、情緒的にしかものごとを見させない誤情報の性格に変わっていき、正常な判断を狂わせることになる。
偏らない情報がマスメディアから発信されれば、乗せる人は荒くれに見えてもエリート集団なのだから危険なものに乗せるはずがないなどという珍説を繰り広げる必要もなくなると思うのだが、どうだろうか。
(参考)
MV-22オスプレイ事故率について (防衛省 2012年9月19日)
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/dep_5.pdf