(photo/source)
ナマケモノの毛皮に刻まれた段差は水を集め、八十種類を超える藻類と菌類のオアシスになっている。
ナマケモノが緑色がかってみえるのはそのせいだ。
ある研究によると、一匹のナマケモノが九種類の蛾、六種類のダニ、七種類のシラミ、四種類のカブトムシを養っていたそうだ。カブトムシには一匹につき九百八十もの寄生者がいた。
全身に虫がたかり、地面を引きづり回されたような外見ながら、彼らは見た目も臭いも、木にそっくりだ。そしてほぼ一日中木のようにじっとしている。
種全体として言うならば、ナマケモノはさまざまな外見をとりながら六千四百万年を生き延びたサバイバーであり、その秘訣は、あのだらけた性質だといわれる。
ナマケモノは異常なほど代謝が悪く、同じサイズの哺乳類の半分にしかならず、体の深部の温度もせいぜい二十八~三十五度だ。ほとんどの哺乳類はいつも温かい三十六度の体内環境に助けられているのだが。カロリーを使って体内の燃焼エンジンを動かし、体を温める代わりに、熱帯暮らしだというのに南極大陸の動物並みの分厚い毛皮を着ている。
「ナマケモノはとても効率のいい動物で、手に入るものすべてを最大限使いこなしているのです」と、専門家はいう。
また彼らがとてつもなくタフなのは本当だ。コスタリカの保護区の職員たちは、電線で感電したり。犬に襲われたり、車に轢かれたりしたナマケモノたちが奇跡に近い回復を遂げるのを目にしてきた。
「瀕死の重傷を負った彼らがなぜ復活できるのか、その謎は今も残っています」
ヤモリの遺伝子発現と肢の再生を研究する教授によると「ヤモリは尾を再生しなければいけないとき『胎児状態』に入る。簡単に言えば体を癒すのにすべてのエネルギーを注ぎ込むため、代謝率を下げる」のだそうです。
ナマケモノの代謝の悪さも同じような機能があるのではないか、がんの発病を逃れたり、先天異常をあえて維持して進化を支え、有効な新しいシステムを構築したりするためではないかという意見もある。
例えばキリンよりも椎骨の多い、珍妙な長い首がそうだ。あの長い首のおかげで、自然界のぐうたら屋である彼らは首を二百七十度回し、無駄に体を動かして貴重なエネルギーを空費することもなく、四方の葉を食べつくすことができる。
いわゆる世界一怠惰なこの動物は、一日二十時間近くをうつらうつらしながら過ごすと言われたきたが、最近の研究では、野生のナマケモノはその半分程度の一日平均九・六時間しか眠らないとされている。
「じっとしているからといって、寝ているわけではないんですよ」
彼らの一日はいわば瞑想状態で、静かに、両目を開けてぼんやりと宙を見つめながら、木の枝からぶら下がった格好で過ごす。‘意識はあるが動作はしない’この状況こそ、エネルギーを節約し、生き延びるための鍵なのです。
まるで「禅」のようだ。けれどいつも昼寝している。いわば動かぬ草の発酵袋(胃は二週間強かけて木の葉に含まれる食物繊維や毒性を分解する。食べた葉っぱが消化管を通して糞になるまでおよそ五十日)のような存在です。
彼らは自然界でも群を抜いたぐうたらや屋で、樹上でのんびりくつろぎ、ゆっくりと葉を消化することで、不要な努力をせっせと回避しているのです。
(引用/ルーシー・クック「動物の秘密」より)
ナマケモノの毛皮に刻まれた段差は水を集め、八十種類を超える藻類と菌類のオアシスになっている。
ナマケモノが緑色がかってみえるのはそのせいだ。
ある研究によると、一匹のナマケモノが九種類の蛾、六種類のダニ、七種類のシラミ、四種類のカブトムシを養っていたそうだ。カブトムシには一匹につき九百八十もの寄生者がいた。
全身に虫がたかり、地面を引きづり回されたような外見ながら、彼らは見た目も臭いも、木にそっくりだ。そしてほぼ一日中木のようにじっとしている。
種全体として言うならば、ナマケモノはさまざまな外見をとりながら六千四百万年を生き延びたサバイバーであり、その秘訣は、あのだらけた性質だといわれる。
ナマケモノは異常なほど代謝が悪く、同じサイズの哺乳類の半分にしかならず、体の深部の温度もせいぜい二十八~三十五度だ。ほとんどの哺乳類はいつも温かい三十六度の体内環境に助けられているのだが。カロリーを使って体内の燃焼エンジンを動かし、体を温める代わりに、熱帯暮らしだというのに南極大陸の動物並みの分厚い毛皮を着ている。
「ナマケモノはとても効率のいい動物で、手に入るものすべてを最大限使いこなしているのです」と、専門家はいう。
また彼らがとてつもなくタフなのは本当だ。コスタリカの保護区の職員たちは、電線で感電したり。犬に襲われたり、車に轢かれたりしたナマケモノたちが奇跡に近い回復を遂げるのを目にしてきた。
「瀕死の重傷を負った彼らがなぜ復活できるのか、その謎は今も残っています」
ヤモリの遺伝子発現と肢の再生を研究する教授によると「ヤモリは尾を再生しなければいけないとき『胎児状態』に入る。簡単に言えば体を癒すのにすべてのエネルギーを注ぎ込むため、代謝率を下げる」のだそうです。
ナマケモノの代謝の悪さも同じような機能があるのではないか、がんの発病を逃れたり、先天異常をあえて維持して進化を支え、有効な新しいシステムを構築したりするためではないかという意見もある。
例えばキリンよりも椎骨の多い、珍妙な長い首がそうだ。あの長い首のおかげで、自然界のぐうたら屋である彼らは首を二百七十度回し、無駄に体を動かして貴重なエネルギーを空費することもなく、四方の葉を食べつくすことができる。
いわゆる世界一怠惰なこの動物は、一日二十時間近くをうつらうつらしながら過ごすと言われたきたが、最近の研究では、野生のナマケモノはその半分程度の一日平均九・六時間しか眠らないとされている。
「じっとしているからといって、寝ているわけではないんですよ」
彼らの一日はいわば瞑想状態で、静かに、両目を開けてぼんやりと宙を見つめながら、木の枝からぶら下がった格好で過ごす。‘意識はあるが動作はしない’この状況こそ、エネルギーを節約し、生き延びるための鍵なのです。
まるで「禅」のようだ。けれどいつも昼寝している。いわば動かぬ草の発酵袋(胃は二週間強かけて木の葉に含まれる食物繊維や毒性を分解する。食べた葉っぱが消化管を通して糞になるまでおよそ五十日)のような存在です。
彼らは自然界でも群を抜いたぐうたらや屋で、樹上でのんびりくつろぎ、ゆっくりと葉を消化することで、不要な努力をせっせと回避しているのです。
(引用/ルーシー・クック「動物の秘密」より)
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