陽夏(ひなつ)は、今一歳と9か月だ。
本来であれば一歳チョイのはずであるが、あまりにも早くこの世界に参入してきた。
産まれた時の体重は400グラム。掌に載るほどの大きさ、手の指は楊枝ほどしかなかったという。
新生児の平均は3000グラムほどだ。
母の挺身と父の覚悟と医療チームの献身と、そしてなによりも陽夏自身のバイタルフォースが奇跡を生んだ。
懸念された障害もなく、指をしゃぶりながらスヤスヤと眠る陽夏はしかし、
修羅場を潜り勝ち抜いた勇士であると同時に、たくさんの人に見守られ助けられた果報者でもある。
人類が営々と築いてきた文明科学、それらの恩恵にも感謝せざるを得ない。
人生はいくらがんばっても自分だけでできることはほとんどない。
生活も仕事も恋愛もいくらがんばって活きたいと思っても、活かしてくれるものがいなければどうにもならない。
やがてそれを誰よりも強く知るであろうこの子は、大きな大きな財産を手に入れた。
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