菏澤学院は山東省菏澤市にある唯一の大学で、総合大学だとのことです。
中国の多くの大学同様、外国語学部は英語学科と日本語学科だけですが、
英語学科が各学年数クラスあるのに対して、日本語学科は各学年一クラスだけ、
しかも、今年度は一年の学年はありません。
応募者が少なかったようです。
来年は必ず編成すると言うのですが、また応募者が少なかったらどうするんだろうと
私はちょっと心配しています。
山東省の大学は数多くあり、日本語学科も多く大学で設置されていますが、
それは明らかに産学共同路線上にあるものです。
中国では学生たちの多くが就職のことを考えて大学の専門を選ぶ傾向が顕著です。
親たちはもちろん、高校の教師たちの進学指導も、
どの専門に進めば就職しやすいかという観点で生徒にアドバイスをするそうです。
しかし、尖閣国有化に端を発した両国間の政治関係の悪化は
明らかに経済関係にも影を落とし、それは今でも払拭されてはいません。
さらに中国国内の経済成長は労働者の賃金をも押し上げています。
かつてのように超安価な労働力は求めても得られず、
日本企業はもっと低賃金で高利潤を得られる他の国にシフトする傾向があります。
日本語をちょっとでも話せたらすぐに就職先があるという時代は過ぎ去った現状で、
どうして学生たちは日本語を学んでいるのでしょう。
特に、菏澤市には日系企業など一つもありません。
市内にいる日本人はただ一人、私だけでしょう。
後に続く後輩もいない中、孤立する学生たちの心の内を聞きたくて、
今学期末の2年生日本語会話の試験は
「私と日本語」というテーマでスピーチをする課題を与えました。
原稿が出揃い、読んでみると、
学生たちがどんな気持ちで勉強していたか、また、しているかが書いてあり、
入学からともに一年半近く過ごしてきた私には胸に沁みるものがありました。
今日から何回かに渡ってその原稿を御紹介したいと思います。
―――「私と日本語」(りくけいびん)
皆さんはどうして日本語を専門に選んだのですか。理由は、やっぱり、アニメでしょうか。
私はちょっと違います。
高校三年生の時、卒業後、どの道を選択したらいいか、迷っていました。その時、私は国語の先生の話を思い出しました。
「もし自分が何も学びたいことがなかったら、英語のようなメジャーなものじゃなく、マイナーな言語を学ぶと、仕事を探しやすいですよ。」
この言葉で、私は大学で日本語を専門に選びました。しかし、いとこのお姉ちゃんは私に日本語を学ばせたくなかったようです。何度も私に「専攻を変えなさい。」と迫りました。たぶんお姉ちゃんは、日本語なんか専門に選んでも、卒業後就職できないんじゃないかと心配したのでしょう。でも私は日本語を勉強して、もっと多くの人に接触しようと思いました。日本語を勉強したら、日本に行けるかもしれないでしょう。それに、今は中日交流が増えて、仕事も探しやすいんじゃないでしょうか。
だから、自分の選択を堅持しました。
大学に入って初めて日本語を勉強した時には、(な~んだ、日本語はこんなに簡単なのか)と思いました。五十音図とか、単語とか、会話とか、それほど難しくないと思ったんです。でも、学習が進むにつれて、簡単と思っていた日本語は、少しずつ難しくなってきました。文型が多くなって、とても全部は覚えられません。
(日本語は難しいなあ。ちゃんと覚えられない。私はいったい何のために、どうして、日本語を学んでいるの?) よく自問自答したものです。
ルームメートの楊さんと孟さんは英語専攻の学生です。同じ外国語学院の学生なのに、彼女たちは宿題がほとんどありません。授業も少ないです。毎晩寮でビデオを見ています。
ある晩、私が宿題をしている時、彼女たちの高笑いが聞こえてきました。 (やっぱりお姉ちゃんが正しかったんだろうか……)。
ずっともやもやして悩んでいました。
実は、このもやもやは初めてのことではありません。高校の時、数学や物理、生物などの科目がとても難しくて、私は中退を考えたことがあります。その時、やっぱりお姉ちゃんに相談したら、お姉ちゃんは、
「だめだ、中退はやめなさい。今の社会では、高校卒業でも仕事は探しにくいんだよ。まして高校中退のあなたを誰が雇ってくれるっていうの?…」
その話を聞いた後、私は気を取り直して頑張りました。すると、成績もじわじわとよくなってきたんです。
去年、日本語で挫けそうになったとき、私はその時のことを思い出しました。(あの態度を今も堅持すれば、全てがよくなるんじゃないだろうか……)。私は日本語を学び続けることにしました。難しいとは言っても、まじめに頑張れば、きっと、マスターできるはずです。
今、日本語を学び始めて一年半が過ぎました。その中で、私はいろいろなアニメを見ました。今、私はそのアニメで見たすばらしい景色、特に桜を見に日本へ行きたいんです。
将来、私は中日ガイドになりたいという希望を持っています。中国人に日本を案内し、また日本人に中国を案内する……、つまり、両国の人びとが、相手の国を理解するためのお手伝いです。皆さん、これは、かなりすてきな仕事じゃありませんか?
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